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JOG-mel No.548 アインシュタインの見た日本

発行日: 2008/5/18

■■ Japan On the Globe(548)■ 国際派日本人養成講座 ■■■■

          国柄探訪: アインシュタインの見た日本
    
                  アインシュタインが日本で見たもの、それは
                 人びとが慎み深く和して生きる世界だった。
■転送歓迎■ H20.05.18 ■ 37,961 Copies ■ 2,846,912 Views■
  無料購読申込・取消: http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/

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  ■■■ 伊勢雅臣 講演会「国際社会と日本の国柄」 ■■■
  日時 :5月25日(日)14:00〜17:00
  場所 :大阪府吹田市「吹田市民会館」2階宴会場
  参加費無料(先着30名)。本メールの返信にて申込み下さい。
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■1.アインシュタインの感動■

     大正11(1922)年11月17日、アインシュタインを乗せた
    日本郵船の北野丸は、瀬戸内海を通って、神戸港に近づいた。
    フランスのマルセイユを出てから、1カ月以上の船旅だった。
    瀬戸内海の景色について、アインシュタインはこう記している。

         私の好奇心が最高潮に達したのは、「北野丸」が日本の
        海峡を進むとき、朝日に照らされた無数のすばらしい緑の
        島々を見た時でした。[1,p140]

     景色ばかりでなく、その時に同乗していた日本人船客らの態
    度も、アインシュタインを感動させた。

         しかし、いちばん輝いていたのは、日本人の乗客と乗組
        員全員の顔でした。いつもは朝食前にけっして姿を見せた
        ことのない多くの華奢なご婦人たちは、一刻も早く祖国を
        見たいと、ひんやりとした朝風も気にせず6時ごろにはい
        そいそと甲板に出て、楽しげに歩き回っていました。私は
        そうした人々を見て深く感動しました。

         日本人は、他のどの国の人よりも自分の国と人びとを愛
        しています。・・・[1,p140]

     これが、アインシュタインの40日以上に渡る日本滞在の始
    まりだった。

■2.「神秘のベールに包まれている国」■

     アインシュタインの来日は、改造社の山本実彦社長からの招
    待によるものだった。

         山本氏(改造社)から日本へ招待いただいた時に、私は
        数ヶ月を要する大旅行に行こうとただちに意を固めました。
        それに対する私の説明しうる理由というのは、もし私が、
        日本という国を自分自身の目で見ることのできるこのチャ
        ンスを逃したならば、後悔してもしきれないというほかあ
        りません。

         私が日本へ招待されたということを周囲の人びとが知っ
        たその時、ベルリンにいた私が、あれほどまでに羨望の的
        になったことは、いまだかつて、私の人生の中でなかで経
        験したことはありませんでした。というのも、われわれに
        とって、日本ほど神秘のベールに包まれている国はないか
        らです。[1,p140]

     当時の日本を限りない愛情を込めて西洋に紹介したのは、ラ
    フカディオ・ハーンであった[a,b]。アインシュタインはハー
    ンの著作を読み、日本への期待を抱いていた。来日後、彼は次
    のような手紙を親友に認めている。

         やさしくて上品な人びとと芸術。日本人はハーンの本で
        知った以上に神秘的で、そのうえ思いやりがあって気取ら
        ない。[1,p117]

     当時のヨーロッパは、第一次大戦が終わったばかりの荒廃し
    た状態だった。多くのヨーロッパ人は、現代西欧文明の精神的
    な行き詰まりを感じていただろう。それに対して日本はいまだ
    「神秘のベールに包まれている国」であった。

■3.熱狂的な歓迎■
    
     11月17日に神戸に上陸したアインシュタインは、京都で
    一泊。翌朝、東京に向かった。

         朝、9時から夕方7時まで雲ひとつない空の下、展望車
        に乗って東京まで汽車旅行。海、入り江を通過。雪に被わ
        れた富士山は遠くまで陸地を照らしていた。富士山近くの
        日没はこのうえなく美しかった。森や丘のすばらしいシル
        エット。村々は穏やかで綺麗であり、学校は美しく、畑は
        入念に耕されていた。・・・

         東京に到着! 群衆に取り囲まれ、写真撮影で凄まじい
        フラッシュを浴びた。無数のマグネシウムをたく閃光で完
        全に目が眩む。[1,p17]

     この情景を翌日の大阪毎日新聞は大きな写真入りで、こう伝
    えた。

        東京駅で人びとが絶叫----「アインシュタイン!」「アイ
        ンシュタイン!」「万歳!」怒濤のごとく群衆が博士に殺
        到し、東京駅は大騒ぎとなった。日本人の熱狂ぶりを見て、
        駅に博士を出迎えたドイツ人関係者らは喜びのあまり目に
        涙を浮かべる人さえいた。[1,p19]

     この熱狂的な歓迎について、アインシュタイン自身こんな談
    話を残している。

         私の生涯に、こんあことはありませんでしたよ。米国に
        行った時も大騒ぎでしたが、とてもこんな赤誠はありませ
        んでした。これは日本人が科学を尊ぶためでしょう。ああ
        愉快だ、心からうれしい。[1,p17]
    
■4.「6時間におよぶ講演に聴衆が酔った」■

     11月19日には、アインシュタインは長旅の疲れをものと
    もせずに、慶應義塾大学にて6時間もの講演を行った。読売新
    聞はこう伝えている。

         6時間におよぶ講演に聴衆が酔った----慶應義塾大学で
        の日本初の講演は内容は「特殊および一般相対性理論につ
        いて」。1時間半から3時間の講演後、1時間の休憩をは
        さみ、講演が再開され8時半に閉会。実質6時間の長講演
        にもかかわらず、2000人以上の聴衆は一人として席を立た
        ず、アインシュタインと通訳石原純の一言一言に静粛かつ
        真剣に聞き入っていた。理屈が理解できる、できないにか
        かわらず、皆アインシュタインの音楽のような声に酔いし
        れたという。[1,p20]

     その後も、東京帝国大学での6回連続の特別講演、東京、仙
    台、京都、大阪、神戸、博多での一般講演などが続いたが、ど
    の会場も盛況で、千人単位の聴衆が集まり熱心に聞き入った。

     アインシュタインがいかに分かり易く説いたとしても、これ
    だけ多くの一般的な聴衆が、相対性理論をよく理解し得たとは
    思えない。東京駅での熱狂的な歓迎、そして講演での熱心な聴
    講態度は、何が原因だったのだろう。
    
■5.「外国の学者に対する尊敬の念」■

     12月10日、京都に戻ったアインシュタインは、講演後、
    京都御所を訪問し、「御所は私がかつて見たなかでもっとも美
    しい建物だった」との感想をもらした。

         中庭からは即位式用の椅子がある即位の間が見えた。そ
        こには約40人の中国の政治家の肖像画があった。中国か
        ら実のある文化を日本にもたらしたことが評価されたため
        である。

         外国の学者に対するこの尊敬の念は、今日もなお、日本
        人のなかにある。ドイツで学んだ多くの日本人の、ドイツ
        人学者への尊敬には胸を打たれる。さらには細菌学者コッ
        ホを記念するために、一つ寺が建立されなければならない
        ようだ。

         嫌味もなく、また疑い深くもなく、人を真剣に高く評価
        する態度が日本人の特色である。彼ら以外にこれほど純粋
        な人間の心をもつ人はどこにもいない。この国を愛し、尊
        敬すべきである。[1,p95]

    「外国の学者に対するこの尊敬の念」は、日本人の伝統だが、
    近代西洋科学への尊敬はまた格別の念があった。富国強兵は、
    世界を植民地化しつつある西洋諸国から国家の自由と独立を護
    るための日本の国家的課題であった。そして経済力にしろ、軍
    事力にしろ、その根幹は近代西洋の科学技術にあったからだ。

     そしてアインシュタインこそ、その西洋近代科学の最高峰を
    体現する人物であった。当時の日本人が、彼を熱狂的に歓迎し、
    その講演に陶酔したのは、「外国の学者に対する尊敬の念」と
    いう伝統と共に、近代西洋科学の国家的重要性を国民の多くが
    感じ取っていたからであろう。

■6.「微笑みの背後に隠されている感情」■

     日本は明治以降、ヨーロッパに多くの留学生を送り、西洋近
    代科学を学び取ろうとしていた。アインシュタインは来日前か
    ら日本からの多くの留学生と出会い、ある印象を抱いていた。

         われわれは、静かに生活をし、熱心に学び、親しげに微
        笑んでいる多くの日本人を目にします。だれもが己を出さ
        ず、その微笑みの背後に隠されている感情を見抜くことは
        できません。そして、われわれとは違った心が、その背後
        にあることがわかります。[1,p140]

     日本滞在中、講演と観光の合間を縫って、アインシュタイン
    は多くの日本人と会った。長岡半太郎や北里柴三郎ら日本を代
    表する科学者、学生、ジャーナリスト、そして一般家庭の訪問
    まで。そして「微笑みの背後に隠されている感情」が何かに気
    がついた。

         もっとも気がついたことは、日本人は欧米人に対してと
        くに遠慮深いということです。我がドイツでは、教育とい
        うものはすべて、個人間の生存競争が至極とうぜんのこと
        と思う方向にみごとに向けられています。とくに都会では、
        すさまじい個人主義、向こう見ずな競争、獲得しうる多く
        のぜいたくや喜びをつかみとるための熾烈な闘いがあるの
        です。[1,p141]

     全世界の植民地化、そして1900万人もの死者を出したと言わ
    れる第一次大戦は、この「熾烈な闘い」の結果であろう。

■7.「日本人の微笑みの深い意味が私には見えました」■

     それに対して、日本人はどうか?

         日本には、われわれの国よりも、人と人とがもっと容易
        に親しくなれるひとつの理由があります。それは、みずか
        らの感情や憎悪をあらわにしないで、どんな状況下でも落
        ち着いて、ことをそのままに保とうとするといった日本特
        有の伝統があるのです。

         ですから、性格上おたがいに合わないような人たちであっ
        ても、一つ屋根の下に住んでも、厄介な軋轢や争いになら
        ないで同居していることができるのです。この点で、ヨー
        ロッパ人がひじょうに不思議に思っていた日本人の微笑み
        の深い意味が私には見えました。

         個人の表情を抑えてしまうこのやり方が、心の内にある
        個人みずからを抑えてしまうことになるのでしょうか? 
        私にはそうは思えません。この伝統が発達してきたのは、
        この国の人に特有のやさしさや、ヨーロッパ人よりもずっ
        と優っていると思われる、同情心の強さゆえでありましょ
        う。[1,p142]

     「不思議な微笑み」の背後にあるもの、それは「和をもって
     貴し」とする世界であった。
    
■8.「自然と人間は、一体化している」■

     日本人の「個人の表情を抑えてしまうこのやり方」のために、
    アインシュタインは日本滞在中も、その心の奥底に入り込むこ
    とはできなかった。

         けれども、人間同士の直接の体験が欠けたことを、芸術
        の印象が補ってくれました。日本では、他のどの国よりも
        豊潤に、また多様に印象づけてくれるのです。私がここで
        「芸術」と言うのは、芸術的な意向、またはそれに準じ、
        人間の手で絶えず創作しているありとあらゆるものを意味
        します。

         この点、私はとうてい、驚きを隠せません。日本では、
        自然と人間は、一体化しているように見えます。・・・

         この国に由来するすべてのものは、愛らしく、朗らかで
        あり、自然を通じてあたえられたものと密接に結びついて
        います。

         かわいらしいのは、小さな緑の島々や、丘陵の景色、樹
        木、入念に分けられた小さな一区画、そしてもっとも入念
        に耕された田畑、とくにそのそばに建っている小さな家屋、
        そして最後に日本人みずからの言葉、その動作、その衣服、
        そして人びとが使用しているあらゆる家具等々。

         ・・・どの小さな個々の物にも、そこには意味と役割と
        があります。そのうえ、礼儀正しい人びとの絵のように美
        しい笑顔、お辞儀、座っている姿にはただただ驚くばかり
        です。しかし、真似することはきません。[1,p142]

    「和をもって貴し」とする世界で、人びとは自然とも和して生
    きてきたのである。

■9.アインシュタインの警告■

     明治日本が目指した富国強兵は、西洋社会の闘争的世界に、
    日本が参戦することを意味していた。国家の自由と独立を維持
    するためには、それ以外の選択肢はなかった。しかし、闘争的
    な世界観は「和をもって貴し」とする日本古来の世界観とは相
    容れないものであった。

     また富国強兵を実現するために、明治日本は西洋の科学技術
    を学んだ。しかし、近代科学の根底には、自然を征服の対象と
    して、分析し、利用しようとする姿勢があった。それは自然と
    一体化しようとする日本人の生き方とは異なるものであった。

     西洋近代科学を尊敬し、アインシュタインを熱狂的に歓迎し
    た日本国民の姿勢は、彼が賛嘆した日本人の伝統的な生き方と
    はまた別のものであった。両者の矛盾対立について、アインシュ
    タインはこう警告している。

         たしかに日本人は、西洋の知的業績に感嘆し、成功と大
        きな理想主義を掲げて、科学に飛び込んでいます。けれど
        もそういう場合に、西洋と出会う以前に日本人が本来もっ
        ていて、つまり生活の芸術化、個人に必要な謙虚さと質素
        さ、日本人の純粋で静かな心、それらのすべてを純粋に保っ
        て忘れずにいて欲しいものです。[1,p144]

     科学技術の進展から、人類は核兵器を持ち、地球環境を危機
    に陥れてきた。アインシュタインが賛嘆した人間どうしの和、
    自然との和を大切にする日本人の伝統的な生き方は、いまや全
    世界が必要としているものである。
                                         (文責:伊勢雅臣)

■リンク■
a. JOG(050) 稲むらの火
    村民を津波から救った義挙
   http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogbd_h10_2/jog050.html
b. JOG(171)「まがたま」の象徴するもの
    ヒスイやメノウなどに穴をあけて糸でつなげた「まがたま」
   に秘められた宗教的・政治的理想とは
   http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogbd_h13/jog171.html

■参考■(お勧め度、★★★★:必読〜★:専門家向け)
  →アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。

1. アルバート・アインシュタイン (著)、杉元賢治 (翻訳)『アイ
   ンシュタイン日本で相対論を語る』★★、講談社、H13
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/406210931X/japanontheg01-22%22

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ おたより _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
■前号「ナショナリズムという反抗期」に寄せられたおたより

                                             茉莉花さんより
     私が小学生の頃(1955年頃)に見た「毛おじさんと子どもた
    ち」と言う写真は毛沢東を囲んでたくさんのこどもたちがにこ
    にこ笑っているものでした。平和と豊かな収穫をイメージさせ
    るものでした。同じような写真は今、北朝鮮の写真によくみら
    れます。

     権力者はナショナリズムを利用していつまでも立場を維持す
    る術を心得ていると思います。民衆はみな同じ方向をみていて
    ほかの世界を認めようとしない、このかたくなさは私にとって
    理解できないものでしたが、これが成熟した国家への道程だと
    すればこの大国中国がこれからまたどのように変化してくるの
    かとても興味があります。

     戦後の私たち日本人は自由に情報を得ることが出来たと言う
    こともあって自分の考えを持つことも出来るし、判断し批判す
    ることもできるようになったと思います。その意味で日本はし
    あわせな道を歩んで来たとおもいます。

                                                 豊さんより
     韓国や中国の過剰なナショナリズムはご指摘の通り、これら
    の国々が近代的国家として極めて短い歴史しか持っていないこ
    とがその理由の一つだと思います。

     最近もチベット問題について中国要人がアジア諸国中でこの
    事件を問題視しているのは日本だけだと言う趣旨の発言をして
    います。これはとりもなおさず、日本以外のアジア諸国が近代
    的な国民国家としての歴史を持っておらず、言論の自由とは何
    かを理解していないことの証左だと考えます。

     中国は極端に言えば清朝の専制国家から共産党の専制国家に
    衣替えし、今でこそ表面的には近代国家のごとく装っています
    が、その実態は前近代的でおよそ国民国家と呼べるものではあ
    りません。このような国が経済的に発展し、米国と並ぶスーパ
    ーパワーを目指していることは、日本にとっては迷惑以外の何
    物でもありません。

     このような状況で日本がどのような戦略をとるべきかもっと
    真剣に考えるべきではないでしょうか。我が国の政治家がレベ
    ルの低い政争に明け暮れ、根本的な国家戦略についての国民的
    な議論がまったく欠落していることは嘆かわしい限りです。

■ 編集長・伊勢雅臣より

     あまりにも過激なナショナリズムという「反抗期」も困りま
    すが、成熟期の自然な祖国愛を否定しようとする見当違いも困
    りますね。

     読者からのご意見をお待ちします。以下の投稿欄または本誌
    への返信として、お送り下さい。
     掲載分には、薄謝として本誌総集編を差し上げます。
    http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jog/jog_res.htm

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Mail: nihon@mvh.biglobe.ne.jp または本メールへの返信で
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             http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogindex.htm
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知らないことでした。
有り難うございました。
「西村真悟」の会へ転送しましたのでご了承下さい。
日時:2008年5月18日


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