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■■ Japan On the Globe(465)■ 国際派日本人養成講座 ■■■■
Common Sense: ないないづくしの教育基本法
現在の教育基本法には、家庭教育、幼児教育、
地域教育、文化伝統教育、環境教育の視点がない。
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■1.「ないないづくしの教育基本法」■
青少年犯罪や、学級崩壊、学力低下などの問題から、現在の
教育がうまく行っていない、と多くの国民が感じている。安倍
新政権も教育基本法改正を最優先する方針を打ち出した[1]。
しかし、教育基本法のどこがどう問題なのか、考えたことのあ
る国民は少ないだろう。
先の通常国会で、政府は「国と郷土を愛する態度」を謳う教
育基本法改正案を提出し、民主党は「日本を愛する心」を盛り
込んだ対案を提出した。愛国心をどう涵養するか、という点に
議論が集中しがちだが、現行教育基本法の大きな欠陥は、これ
だけではない。家庭教育、幼児教育、地域教育、文化伝統教育、
環境教育などの視点も欠けている。まさに「ないないづくしの
教育基本法」なのだ。
今回は衆参両院の過半数を超える378人の国会議員が参加
している「教育基本法改正促進委員会」が発表した独自の「新
教育基本法案」(以下「新法案」と呼ぶ)をベースに、現行基
本法の問題を考えてみたい。
■2.家庭科教科書で離婚の勧め?!■
家庭教育について、現在の教育基本法は以下のように述べる
だけである。
第7条(社会教育) 家庭教育及び勤労の場所その他社会に
おいて行われる教育は、国及び地方公共団体によつて奨励
されなければならない。
これでは、どのような家庭教育を目指すのかが不明である。
ある高校用家庭科教科書には、
A子さんとB男さんは結婚して二十年ですが、八年前か
ら別居中です。きっかけはA子さんに別の好きな人ができ
たから。この二人は離婚できるでしょうか。[2,p101]
などと、まるで離婚の勧めが書かれている。この二人に子供が
いたら、さぞ悲しい思いをするだろう、などという想像は「想
定外」なのである。生徒がこの教科書から、夫婦とはこういう
ものだと思いこんでしまえば、子供なぞ生まない方が良いと考
えてしまうだろう。少子化になるのも、当然である。
また、こんな風に家庭を描く教科書もある。
祖母は孫を家族と考えていても、孫は祖母を家族と考え
ない場合もあるだろう。・・・犬や猫のペットを大切な家
族の一員と考える人もいる。[2,p101]
お祖母さんよりも犬猫を家族と考えても構わない、と教えて
いるかのようである。祖父母がいてくれたからこそ、父母がお
り、自分たち子供がいる、というのが家族の基本である、とい
う常識がそもそも欠如しているのである。
■3.子育ては「至福の時の積み重ね」■
このような風潮を糺すべく、新法案では第五条に「家庭教育」
という項目を新設し、こう規定している。
教育の原点は家庭にあり、親は人生最初の教師であるこ
とを自覚し、自らが保護する子供を教育する第一義的責任
を有する。
「親は人生最初の教師である」という事は、責任だけではなく、
実は親自身の喜びであり、また成長の機会でもあると、西川京
子・衆議院議員は自らの母親体験から語る。
一方で、自由を謳歌している独身女性にとっては、子育
てというのは、自分の時間を奪われる上、最近は子供を取
り巻く嫌なニュースも多いですから、どうしてもマイナス
・イメージを持ちがちです。確かに辛いこともありますが、
子育てというのは、経験された方には判ってもらえると思
いますが、すぐには目に見えない宝物が詰まった、実は至
福の時の積み重ねなんですよ。・・・
それに子育てをする中で何物にも替えがたい宝物や充実
感を得られ、仕事に戻った時も恐らく仕事の幅が広がるし、
人間的にもこんなに成長できるよ。----こうしたメッセー
ジも、「家庭教育」を支援することを通じて積極的に発信
していきたいですね。[2,p100]
■4.「わぁ素敵! 私も結婚しよう! 子供を生もう!」■
これに応えて、同じくママさん議員の後藤博子・参議院はこ
う語る。
先日、地元大分の大学で講演させてもらったんです。い
まどきの学生さんたちは、出産は苦しくて痛いと思ってい
るんですね。
確かに苦痛なんですが、生まれた瞬間に、本当に今まで
感じたことのない喜びを感じて、旦那さんと目と目を見合
わせて「お互いに親になったね」と感動したのよと話した
ら、学生たちが、「わぁ素敵! 私も結婚しよう! 子供
を生もう!」という空気になってしまったんですよ。
ですから、お母さんもおばあちゃんも、もっと出産のと
きの喜び・感動を、子供や孫に話したらいいと思いますね。
[2,p101]
■5.「幼児教育は家庭が主」■
「家庭」という視点の欠如した現行の教育基本法は、当然なが
ら幼児教育についても、何も語らない。新法案では幼児教育に
ついて、以下のように詳細に規定している。
第6条(幼児教育)
1 幼児教育が生涯にわたる人間形成の基礎となる重要性
にかんがみ、国及び地方公共団体は、その振興に努め
るものとする。・・・
3 幼児教育は、家庭との緊密な連携を図り、これを助け、
かつ補完するものでなければならない。
この第3項で、幼児教育は家庭が主で、国や地方公共団体は
それを支援・補完するという位置づけがなされている。西川京
子・衆議院議員は、その背景をこう説明している。
ヨーロッパでは乳児教育はしていません。少なくとも最
低生まれてから一年間は母親が面倒を見るという基本路線
は守っていますよ。日本だけですよ、生まれて2、3ヶ月
の赤ちゃんをお母さんから引き離すようなことをする国は。
子供は生まれてから6ヶ月が勝負なんです。同じ顔が自
分の目の前に毎日現れて、笑顔でおっぱいをくれる、それ
を6ヶ月間続けることによって自分と他者との信頼感が育
つわけですね。・・・
ですから、・・・「乳児は預かりません。その代わり、
育児休業制度を整備し、経済的な手当ても含めて、みんな
が安心して育児休業がとれて、さらに職場にきちんと復帰
できるシステムを作ります」という姿勢を、国として打ち
出そうということにしたのです。[2, p104]
従来の厚生労働省の方針は、乳児にも24時間保育を行なお
う、というものだったが、これは働き方に子育てを合わせる、
という考え方であった。今回の新法案では、これを転換して、
小さな子供をもっている父親・母親は、まず子育てを家庭で最
優先して貰い、それが出来るよう、社会制度の方を改革してい
こう、という方針を採用したのである。
■6.「子供たちには地域の秋祭りにぜひ参加させてあげたい」■
教育の場として、家庭とともに地域がある。地域教育にいたっ
ては、現在の教育基本法はその言葉すら出てこないが、新法案
では次のように明記している。
第8条(学校・家庭・地域の連携と協力)
国及び地方公共団体は学校、家庭及び地域社会が相互に
緊密な連携と協力を図り、教育の目的達成と教育環境の整
備を図るよう努めるものとする。
高市早苗・衆議院議員は、地域社会とのつながりを実感させ
る機会として、地域のお祭りを勧める。
子供たちには、地域の秋祭りにぜひ参加させてあげたい。
農産物の実りに感謝する伝統文化そのものですし、同時に
秋祭りは地元の人々が懸命に作り上げるものですから、地
域とのつながりを実感させる絶好の機会にもなる。
ところが、神社からお神輿(みこし)がでることもあっ
て秋祭りに参加させることが教育基本法第九条(*)に抵
触するといわれる。しかし、地域の人々が懸命に準備した
秋祭りに参加して地域の伝統を肌で知るチャンスを奪うこ
とが果たして子供たちのためになるのでしょうか。
* 第9条2項: 国及び地方公共団体が設置する学校は、
特定の宗教教育その他の宗教的活動をしてはならない
お祭りそのものが子供たちには楽しいイベントだが、そのた
めに地元の人たちが無償で働く姿そのものが貴重な教材である
と言えよう。自分たちは地域に守られ、支えられていると気が
つくことから、自分も地域のために何か貢献したい、という感
謝報恩の心につながる。そういう心をもった人間を育てたいも
のである。
■7.「自分たちのふるさとは自分たちで守るんだ」■
「地域のための貢献をしよう」という心を育てるために、古川
禎久・衆議院議員は、次のようなアイデアを語る。
地域との係わり合いや国家・社会への貢献という面では、
「公民教育」の分野で、消防団に光を当てたいと思います。
消防団の皆さんは別に公務員ではなくて、純粋にボラン
ティアですよね。それぞれ仕事を持ちながら地元を守るた
めに日々訓練し、消火活動に従事している。「一旦緩急あ
れば義勇公に奉じ(JOG注:教育勅語中の一節。非常の際
には、正義と勇気を持って公のために尽くし)」ではない
ですが、火事が起これば、自分の仕事を放り投げてでも消
火活動を行う。
「自分たちのふるさとは自分たちで守るんだ」という気概
に満ちた消防団こそ、「国民が社会における自己の責任を
自覚し、国家社会の発展に積極的役割を担う」という精神
を体現していると思いますね。[2,p39]
子供たちが消防団に体験入隊したり、その活動を手伝うこと
で、地域のために役立つ喜びを感じる機会を持てるだろう。そ
れは健全な大人になるための不可欠のプロセスである。
■8.「自然との共生や一体感をはぐくむ教育」■
地域とは、人々の共同体であるとともに、それを支える自然
環境も含む。現在の教育基本法は自然や環境への言及はまった
くないが、新法案では環境教育についても一項を立てている。
第17条(環境教育)
地球環境を保全するため、あらゆる段階において、自然
を尊び、自然との共生や一体感をはぐくむ教育を重視する
ものとする。
この項目の趣旨について、古川禎久・衆議院議員はこう解説
する。
日本の神話、特に天照大神の「天壌無窮の神勅」には、
「豊葦原(とよあしはら)の瑞穂(みずほ)の国」という
形で、わが日本は稲穂の国だと表現されていんですね。で
すから、天皇陛下は春になると、皇居にある田んぼで自ら
苗を植えられ、秋には収穫され、その稲穂を宮中三殿と伊
勢神宮に捧げられている。
また、「日本書紀」でも、スサノヲノミコトが日本には
こんなに素晴らしい樹木という宝物があるではないかとおっ
しゃって、スサノヲは樹木神ということになっている。
ですから、日本には、美しい緑の国土があり、稲作を中
心とした村落共同体がしっかりとあって、そこから我が国
の歴史・伝統・文化も生まれてきた。それが自然との共生
であったり、豊かな恵みに感謝する心であったり、和を尊
ぶ人間関係、わび・さび・もののあわれという美意識であっ
たわけです。
その意味で、「環境教育」を通じて、日本の伝統的価値
観の素晴らしさに気付かせると共に、日本が稲作共同体で
あったという歴史をきちんと受け継がせたいと考えたので
す。[2,p43]
地域教育は、地域の自然への愛情につながり、そしてその自
然を守り、また自然に守られてきた先祖の歴史・文化・伝統に
もつながっていく。子供たちにはそうした広やかな世界にぜひ
目を開いて貰いたいものである。
■9.「人間は生まれながらにして尊厳がある」のか?■
現行の教育基本法は「われら、個人の尊厳を重んじ、真理と
平和を希求する人間の育成を期する」と謳うように、そこに描
かれた人間像は、虚空を飛び交う原子のように、共同体から切
り離された「個人」でしかない。家族、地域、国家という根っ
こを持たなければ、それこそ、好き勝手に離婚し、祖母よりも
犬猫を大事にするような人間しか育たないのではないか。
伝統や慣習、道徳律というものをしっかり身につけ、共
同体の一員としていかに価値ある生き方をするのかを懸命
に求めようとするところに「人間としての尊厳」があるの
であって、そうした努力をしない人に対しても無条件に
「尊厳」を認めてしまうという考え方は、少なくとも教育
の場にはなじまないのではないでしょうか。・・・
何故なら、「人間は生まれながらにして尊厳がある」と
いう言い方をしていると、結局は子供たちに「先人が築い
てきた伝統や文化、そして道徳や生活習慣などを身につけ
なくともいい」という誤ったメッセージを送ってしまうこ
とになるからです。(鷲尾英一郎・衆議院議員)[2,p54]
「個人の尊厳」とは、家庭、地域、国家、国際社会という共同
体の中で、各個人がその個性と能力を磨いて貢献をなす過程で、
もたらされるものである。こういう基本的な人間観が欠落して
いるのが、現行の教育基本法の本質的な欠陥であり、現代日本
の多くの教育問題もここから起こっている、と考えられる。
(文責:伊勢雅臣)
■リンク■
a. JOG(170) 個人主義の迷妄〜「国民の道徳」を読む
奉仕活動をする青年も、援助交際をする女子高生も、同じく
「個人の尊厳」では、、、
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogbd_h12/jog170.html
B. JOG(442) 「科学から空想へ」 〜 現代日本の教育思想の源流
「子供の権利」「自己決定権」「個性尊重」など の教育思想
の源泉にある「空想」。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogdb_h18/jog442.html
■参考■(お勧め度、★★★★:必読〜★:専門家向け)
→アドレスをクリックすると、本の紹介画面に飛びます。
1. 産経新聞、「安倍政権の政策 『教育法改正』最優先に テロ
特措法の成立期す」、H18.09.21 東京朝刊 2頁
2. 教育基本法改正促進委員会起草委員会「教育激変―新教育基本
法案がめざす「家庭」「学校」「日本」の10年後」★★★、明成社、
H18
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4944219423/japanontheg01-22%22
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/ おたより _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
■前号「サムライ達の広報外交」に寄せられたおたより
雅之さんより
国際人として活躍するためには、幼少のころから英語に慣れ
ておくことではなく、日本人が古くから大切にしてきた価値観、
道徳を幼少のころから身につけさせること。そのために我々大
人が、一度捨てさせられた日本人の価値観を今一度甦らせ、自
ら身につける必要を強く感じました。
Yutakaさんより
外交に於いて広報活動がいかに大切かと言うことが良く理解
できました。
明治時代と異なり、日本には帰国子女など外国語を母国語と
ほぼ同じ程度の使いこなせる人間がはいて捨てる程います。ま
た国民全体の外国語の能力も明治時代とは比較にならないくら
い高くなっています。にも関わらずこと外国語による日本国の
広報活動といえばお粗末の一言につきます。
どうも日本人の人間としての中身の質が低下しているのでは
ないでしょうか?東大卒のいわゆるエリートと呼ばれる高級官
僚に代表される人たちは、確かに頭は良いのでしょうが、その
良さと言うのはああ言えばこう言うと云う回転の速さと記憶力
のよさであって、物事の本質や軽重を見極める能力は欠如して
いるように思われます。
考えれば明治維新を成し遂げたいわゆる志士達は多くは軽輩
の士で教育も限定されたものしか受けていませんでした。しか
し彼らは幾つかの過ちは犯したとしても日本を近代化させ欧米
の植民地主義に対抗できる国を作り上げました。
ところが国が近代化し教育制度整備されてから養成された所
謂エリート(高級軍人や官僚)は自国の実力を冷静に判断する
ことも出来ず、わが国を敗戦へと導きました。思うに真のエリ
ートは学校教育で養成できるものではないようです。
■ 編集長・伊勢雅臣より
日本人の伝統的価値観を世界に主張できる人間をどうしたら
育成できるのか、現代日本の大きな課題の一つです。
読者からのご意見をお待ちします。以下の投稿欄または本誌
への返信として、お送り下さい。
掲載分には、薄謝として本誌総集編を差し上げます。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jog/jog_res.htm
============================================================
Mail: nihon@mvh.biglobe.ne.jp または本メールへの返信で
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姉妹誌「国際派日本人のための情報ファイル」JOG Wing
http://www2s.biglobe.ne.jp/~nippon/jogindex.htm
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mag2:22254 melma!:3214 kapu:7636 ransta:1473
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