見聞録▼182−2 干ばつに強い品種の選定が最後の務め。 あとは乾燥に強い樹ビエラに期待
発行日時: 2007/12/13━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
『 隔日刊 心が元気になる オンリーワン見聞録 』
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発 行 (有) 新規事業開発 代表 肝 付 博 昭
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2007年12月13日(木)
マスコミは中村哲医師の20年以上に及ぶアフガニスタンへの支援活動を、何故
大きく報じないのだろうか。 かくいう本稿が取り上げたのも昨年の秋、それも
再放送を見たのがきっかけだったから大口はたたけないが・・・。 ニュースや
新聞を見ない日は無い筈なのに、中村哲医師の名さえ知らなかったのである。
知る人ぞ知る・・という事かもしれないが、不面目を恥じいるばかりである。
さて、マスコミが伝える中村哲医師の声は「アメリカの空爆とその後の統治に批
判」というが向きが多い。 あたかも反米主義の先鋒の様にみられるが、これは
正鵠を捉えていない。 中村哲医師とペシャワール会は、全く政治的な意味合い
を持たない活動である事は明白である。
中村哲医師が、この地に踏み入れたのは1984年にさかのぼる。 当時、難病
のハンセン病治療の為にパキスタンのペシャワールという僻地に志願しての赴任
という事からも、同氏の行動力は変人といえるほどに突出している。 以来20
年余にわたり「医者井戸を掘る」といわしめたのは、治療の前に病気の原因であ
る水が無いという現実に起因している。
ヒマラヤ連峰の氷が溶けて流れながれてくるべき水が、流れてこない大かんばつ
に直面しているアフガニスタンの悲劇、地球温暖化の最大の被害国アフガニスタ
ンを、何とかしなければ・・という使命感が現地に根を下ろさせたのであろう。
その根本の「水」の支援を国際的におこなわなければならない筈なのに、大国
中心の国連も救いの手をさしのべなかった。
この事がタリバンをして統治させるに任せた最大の原因である。 そしてこの間
隙をついたのが一部の集団が9・11を引き起こした図式だが、一方で今でもア
メリカの「自作自演説」も流布されているのは何故だろうか。
2000年のかんばつは、とりわけ深刻だったという。 その時のアフガニスタ
ンはタリバンが国内を統治しており、ケシの栽培は皆無というほどの超原理主義
というよりは純粋のイスラム教の統治下にあった。 しかしイスラムの教えで干
ばつが救えるはずもなく、中村哲医師の井戸掘りから更に進化した灌漑用水路の
工事は、貧しいアフガニスタンの農業復活へと拡大していくのは避けられない事
である。
今日の本文にある様に、灌漑用水路建設から、植樹、そして自前の農業復活にま
で日本人のスタッフの活動は根を下しているのである。
現地は今、過去最悪の状態にあると中村哲医師は言う。
「治安だけではない。2千万人の国民の半分以上が食を満たせずにいる。そもそ
もアフガン人の8割以上が農民だが、2000年夏から始まった旱魃により、農
地の沙漠化が止まらずにいるからだ。
給油新法を議論する前に、今なお続く米国主導のアフガニスタン空爆そして復興
の意味を、今一度熟考する必要があるのではないか。 日本政府は、アフガニス
タンに1000億円以上の復興支援を行っている。 と同時に給油新法によって
反テロ戦争という名の戦争支援をも強力に行っているのである。
給油新法で米国同盟軍と見なされれば反日感情に火がつき、アフガニスタンで活
動をする私たちの安全が脅かされるのは必至である。 繰り返すが、国際社会や
日米同盟という虚構ではなく、最大の被害者であるアフガニスタン農民の視点に
たって、テロ給油新法の是非を考えていただきたい」と。
今週は、届いたばかりの「ペシャワール会報」を取り上げているが、今回は現地
で灌漑用水路建設・植樹担当の任を終えられたN・Y氏の「干ばつに強い品種の
選定が最後の務め。 あとは乾燥に強い樹ビエラに期待」を取り上げたい。
生命をもかけた献身的な活動に参加する日本人スタッフは、常時20数名に及ん
でいる。 短期間ながら、アフガニスタンに身を投じる日本の若者も見捨てたも
のではない。 その活動のすべては、日本の人々の寄付金で賄われている。 本
稿も微力ながら維持会員として協力しているが、読者諸氏にもぜひ、支援の一口
をお願いしたい。
ペシャワール会 入会案内
http://www1a.biglobe.ne.jp/peshawar/signup.html
引用資料
ペシャワール会報 No91(直近の12月5日号)
■182 アフガニスタンに迫りくる大凶作 進まぬ復興 給油新法の不毛の
議論
▼182−2 干ばつに強い品種の選定が最後の務め。 あとは乾燥に強い樹ビ
エラに期待
用水路(カナル)での2年間のうち、大半の時間を植樹担当として過ごさせて頂
いた。 植樹の狙いは、柳による水路の護岸だけでなく、乾燥に強い樹木による
盛り土で、水路部の外壁斜面が滑り落ちるのを防ぐ法止め、土石流の緩流化等で
ある。 担当してからの一年半で本当に数え切れない本数の樹を植えてきた。
基本的には、根が自然の含水層に到達するまでが勝負である。 それまでは潅水
(かんすい)、剪定(せんてい)等の世話をする。 その中でも水路沿いの柳
は、2年間の潅水の持続で根が含水層に到達したのである。 言わば「独り立
ち」である。
依然として残されている課題は、用水路の水からも地下水からも遠い、外壁土手
の樹木の「独り立ち」である。 かなり根を伸ばさなくては自然の含水屑に根が
届かない。
現在、住民が扱い慣れている桑を中心に、乾燥に強いオリーブ等を植えている。
しかし結果が出るのが何年先の事なのか、果たして含水層に到達するのかどう
かすらも分からない。 特に桑は、水が近隣に豊富に在る場所にしか植えている
のを見た事がなく、この先、恒常的な潅水が必要になるのではないか・・という
不安が常にあった。
そんな事を考えながら、いつもの様に車を走らせ流れる景色を眺めていると、山
肌に生える、どうみても何年も潅水されていないであろう樹が目についた。 住
民に聞くと「ビエラ」という樹だ。 枝にトゲがあったりハチが寄ってきたりと
多少の問題はあるものの、乾燥には滅法強いという。 根が余程深く張るのであ
ろう。 大干ばつで桑が大量に枯れた事があるそうだが、その時も生き続けてき
たそうである。 山肌に頑強な幹の姿に、目を開かれる思いがした。
中村先生ではないが「人は見ようとするものしか見えない」という事である。
早速、後輩のY君と夏の終わりから苗作りを開始し、この冬に植樹予定である。
まもなく退任予定の私はその成長を見届ける事は出来ないが、しっかりと根付
いて我々の水路を護り続けてくれる事を願うばかりである。
この11月下旬をもって2年2ケ月にわたる現地派遣を終了させて頂く事になっ
たが、特に印象的で忘れられないのは、土ぼこりの中にシャベルを持って飛び込
んでいった中村先生の姿である。 ダンプから降ろされた土がホコリを巻き起こ
し、私を初め周りのレイバーも皆、口を布で隠す等する中、脇目も振らず猛然と
土を掻き落としていた。 大将である先生自らが水に浸かり、土を被り、シヤベ
ルを振るうその姿に、身が引き締まる思いがした。
難題に何度も何度もぶち当たりながらも、不屈の闘志で工事完遂を目指す先生の
勇姿を忘れる事はないだろう。 一つの事に命を懸ける男の姿を生まれて初めて
目の当たりにした気がする。
先生の下で短かったが2年と2ケ月の間働けた事を誇りに思う。 そしていつの
日かまたアフガンへ、我々がてがけた用水路を訪れたい。 最後に、もう会う事
もできないであろう現地人スタッフ、作業員と共に汗を流し、喧嘩し笑い合った
日々が、私にとって何よりの財産となった。 彼らの平穏な生活と幸せを願って
やまない。(記:灌漑用水路建設・植樹担当 N・Y)
ペシャワール会医療サービス
総院長 中村哲 (なかむらてつ)
九州大学医学部卒。 専門=神経内科(現地では内科・外科もこなす)。 国内
の病院勤務を経て1984年パキスタン北西辺境州の州都ペシャワールに赴任。
以来23年にわたりハンセン病コントロール計画を柱にした、貧民層の診療に
たずさわる。 1986年からはアフガン難民のための事業を開始、アフガン北
東山岳部に三つの診療所を設立。 1989年には基地病院PMSをペシャワー
ルに建設。 また病院・診療所で患者を待つだけでなく、パキスタン北部山岳地
帯の診療所を拠点に巡回
診療も行っている。
2000年以降は、アフガニスタンを襲った大旱魅対策のための水源確保(井戸
掘り・カレーズの復旧。 作業地1400ケ所以上)事業を実践。 更に200
2年春からアフガン東部山村での長期的復興計画「緑の大地計画」を継続、 2
003年3月からは灌漑水利計画に着手、2007年3月第一期工事完成。 年
間診療数約8万人(2006年度)。
ペシャワール会のホームページ http://www1a.biglobe.ne.jp/peshawar/
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