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見聞録▼179−2 集団で生き延びてきた人間の進化の過程

発行日時: 2007/11/14

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      『 隔日刊 心が元気になる オンリーワン見聞録 』  
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2007年11月14日(水)

今週は、動物学界の大御所と言われる日高敏隆氏の講演会と、氏の著書から「人
間──この集団で生き育つもの」を取り上げている。

日高敏隆氏による「東京経済大学」での公開講座「人間はどういう動物か」とい
うタイトルの講演を聞く機会に恵まれたのは10月6日(土)。  コト人間に
にまつわるテーマだけに興味シンシンな事に加えて、氏の洒脱な話し方に時間の
たつのも忘れる程に引き込まれた。

スライドを使っての講演だが、いきなりハワイで撮った写真だろうか3人の美
女、それも超ビキニスタイルで一人はトップレスという、男性にはたまらない映
像であった。

そして氏は言う。 人間に生えている毛の数は、ウブ毛も入れると動物の中で最
多だという。 数10万年の進化の過程で、現在の様に部分的な処だけに実毛
(?)が生えている。 不思議な事に髪の毛や顔のひげは、ほっておくと伸びる
一方である。 そこ以外は、うぶ毛も含めて伸びない。 

余談だが、これも不思議の一つに、ハナ毛やマユ毛、耳のウブ毛が、突然に伸び
る事である。 その為に鏡とニラメッコして手入れをすればよいのに、時折電車
などで、この毛が見苦しいにも関わらず全く無頓着な高齢者がいる。 

さて、昨日の本文にもある同じヒト科のゴリラ、チンパンジー、ボノボ、オラン
ウータンなどは、全身の毛はご存知の通り一定の長さのままである。 チンパン
ジーのロングヘヤーなどは見た事がない。 氏は未だこの訳は解明されていない
という。

「もうひとつ不思議なのが人間だけが恥毛が生えている事」と、3人の美女の大
画面を見せながらの話で有った。 この続きは次回にして、今回は、講演会にお
いても質疑のあった「集団で生き延びてきた人間の進化の過程」を、取り上げた
い。

引用資料

日高敏隆:著 「人間は遺伝か環境か?遺伝的プログラム論」
http://hb.afl.rakuten.co.jp/hgc/01f81932.ddccc361.02a700c9.da2dd44b/?pc=http%3a%2f%2fitem.rakuten.co.jp%2fbook%2f3722667%2f&m=http%3a%2f%2fm.rakuten.co.jp%2fbook%2fi%2f11568569%2f

■179 人間──この集団で生き育つもの

▼179−2 集団で生き延びてきた人間の進化の過程

ホモ・サピエンスという種が現れたのは、いつ頃かあまりよくわかっていない
が、20万年前とか30万年前であると言われている。 ホモ・サピエンスが現
れた時代には、アフリカにはすでにライオンやヒョウのような恐ろしい肉食動物
がたくさんいた。 その中に人間が現れたわけである。 人間には角もない。牙
もない。 鋭い爪もない。 走るのもそんなに速くはない。 およそ武器という
様なものを持たない動物である。

ゴリラやチンパンジーと比べてみるとわかるとおり、本当に武器となる能力がな
い。 こういう弱々しい動物が、よくぞライオンやヒョウ等という恐ろしい肉食
獣達がウヨウヨしているアフリカで生き残ってこられたものだと思うと、不思議
な気がする。 しかし人間の祖先は、何とかして生き延びて、そしてある時期か
ら世界中に広まっていった。

いったい人間の祖先はどうやって生き延びてきたのであろうか。 よくはわから
ないが、おそらく、人間は少なくとも100人、200人という、相当に大きな
集団をつくって生活していたからではなかっただろうか。

類人類の中でもチンパンジーは20匹くらいの集団をつくる。 あまり集団が大
きくなると分裂してしまうらしい。 ボノボも似たようなもので、それほど大き
な集団をつくらない。

ゴリラの場合はもっと小さく、オスを中心とする家族になって生きるそうであ
る。 オランウータンは全く単独性である。 その中で人間だけが、100、2
00、あるいはそれ以上という大きな集団をつくっていたと考えられる。 そし
て集団として自分たちの身を守る事で、ほかの動物を獲物として捕らえたり、食
べられる植物を探したりして生き延びてきたのではないだろうか。

そういう事ができたのは、やはり人間の脳が発達していたからであろう。 その
おかげで、お互い同士の複雑な関係をうまく保っていく事ができ、大きな集団と
なって生きてこられたのだろうと思われる。 人間という動物の遺伝的プログラ
ムがどの様なものであるかを考える時、この事は決定的に重要なポイントにな
る。

つまり、大きな集団の中だと、子供達はいろいろな人に囲まれて育つ。 人間の
子供だけが「成人」に達するのに10数年を必要とするので、たぶん大昔から家
族というものは存在していたと思われる。 

父親、母親という役割もその頃すでに有っただろうし、母親だけでなく父親も
ずっと子供と一緒にいて、子育てに関わってきただろうと考えられる。 また、
ひとつひとつの家族がバラバラに暮らしているのではなくて、洞窟などの中で入
り混じって生活していた筈である。

さもなければ集団として生きていた意味がない。 父親かおり母親かいて、しか
もその周りには、祖父、祖母、おじ、おばなど、ほかの家族がいっぱいいた。 
そういう中で子供達は人々のやっている事を観察し、学習しつつ、育っていった
のではないだろうか。

話は少し外れるが、ネコなどでは、メス親は子供ができるとオスを追っ払ってし
まう。 オスはたぶん危険な存在なのだろう。 メス親はオスのネコを、たとえ
それが子供の父親であっても子供には近づかせない。 他のメスが来ても、もの
すごいけんまくで追い払う。 したがって子供は自分の母親とだけ育つ。

やがて、少し大きくなった子供は、母親のする事をじっと見て、何をどう食べた
らよいか、どうしたらよいかという事を学んでいくらしい。 オス親の存在は関
係がないし、母親以外のネコも関与しないような発育の遺伝的プログラムが組ま
れているのだろう。

生き物の種によって、発育と学習の遺伝的プログラムはこうも違うのである。 
そして、そのプログラムはそれぞれの種の個体が生き、子供を残していく事をめ
ざして出来上がっている筈のものなのである。

日高敏隆 (ひだか としたか)
1930(昭和5)年、東京生れ。 東京大学理学部動物学科卒業。 東京農工
大学、京都大学教授、滋賀県立大学学長を経て、現在は総合地球環境学研究所所
長。 主な著書に「チョウはなぜ飛ぶか」「人間は遺伝か環境か?」「ネコはど
うしてわがままか」「動物と人間の世界認識」など。 訳書に「利己的な遺伝
子」「ソロモンの指環」などがある。  2001(平成13)年「春の数えか
た」で日本エッセイスト・クラブ賞を受賞。

 
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