ほぼ日刊 (修正)オンリーワン起業 見聞録 160−5
発行日時: 2007/5/26━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
発 行 インディペンデント・コントラクター(IC) 肝 付 博 昭
(有) 新規事業開発 代表
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(修正:再発行致します)
2007年5月26日(土)
今週は、「液晶AQUOS その独創と秘伝のタレ」を取り上げているが、創業者から、代々の社長に脈々と引き継がれているのは「将来を見据えて地道に事業を育て、長期スパンで経営を、次代に引き継ぐ経営モデル」に有るのではないだろうか。
1986(昭和61)年6月、「シャープ中興の祖」といわれる佐伯社長から、53歳でバトンを引き継いだ3代目の辻社長に、次の10年のカジトリが任された。 辻社長の新規事業への考えは明解である。 それは「新規事業への参入に際しては、独自性、社会貢献度、筋の良さの三つを調査分析し、基準を満たしている事を確認したら、迷わず決断する」というものである。
又、私事めいた話になるが、1970年後半の辻営業副本部長時代に新設された「国内営業の新規ルート開発部門」に呼び寄せられた。 メンバーの一員として、異業種に提案したのは、正にこの考えに沿ったもの。 企業に「新規事業開発」を提案し、3年でゼロのスタートから年間売り上げ600億にまで引き上げた部署の成果は、その薫陶の賜物であった。
今週、本稿をまとめながら、あらためて一時期シャープに身を置いた事に誇りを感じざるを得ない。 しかし離れて既に7年ちかく、既にシャープの経営は大きく変貌、20世紀迄は欲眼にめても1,5流だった会社が、液晶では超一流とまで評価される21世紀のシャープの姿は、まぶしくみえるというのが実感である。
今週は、宮本惇夫:著「シャープ独創の秘密」から引用しているが、今回は「もっと大きなTVをつくりたい・・・新規事業の柱に」を取り上げたい。
参考資料
宮本惇夫:著 シャープ独創の秘密
http://hb.afl.rakuten.co.jp/hgc/01f81932.ddccc361.02a700c9.da2dd44b/?pc=http%3a%2f%2fitem.rakuten.co.jp%2fbook%2f4303793%2f&m=http%3a%2f%2fm.rakuten.co.jp%2fbook%2fi%2f12009888%2f
■160 液晶AQUOS その独創と秘伝のタレ その5
▼160−5 もっと大きなTVをつくりたい・・・新規事業の柱に
1986(昭和61)年6月、シャープで社長交代が行なわれた。 佐伯社長に代わって、専務から昇格した53歳の辻社長社が、その時の事を次の様に語っている。
「社長就任時は1年間で円が40%も切り上がる時代で、各事業部からやれる事は何でもいいからといって緊急対策を出させた。 対策は110項目に及んだが、経費節減、事務の合理化といった対策だけでは乗り切れないのはわかっていたし、モチベーションも上がららず、先の楽しみがない。 こういう変化の時こそ新しいものに挑戦し、次の備えにしたいと思った。 そうすればモチベーションも上がる。そこで選んだのが液晶だった」
辻社長は1978年から1974年間での約7年間、テレビ事業部副事業部長から電子機器事業本部長として栃木県矢板市で映像機器を担当したことがある。 当時、辻と町田事業部長(現会長)、新本孫宏副事業部長(元副社長)の三人で、毎晩の様に「テレビ事業をどうするか」を語り合い「不夜城の矢板」といわれたとの伝説もある。
辻社長は、就任早々荒海の中に船を漕ぎ出すかの様に液晶事業の拡大強化に乗り出した。 まず1986年11月、シャープは電子部品事業本部内に「液晶事業部」を設置した。 それまで液晶は同事業本部ディスプレイ事業部のなかで、EL(エレクトロ・ルミネッセンス)、LED(発光ダイオード)などと一緒に扱われていた分野に過ぎなかった。 それを液晶事業部に引き上げたわけである。 当時、売上高が70億円ほどの、シャープで最も小さな事業部だった。
これだけでも辻社長の液晶にかける意気込みがみえる。 そして事業部長に据えたのが「電卓の鬼」と呼ばれ、液晶電卓を開発した「S734プロジェクト」のリーダーを務めた鷲塚諌である。 辻社長は「ユーザーの立場から、液晶を知り尽くした人物が最適と考え、電卓の責任者を起用した」と語っている。 結果からいえばこの起用はズバリ当たった。
「A208緊プロ」の手になる3インチカラーTFT液晶テレビの量産化は、表示不良などの問題を抱え、遅々として進まなかった。 そこで会社側は研究所の液晶研究者全員を工場立ち上げに参加させると共に、鷲塚液晶事業部長を専任で指揮に当たらせる緊急体制を敷いて対処させた。その結果、一ヵ月ほどで信頼性も確認され、技術的な問題も解決の方向に向かったが、事業として成り立つ良品率にはまだほど遠い実情だったという。
もちろん事業部は赤字だったにも関わらず、事業部内から「もっと大きいものをつくってみたい」という声が持ち上がってくる。 鷲塚事業部長も「社長が液晶事業部をつくった狙いは、3インチのテレビもいいが、もっとこれを大きくできないかという願望が込められているのではないかと解釈していた」と語っている。 勿論そこには事業部長としてなんとか採算性を上げたいという願望もあったろうが、そこでプランとして出てきたのが14インチTFT液晶ディスプレイの開発だった。
ブラウン管テレビのスタンダードが14インチ、それを十分意識してのプランであった。 なにしろ当時の液晶技術者の合言葉が「ブラウン管を凌駕せよ」だった。 しかし、どこまでも事業部内での自主開発だった。1987年10月頃の話である。
幸いシャープの場合、30センチ角のガラス基板を使って3インチを量産していた。 設備がそのまま流用できる。 いや将来のこうした可能性を予見し大型ガラス基板を使って3インチを生産してきたのがシャープなのである。 この様な「大き目のガラス基板を用いてのパネルの多面取り」はいまや常識であるが、これに着目し、最初に取り組んだのは、シャープであり、これも、シャープの持つ。秘伝のタレ‘である。
1988年3月に液晶パネル試作完了、を目標にして開発は始まった。 ディスプレイ技術開発本部長の水嶋繁光は、「当時としてはお金もかかるし、たいへんなプロジェクトだった。 技術者はどうやってつくろうかと、いっぱいアイデアを出し、従来にない設計をし、最高の材料を使ってチャレンジした」といっている。
パネルができ上がってきたのは4月末のゴールデンウイーク前。 そのパネルに回路部品を付けて電気を通す。 その作業を5月の連休中にやるということになり、回路技術者達は連休返上で作業に取り組んだ。
できあがったところで、早速、辻社長に電話した。辻社長は会議を抜け出して天理までやってきた。 じっと眺めて一言「よくやった」と皆をほめてくれたという。 「私は液晶を表示する部隊で仕事していたのですが、これが最高の勲章でした」と、ディスプレイ技術開発の水嶋繁光本部長は、当時を回想し語っている。
シャープ株式会社
http://www.sharp.co.jp/
宮本惇夫 (みやもと・あつお)
1943年生まれ。 茨城県出身。 1967年早稲田大学第2政経学部卒業。 経済誌や総合誌などの編集者を経て、1977年にフリージャーナリストとじ独立。 主に産業、ビジネス分野をフィールドに企業ドキュメントや人物論、人物評伝等を執筆。
主な著書に「決断力」(日本工業新聞社編、扶桑社)、「安岡正篤と伊藤肇=師と弟子」(致知出版社)「躍進シャープ」(日本能率協会メジメントセンター) 「コカ・コーラヘの道」(かのう書房)、「企業市民」(日本能串協会)、(野村証券5人の社長」(日本実業出版社)、「TDK人間教育道場}(講談社)、(哲学なき企業は滅ぶ」(産業能率大学出版部)など。
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