強化書141 超・格差社会の米国と、格差病社会の日本 その5
発行日時: 2006/12/8━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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2006年12月8日(金)
今週取り上げている「超・格差社会アメリカの真実」は、スタンフォード大学のM
BAを持ち、ウォール街初の日本人証券エコノミストとなった著者が、渡米して現
在迄26年、米国金融業界に実を置く中でアメリカ社会を一刀両断に斬っている。
経営戦略コンサルタント、アナリストとして活躍中の小林由美氏のプロフイールを
紹介したい。
1975年、東京大学経済学部卒業後、日本長期信用銀行に初の「女性初エコノミ
スト」として入社。 調査部で医薬品、エレクトロニクス産業を担当。 退職後、
スタンフォード大学でMBA取得。 1982年、ウォール街で「日本人初の証券
アナリスト」として、機関投資家向け調査でペインウェバー・ミッチェルハッチン
スに入社。 1985年、サンフランシスコで経営コンサルティング会社「JS
A」に参加後、セコイア・キャピタルはじめVCの投資先、コンピュータ、ソフト
ウェア関連企業やM&A、不動産開発などの業務を行い、現在に至る。 日本でも
(株)ジャングル、(株)トライポットの取締役兼任。
日本とアメリカとでは、メンタリティも違うし、共有している基礎知識やルール、
価値観にもかなりの違いがある筈なのに、真実や実態を捉えた論評に、滅多に遭遇
しない。 そういえば年に1、2度、出来の悪いブッシュを教え子に、持つNY大
学の霞見(?)教授のカラ口のコメントぐらいなものである。
本稿で以前、「『関係の空気』『場の空気』」で取り上げた作家、冷泉彰彦氏は、
アメリカ在住13年の目で、的確なレポートを、JMMで発行している。 その
「『from 911/USAレポート』第279回」から、今週のテーマと絡んだ部分
のみ、原文どおり紹介したい。
アメリカの「ホワイトカラー・エグゼンプション」は、日本で現在検討されている
内容とは全く異なる制度です。「残業のつく人」と「残業のつかない人」を明確に
区別するだけでなく、「残業のつく人」には残業をさせない、
「残業のつかない人」には成果を求める代わりに裁量権を与える、これがアメリカ
の制度です。ブッシュ政権によって、経営側に有利な変更はされています。 です
が、だからといって実質的な裁量権を与えず、時間のケジメもなく人を使っておい
て残業手当も与えない、そんなムチャクチャはそこにはありません。
小泉政権以来の日本には、アメリカ社会の模倣をする事が改革なのだという雰囲気
が濃厚にあるようです。 (中略)「ホワイトカラーエグゼンプション」の問題に
至っては、アメリカの労働慣行や制度を歪曲した挙げ句に、まったく別の非人間的
な提案に変えてしまっていると言えるでしょう。 思えば、(日本の)この粗雑な
提案は、国会での党議拘束が多様な選択肢をオープンかつ実務的に協議する環境を
奪っているからだとも言えるのです。 一党支配と官僚制度の中から常に最適解が
出てくる時代は終っているのです。
(註:「ホワイトカラー・エグゼンプション」について、今週の「その3=6日」
の前文で、触れている)
それでは、第5回は「格差を助長するアメリカの教育が抱える問題」を、取り上げ
たい。
引用資料
加藤諦三:著 格差病社会−日本人の心理構造
http://item.rakuten.co.jp/book/4132241/
小林由美:著 超・格差社会アメリカの真実
http://item.rakuten.co.jp/book/4136824/
■141 超・格差社会の米国と、格差病社会の日本 その5
▼141−5 格差を助長するアメリカの教育が抱える問題
1620年の植民開始から建国に至る150年間、東海岸の植民地を支配したイギ
リス出身の貴族らは、教会事業の一環として、多くの学校を設立した。 教育を重
んじた彼らの伝統は今もなお引き継がれ、アメリカ北東部には一流大学が集積して
いる。
しかし、アメリカの大半の地域では、いまだに知識や教育より、信仰が重んじられ
る。 その背後にあるのは、開拓時代に普及した「エヴァンジェリカル(福音主
義)」の教えである。
基本思想は、聖書を神の言葉とし、キリストを信じる事で神と直結でき、救われる
というもの。 そして、神が人間に授けた知恵は、強い信仰によって強化され、信
仰を持って優れた人格に成長した人は正しい判断を下せるとする。
ゆえに、知識や教育よりも信仰の方がはるかに大切、となるのである。 だか
ら、大統領選挙になると、候補者は大統領たるにふさわしい人格である事を強調
し、決して学歴を宣伝しない。
この様に、教育に対する社会的尊敬の念が乏しい中では、学校や教育の質を高める
のは難しい。 従って、教育を重視する富裕層は、家庭教師を雇うか、自らの手で
私立学校を作ることになったのである。 一旦、この様な枠組みができ上がると、
それを変える事は困難である。
子供の教育に莫大なコストを掛けている富裕層は、公立学校に資金を出す事を拒否
する。 資金が乏しいと学校は、教師に低い報酬しか払えない。 尊敬もされず、
低い報酬でも教師になる人の中には、高給の職に就けないからというだけの人も多
い。 教育の質は、教師の質に連動するから、これだけでも悪循環が繰り返され
る。
公立学校には数多くの貧しい階層が入り、一部の私立学校には限られたエリート層
が入る、という現在のアメリカの教育体系は、結果的に階級を固定化させる仕組み
になってしまっている。
単純労働は、次第に不要になり、付加価値の源泉が知的労働に傾いてくる現実は、
皆知っている。 にもかかわらず、教育軽視の風潮が依然として強い事実に、アメ
リカの悲劇の源を見る事ができる。
●おことわり
明日12月9日(土)は休刊し、翌10日(日)発行致します。
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発 行 インディペンデント・コントラクター(IC) 肝 付 博 昭
(有) 新規事業開発 代表
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