強化書141 超 格差社会の米国と、格差病社会の日本 その4
発行日時: 2006/12/7━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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2006年12月7日(木)
今週前半は、加藤諦三氏著作の「格差病社会−日本人の心理構造」を取り上げた。
後半は、小林由美氏著作の「超・格差社会アメリカの真実」から、 アメリカに
おける格差社会の真実を取り上げたい。
日本は、戦後、アメリカの影響を強烈に受けてきたが、様々な面でその後を追って
いる。 しかし、追いつけ追い越せの標的であるアメリカの社会を、群盲象をなで
るが如く、全体像をわかっていない。 「超・格差社会アメリカの真実」を読め
ば、その事を再認識せざるを得ない。
著者、小林由美氏によると、科学技術の先端を行くアメリカは、一方で、奇怪な宗
教国家とし、いまだにダーウィンの進化論を学校で教えるべきではないという議論
が続き、世論調査をすれば、アメリカ人の半数が、創造主による宇宙創造を信じて
いるという結果が出るという。 あの月へ人類を着陸させたアメリカが・・・であ
る。
更に「キリスト教系の雑誌には、好戦的な論調も多く、布教しているのがキリスト
教なのか、キリスト教の衣をまとった「アメリカン・ナショナリズム教」なのか、
必ずしも定かではない。 それでもテレビを見れば、連日アメリカの「自由・平等
・民主主義」が高らかに語られ、庶民がホームレスに手を差し伸べる姿が放映され
る」と聞かされれば、これではとても「追いこす対象」にもならない。
アメリカは、4つの階層から成り立っていたが、今では3つの階層に分かれた社会
である。
まず、「特権階級」は、純資産10億ドル以上の超金持ちと、純資産1億ドル以上
の金持ちとで構成される。 その下に位置するのが、純資産1000万ドル以上の
富裕層と、純資産200万ドル以上で、且つ年聞所得20万ドル以上のアッパーミ
ドル層からなる「プロフェッショナル階級」である。 彼らは、高給を稼ぐ為の高
度な専門的スキルを持っている。 この上位2階層を合わせた500万世帯前後、
総世帯の上位5%未満の層に、全アメリカの60%の富が集中している事になる。
そして最下層にいるのが「貧困層」。 4人家族で年間世帯所得約2万3100ド
ルに満たない世帯である。 彼らは経済的に社会から落ちこぼれている層で、アメ
リカの人口の25〜30%前後を占める。
元々3つめめの層だった「中産階級層」は、アメリカ企業が1970年代以降、国
際競争力を失った事で、リストラや合併を余儀なくされた事で2分化し、一部は上
位の「プロフェッショナル階級」ヘステップアップしたが、大半は「貧困層」への
道を辿っているという。 ざっと60%の中産階級層が、この30年あまりで見
事に2極化したのである。 モノづくりが、アジアへシフトしつつ有る状況下、日
本にとっても他人事ではない。
それでは、第4回は、「アメリカの富の偏在は何故おきたのか」から入りたい。
今週の引用資料
加藤諦三:著 格差病社会−日本人の心理構造
http://item.rakuten.co.jp/book/4132241/
小林由美:著 超・格差社会アメリカの真実
http://item.rakuten.co.jp/book/4136824/
■141 超 格差社会の米国と格差病社会の日本 その4
▼141−4 アメリカの富の偏在は何故おきたのか
アメリカの富の格差は、1980年代以降、急速に拡大している。 その大きな理
由のひとつに、次の様な政府の政策転換があったのである。
レーガノミックスのトリック: レーガン政権下のアメリカでは、大幅な所得税減
税が行われ税収入が減少した。 その一方、軍備拡張戦略の展開で財政支出は増大
した。 この財源不足のギャップを埋める方法として考え出されたのが、社会保障
税(給与税)の税率と限度額の大幅な引き上げだった。
社会保障税は、年金給付金や老人医療補助など、最低限の生活を保障するために使
われる。 給与税と称される通り、全ての労働報酬が対象で、賃金や給料の総額か
ら同一の税率で天引きされる。
働いて賃金を得る限り、貧困ライン以下の人でも給与税を支払わなければならな
い。 この給与税の対象限度額は、レーガンからブッシュ・シニア、クリントン政
権になっても上昇を続け、2003年時点で、税収総額に占める割合は、個人所得
税と給与税がそれぞれ70%と等しくなった。 つまり、主に働き手が負担する給
与税と、主に富裕層が負担する個人所得税は、総額が等しくなったわけである。
給与税と並んで大幅に上昇したのが、ガソリン税である。 ガソリンは品質に会社
ごとの差がなく「貧乏人ほど相対的に税負担が大きくなる」逆累進課税になる。
貧乏人への増税によって、金持ちへの大幅減税を実現する、これがレーガノミック
スのトリックだったのである。(註:海外に明るい竹村健一氏でも、TVのコメン
トを聞く限りこれらの事にはふれていない)
クリントン政権: レーガノミックスを引き継いで金持ちの資産積み上げを加速し
た。 加速の原因は、株価や不動産価格の上昇である。 株価は、基本的に企業収
益と金利で決まる。 金利が下がれば、株価も不動産価格も上昇する。 金利を下
げるには、投資収益率の低い無駄な借り入れ需要を減らせばいい。 それには、最
大の借り手である政府の借り入れを減らす必要がある。 それが同政権で実現し、
1990年代後半アメリカは久々の大型景気に沸いた。 牽引力となったのは「情
報化による富の創造」つまり「情報革命」である。
その引き金となったのが、コンピュータやインターネットの技術革新である事は間
違いない。 それは実体経済や生活を変え、金融市場も拡大して、アメリカ産業界
の空洞化を加速したのである。 この1990年代後半の好景気は、大半の働き手
にとって「ジョブ・ロス」好景気だった。 統計で見れば失業率は下がったが、技
術革新のおかげで増えた仕事には単純労働が多く、実質賃金は上がらなかったので
ある。
ブッシュ政権とイラク侵攻: ブッシュ政権の方向を決定的にしたのは、同時多発
テロである。 では、イラク侵攻を強引に押し切った理由はどこにあったのだろう
か。 その真の目的のひとつとして、石油の確保と石油企業の利益である。 イラ
ク侵攻によって、アメリカの石油関連企業は膨大な利益を得た。 2004年の株
価上昇率上位50社のうち13社がエネルギー企業で、そのうち8社がブッシュの
お膝元であるテキサス州を本拠にしている。
2004年の選挙資金寄付者上位50社を見ると、1位のゴールドマンサックスを
筆頭に、金融機関が18社と群を抜いている。 因みに2006年5月、ブッシュ
大統領は、ゴールドマンサックスのCEOヘンリー・ポールソンを財務長官に指名
し、国務省ナンバー2だったロバート・ゼリック国務次官は、入れ替わりに同社の
マネージング・ディレクターに就任したのである。
この人事が、何を意味するかは明らかだろう。 アメリカの富の多くは、政府と一
部企業の所有者や経営者間で、巧みに誘導されているのである。
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発 行 インディペンデント・コントラクター(IC) 肝 付 博 昭
(有) 新規事業開発 代表
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