強化書141 超・格差社会の米国と、格差病社会の日本 その3
発行日時: 2006/12/6━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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2006年12月6日(水)
「経済を引っ張る企業が国際競争力を失っては困る」という経済界の意を受けて、
来年度の税制改正について、法人税減税の検討を、政府税制調査会が、安倍首相に
提出した事は既報の通り。 これと並行して、進められている「ホワイトカラー・
エグゼンプション」という言葉をご存じだろうか。
日本語では「自律的労働時間制度」と呼ばれるもので、今後の日本人の働き方を大
きく左右する新しい労働法制である。 エグゼンプションとは「免除」という意味
で、一見響きの良い言葉に聞こえるが、実際はその逆で、労働基準法で定められて
いる1日8時間、週40時間の労働時間規制を適用しないという事である。
平たく言えば働き手1人当たり年114万円の残業代が無くなるという試算(労働
運動総合研究所)も出ている。 先の所得税の減税ではなく、法人税の減税に、更
に追い討ちをかける様に、総人件費の一段の圧縮を図ろうとする経済界の強い要望
なのである。
これらの事を、TVも新聞も大きく取り上げない為に、国民的議論にもならず、
スッーと実現させようとするのが安倍内閣である。
問題の「ホワイトカラー・エグゼンプション」について、下記のサイトを、見てい
ただきたい。
「残業代11.6兆円が消失 と試算した牧野・日大経済学部長が斬る」
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20061204/114861/
「格差病社会−日本人の心理構造」の著者は、日本の経営者は「アメリカの成果主
義とどう戦うのか」の視点が必要だと説く主張は、「日本的経営は解体の最終局面
へ」と警告する牧野・日大経済学部長と、リンクしているのである。
世界で最も優秀な民族を抱えていても、今のやり方では、日本は衰退するかもし
れない。 少なくとも、すでに心理的に衰退している事は間違いない。
今週は、加藤諦三氏著作の「格差病社会−日本人の心理構造」そして小林由美氏著
作の「超・格差社会アメリカの真実」の2冊から、日本とアメリカを対比しながら
「格差社会」を、取り上げている。
その3回目は「格差病社会−日本人の心理構造」から、「失敗しても人生を充足で
きるという、ホモ・バチエンス思考」を取り上げたい
引用資料
加藤諦三:著 格差病社会−日本人の心理構造
http://item.rakuten.co.jp/book/4132241/
小林由美:著 超・格差社会アメリカの真実
http://item.rakuten.co.jp/book/4136824/
■141 超・格差社会の米国と、格差病社会の日本 その3
▼141−3 失敗しても人生を充足できるという「ホモ・バチエンス」思考こそ
救い
ホモ・ファーベル(働らく人問)は、成功を目指す人で、成功と失敗の範囲でしか
ものを考えられない人である。 ホモ・パチエンス(苦悩する人間)は、最もはな
はだしい失敗においても、自らの生を充足できる人で、充足と絶望の範疇で生きて
いる人である。
これは、ヴィクトール・エミール・フランクルの主張で、次元的にホモ・ファーベ
ル(働らく人問)よりもホモ・パチエンス(苦悩する人間)が優位であると言う。
ホモ・ファーベル(働らく人問)という視点から考えれば、負け組の人も、ホモ
・パチエンス(苦悩する人間)という視点から考えれば勝ち組になるかもしれな
い。
ヴィクトール・エミール・フランクルは「夜と霧」という本でも有名な、ナチスの
強制収容所を奇跡的に生き延びた精神科医である。 ナチスの強制収容所での苛酷
な運命を生き延びた著者が、解放された翌年にウィーンの市民大学で、その体験と
思索を語っている。「それでも人生にイエスと言う」3回の講演集で纏められた。
「勝ち組、負け組」と騒ぐのは、経済的に勝ったか負けたかという事だけである。
生きる事の意味を考えないで、ひたすら金儲けに走った第2次世界大戦以後の日
本人は、ホモ・ファーベル以外の何ものでもなかった。 ホモ・ファーベル(働ら
く人問)の生き方考え方は、戦後の経済成長を支えるのには適合していた。 しか
し、次の時代の課題を解決するには、この生き方は不適合な生き方である。
何を最も大切にするかは人によって違う。 大切なのは、価値の序列である。 村
上ファンドの村上世彰代表が逮捕前の記者会見で、「金儲けって悪いことですか」
と言った。 テレビで見る限り、誰も「悪いです」とはっきりと言っていないが、
それは悪い事である。
社会には、個々の合意に先立つあらかじめの合意がある。 お葬式に、赤のセー
ターを着ていくのはよくない。 トイレのドアに青が記してあれば男性用であり、
ピンクが記してあれば女性用である。 それが、社会の共通感覚である。 お互い
に言わなくても、守るのが当たり前の事が社会にはある。
「どこが悪いの」と言った村上世彰代表は、共通感覚つまり社会に対する帰属意識
に欠けている。 援助交際をする女子中学生が「誰にも迷惑をかけていない、どこ
が悪いの」と言うのと同じである。
お金を儲ける事、その事が悪いのではない。 その他の価値に比べて、金儲けをト
コトン優位にした事が悪いのである。 無茶苦茶な金儲けによって、一般の人々の
価値観の構造に悪影響を及ぼした事が悪いのである。
日銀の福井総裁が、そこに1000万円拠出している。 そして、これまた「ルー
ルに従っている」と言い、それを、首相が問題ないと言う。 日本のトップを支配
している非社会性の恐ろしさを感じる。
首相や日銀総裁の感覚は、食事中に鼻をかむ様な事ができる感覚である。 トップ
がここまで拝金主義で非社会的なのに、一般市民に「拝金主義は良くない」と言っ
ても、それは無理である。
もし、経済成長が持続的に達成されたとしても、今のままでは心理的病が多くな
り、結果として肉体を病む人も増える。 労働による所得格差ばかりが論じられて
いるが、それは問題解決にはつながらない。 格差そのものではなく、その格差に
人々が「納得していない」事が問題なのである。
納得していない格差だから、人々は不快になる。 まじめに働く人の所得が少ない
一方で、マネーゲームで大金を得る人がいる。 その上に、それを規制緩和の成果
だと言われたら、怒る方がまともである。
マネーゲームの勝利者に対して、「規制緩和の副作用みたいなもので、目的はこの
様な事でない」「あの人々は、規制緩和のマイナスの部分なのだ」と言えば、誠実
に努力している人々の気持ちも違ってくる。
だが、今は説明が逆である。 国全体が劣等感、抑うつ感情、拝金主義という中で
景気が回復するから、人々が格差、格差と、格差の部分を探してくるのである。
成果主義だ、競争原理だと騒いでいる今の日本を見ていると、戦国最強の軍団を率
いながらも天下を取れなかった武田信玄を思い出す。 武田信玄は、孫子の兵法の
一節である「風林火山」の軍旗を掲げて戦った。 しかし孫子の兵法は、もともと
中国の広大な平野で戦う時の兵法である。 それなのに、小さな島国で、しかも同
質社会の農耕民族の日本で、そのまま用いることは無理な話なのである。
それは、成果主義や市場主義を、地球上どこの地域でも使える一般的な経営の仕方
と受け取ってしまうのが間違いであるのと同じである。 アメリカの成果主義、市
場主義、競争主義が良いといっても、アメリカを理解していなければ、どこを日本
に取り入れていいかわからない。
日本の企業経営者は、日本的経営によって「どう、アメリカの成果主義と戦うの
か」を考えるべきだったのではないだろうか。 少なくとも、成果主義を日本的経
営のように練り直して取り入れねばならないのである。 世界で最も優秀な民族を
抱えていても、今のやり方では、日本は衰退するかもしれない。 少なくとも、す
でに心理的に衰退している事は間違いない。
発行者 註:ヴィクトール・エミール・フランクル (フリー百科事典 ウィキペ
デイアより)
1905〜1997年。 ウィーン生まれ。 オーストリアの精神科医、心理学者
ウィーン大学在学中よりアドラー、フロイトに師事し、精神医学を学ぶ。 ウィー
ン大学医学部精神科教授、ウィーン市立病院神経科部長を兼ね、「第三ウィーン学
派」として、又独自の「実存分析」を唱え、ドイツ語圏では元々知られていた。
フランクルの理論には、マックス・シェーラーの影響が濃く、マルティン・ハイ
デッガーの体系を汲む。 ナチスの強制収容所の極限的な体験を経て生き残った人
であるが、ユーモアとウィットを愛する快活な人柄であった。 9月没。
参考資料
ヴィクトール・エミール・フランクル:原作 山田 邦男、 松田 美佳:訳
それでも人生にイエスと言う
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発 行 インディペンデント・コントラクター(IC) 肝 付 博 昭
(有) 新規事業開発 代表
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