ほろびゆく日本語を憂ひて〜叙情歌・愛唱歌から古典への誘ひ |
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ほろびゆく日本語を憂ひて(72号)
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前回は、「奥(おき)には平家、ふなばたをたゝいて感じたり。陸
(くが)には源氏、ゑびらをたゝいてどよめきたり」で終わりました。
与一の鏑矢が見事に的中しました。で、その後どうなったのでしょう?
物語は次の「弓流し」の段に移ります。「弓流し」も有名な逸話でありま
す。私の年代の人はどこかで知っている話ではあります。けれども、どこ
で知ったのか皆目見当がつきません。ただ、馬上の武士が、波に揺られな
がら必死になって、弓を拾っている挿絵だけは妙におぼえているのです。
「弓流し」の全文をあまさず紹介したいと思います。(3回シリーズにな
るかもしれません)
「弓流し」
あまりの面白さに、感(カン)にたへざるにやとおぼしくて、
舟のうちより、とし五十ばかりなる男の、
* 「舟のうちより」ですからどっちの軍かわかりますよね?
黒革(くろかは)をどしの鎧着(き)て、
白柄(しらへ)の長刀(なぎなた)持ッたるが、
扇立てたりける処に立ッて舞ひしめたり。
* 舞い占めたり=「足場を十分に取って舞った」の意か?
伊勢(の)三郎義盛、与一がうしろへあゆませよッて、
* あゆませよって=馬を歩ませ寄って
「御定(ヂヤウ)ぞ、つかまつれ」=主君のご命令だぞ
と言ひければ、今度はなかざしとッてうちくはせ、
* なかざし=鏑矢とは違う尖った矢
* うちくはせ=しっかり弓につがえ
誰が? おわかりですよね。
よッぴいて、しゃくびの骨をひやうふつと射(ゐ)て、
* しゃ=相手を軽蔑する接頭語=そいつの(首の)
ふなぞこへさかさまに射たをす。 =射倒す
平家のかたには音もせず。
源氏のかたには、またゑびらをたゝいてどよめきけり。
「あ射(ゐ)たり」と言(い)ふ人もあり。
又、「なさけなし」と言(い)ふものもあり。
* なさけなし=人情味がない、嘆かわしい、この両意を
込めている(そうです)。
* 筆者注=それにしても、この哀れな武士がなぜ「感に堪えない風]
に扇の処に立って舞ったんでしょうか?不思議です。
だから、別に射ることもなかったのに!の意味か?
平家これを本意(ほい)なしとや思ひけん。
* 本意なし=残念だ、遺憾だ
楯(タテ)ついて一人(いちにん)、弓持ッて一人(いちにん)、
長刀持ッて一人(いちにん)、武者三人なぎさにあがり、
* この3人の描写、いいですねえ!「読み聞かせ運動」の原点です。
目に浮かぶようです。
楯(タテ)をついて、「かたきせよ」とぞまねひたる。
=楯をついてた男が「攻めて来てみよ」と誘った
筆者注=この3人、勇気ありますよねえ。もう舟を離れて砂浜に
上陸しているんですよ。
判官、「あれ、馬づよならん若党(わかたう)ども、
はせよせてけ散(ち)らせ」との給へば、
* 馬づよい=馬に強い、馬術に長けた
武蔵国の住人、みをの屋の四郎・同(おなじき)藤七(とうじち)、
上野(かうづけの)国の住人丹生(ニウ)の四郎、
信乃(しなのの)国の住人、木曾の中次(ちゅうじ)、
五騎つれておめいてかく。
* おめく=喚く・叫く
* か(駆)く=馬に乗って走る
う〜ん、ここから面白いんですが、続けると相当長くなりますので、
短いですが、今日はここまでに。すみません!
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◆岩切良信の【ほろびゆく日本語を憂ひて】叙情歌・愛唱歌から古典への誘ひ
◆発行:トランスワールド 大阪市中央区南船場1-13-15
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