私は外国語を教えていますが現在至るところに「カタカナ英語」が氾濫しており、このままだと美しい日本語が滅びてしまいます。もう一度古典などの日本語を見直し、先人の心の豊かさ・優しさを学びませんか。
- 最新号:2005-12-13
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ほろびゆく日本語を憂ひて
発行日: 2005/7/12***********************************
ほろびゆく日本語を憂ひて(68号)
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<さち>さまより「ひえつき節」の想いをいただきました。これって、
有名なんですかね? 私の郷里である<日向の国>だけに伝わる民謡で、
そんなに知られていないのでは?と思っていました。ついでながら、母
のお葬式には、BGMに「ひえつき節」を流してあげました。
とともに、前回での、私の合いの手が面白かったともいただきました。
<さち>さま、いつもありがとうございます。さて、前回の続きです。
「判官もたのもしげにぞ見給ひける。」←前回はここまででした。
いよいよ義経が見守るなか、与一が弓を射る場面からです。
矢ごろすこしとをかりければ、
海へ一段ばかりうちいれたれども、
* 一段=約11メートル
猶(なほ)扇のあはい七段ばかりは
あるらむとこそ見えたりけれ。
筆者注=京都の「三十三間堂」は通し矢で有名ですが、
ここが約60メートルですから、それより遠いです。
ころは二月十八日の酉刻(とりのこく)ばかりの事なるに、
* 酉刻(とりのこく)=午後6時頃。黄昏で矢を射るには不利
をりふし北風はげしくて、磯うつ浪もたかかりけり。
舟はゆりあげゆりすゑただよへば、
扇もくしにさだまらずひらめいたり。
* くし=扇を挟んだ串
おきには平家舟を一面に並べて見物す。
陸(くが)には源氏くつばみを並べて是を見る。
* くつばみを並べて=轡(くつわ)=馬首を並べて
いづれもいづれも晴(はれ)ならずといふ事ぞなき。
=陸も海も晴れがましい心境であった。
与一、目をふさいで
「南無(なむ)八幡大菩薩、 我(わが)国の神明(しんめい)、
日光権現(につくわうのごんげん)・宇都宮・那須のゆぜん大明神、
願(ねがは)くはあの扇のまンなか射させてたばせ給へ。
* たばせ(給へ)=深い敬意を表わす語
これを射(ゐ)そんじる物ならば、弓きりおり自害して、
人に二たび面(おもて)をむかふべからず。
いま一度(いちど)本国へむかへんとおぼしめさば、
この矢はづさせ給ふな」
と、心のうちに祈念して、目を見ひらひたれば、
風もすこし吹(ふき)よはり、扇も射(ゐ)よげにぞなッたりける。
与一、鏑をとッてつがひ、よッぴいてひやうどはなつ。
小兵といふじやう、 =小兵に相応しく、
十二束(そく)三(みつ)ぶせ、
筆者注=にぎりこぶし十二と指三本分の長さ(の矢)。
大兵はふつう十五束の矢を用いていた。
弓はつよし、 → 与一は小兵ながら腕力はあった
浦ひびく程ながなりして、
=(彼が射った矢の音は)浦々いったいに鳴り響いて
あやまたず扇のかなめぎは一寸ばかりをいて
ひッふつとぞ射(ゐ)きッたる。
筆者注=鏑矢(かぶらや)ですから、風を切る音がします。
現代語では「ひゆ〜っ(と)」でしょうか。
鏑は海へ入(いり)ければ、扇は空へぞあがりける。
しばしは虚空(こくう)にひらめきけるが、春風(はるかぜ)に、
一(ひと)もみ二(ふた)もみもまれて、
海へさッとぞ散(ち)ッたりける。
筆者注=このあたりの描写、うまいですねえ!
まるで私たちも映画のスローモーションを見ているようです。
夕日(ゆふひ)のかかやいたるに、
みな紅の扇の日出(いだ)したるが、しら浪のうへにたヾよひ、
うきぬ沈(しづ)みぬゆられければ、
筆者注=今度は私たちの視覚に訴えています。
これまた見事な描写ではありませんか。
奥(おき)には平家、ふなばたをたゝいて感じたり。
筆者注=拍手するわけにもいかないでしょうからね。
源氏、ゑびらをたゝいてどよめきけり。
那須与一 明治44年(1911年)
作詞 不詳
作曲 不詳
1)源平勝負の晴の場所
武運はこの矢に定まると
那須の与一は一心不乱
ねらい定めてひょうと射る
2)扇は夕日にきらめきて
ひらひら落ちゆく波の上
那須の与一の誉は今も
屋島の浦に鳴りひびく
この歌は知りませんが、「平家物語」の那須与一の段をうまく
まとめていますよね。こういう唱歌から本格的に「古典」への道
が開かれていくのでしょう。こんな素晴らしい文学が日本にはある
ことを再認識して欲しいものです。美しい日本語を滅びさせては
なりません。
NHKの「義経」でここを登場させるかどうかわかりませんが、もし
描いてくれるのなら、先にここを読んでいたほうがいいと思います。
なぜなら、文字によるイメージは、それぞれがそれぞれに描くもの
だからです。よしNHKが放映したとしても、それはあくまでも演出家
のイメージだからです。
次回は、この続き「弓流」です。
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