トップ > 学校・教育 > 日本語 > ほろびゆく日本語を憂ひて〜叙情歌・愛唱歌から古典への誘ひ

私は外国語を教えていますが現在至るところに「カタカナ英語」が氾濫しており、このままだと美しい日本語が滅びてしまいます。もう一度古典などの日本語を見直し、先人の心の豊かさ・優しさを学びませんか。




ほろびゆく日本語を憂ひて

発行日: 2005/2/1

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                   ほろびゆく日本語を憂ひて(46号)

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 栃木県は宇都宮市の、50代の男性(自営業)からメールいただきました。
<仕事も少なく親会社からのリストラにいつも怯え...そんな折仕事が暇
 になり時間ができ...友人からこのメルマガを教えてもらい...古典やら、
 30年以上遠ざかっていました。...いつも楽しみにしておりますので、
 お体にお気をつけて長くお続けていただきたいとお願いいたします。>
       (趣意)
ありがとうございます。いつも勝手なことばかりを書いており「もう止め
ようか」といつも「怯えて」います。でも皆様から激励をいただく度に、
意を強くして続けています。同年代の方からメールをいただくと、特に嬉
しく思います。私たちは戦後の、激動の昭和史を曲がりなりにも生きて参
りました。競争ばかりの人生でもありました。先輩世代のためにせっせと
厚生年金を支払ってきて、受給年齢に達する頃には「もうない」という。
ここでクタバッてたまるか!と、生きて行きましょう。お互いに!

 さて「冬」といって思い出す歌で、みなさん、何がおありですか。
私は「冬の星座」です。♪こ〜がらし とだえ〜て...です。
   (やっと♪ を出す方法を娘に聞きました・あはは)

       冬の星座     昭和22年(1947年)
                作詞  堀内敬三
                作曲  ヘイス(米)

  1 木枯らしとだえて 冴ゆる空より
    地上にふり敷く 奇(くす)しき光よ
    ものみな憩える 静寂(しじま)の中に
    きらめき揺れつつ 星座はめぐる
      * 奇(くす)し=神秘的で、不思議である
  2 ほのぼの明かりて 流るる銀河
    オリオン舞い立ち スバルはさざめく
    無窮を指さす 北斗の針と  
    きらめき揺れつつ 星座はめぐる
      * 無窮=限りや終わりがないこと・永遠


寒い寒い夜に、窓の外をふと見ると、一瞬、音のない世界が目に入って
きます。「?」と思い窓を開けると、いつの間にか木枯らしが止んでい
ます。寒空を見上げると、凍れる月影が小さく無言で白く輝いています。
「あんた、おったん?」と声をかけたくなります。きれいです!
「凛」(寒さが厳しい・きりっと引き締まっている様子)という感じが
浮かびます。そんな感動を堀内敬三氏は見事に表わしてくれています。
       <♪木枯らしとだえて 冴ゆる空より>。
       <♪ものみな憩える 静寂(しじま)の中に>
この詩人に拍手を送りたいのです。日本語の美しさを余すところなく伝
えてくれる大傑作だと思います。2番の歌詞も雄大で、いいですね〜!
      <♪オリオン舞い立ち スバルはさざめく>
こんな詩がよく書けるものです。それもそのはず、堀内敬三氏は「家路」
「モーツアルトの子守歌」を作り、訳詞には「アニーローリー」
「ケンタッキーの我が家」「故郷の人」などがあります。

さらに「冬の星座」には、私の好きな<冴ゆる><流るる>と助動詞「らる
(る)」の連体形が使われていて、現代文にはない、美しい響きが心に残り
ます。そう、あのフランク永井さんの<♪ 乱るる心に>です。

でも残念ながら、
私の今住んでいるところは、大阪はミナミといわれる所で、街の灯りやネオ
ンサインで全く星は見えません。ただ前述のように月だけは見えますが。

「冬の星座」は私の小さい頃の、町が美しかった頃のイメージにぴったりで
す。三橋美智也さんの「星屑の街(まち?)」を思い出します。それから
「星降る夜」もありました。
季節は夏でしたが、高校生の頃、鹿児島と宮崎の県境の<えびの高原>にキ
ャンプに行きました。自転車でです。早朝に出発したのですが、山また山を
越え、夜中の8時頃になっても着きません。仕方なく野宿することになりま
した。その時の星空が忘れられません。満天の星です! 
手を伸ばせば届きそうなのです!もし触れば「チヤリン」と音を立てて割れ
そうなのです!何よりも、思わず額に手をかざしたくなるほど、星たちが流
れ落ちてきそうなのです!その夜空に蛍がツ〜、ツ〜と舞っていました。
この話を子どもにすると、半信半疑ながら目を輝かせて聞いていました。
22歳になる息子が昨年末から正月にかけて、鳥取の砂丘を見に行くと言って
出かけました。でも大雪で行く手を阻まれたようです。しかし、星がきれ
いだったそうです。「親父の言ったこと、わかるわ」と言っていました。
私も死ぬまでにもう一度、あの星空を見たいと願っております。
でもやっぱり星を見るのは「冬」でしょう。今は全国的に流行っている冬の
風物詩ともなりました、イルミネーションの飾り...。みんなはきれい、と言
いますが、私は身の置き所のない侘しさを感じます。都会人はかくも寂しいの
でしょうか。それとも、私が天邪鬼なのでしょうか。
木枯らしが途絶えた時、街中でいっせいに明かりを消してみませんか。

ところで、「冬の星座」の原曲はラブソングだったそうです。信じられないで
すよね。つまり、堀内氏の直訳でも意訳でもなく、創作のようです。すごい!
一応、私の専門であるロシアの歌にもあるんです。それは「トロイカ」です。
<♪ 雪の白樺並木...>と軽快なテンポで日本語は歌いますが、実はこれ悲
恋の歌なのです。少し内容をご紹介します。
トロイカ(3頭だての馬車)の御者が、乗ってきた若者に聞きます。
   「どうしたい、若え〜の。元気がないじゃないか」。
若者は言います。
   「聞いてくれるかい、御者のおじさん!実は将来を約束した恋人が、
    お金持ちのタタール人に奪われてしまったんだよ」。
        * ロシアは「タタールのくびき」といって約200年間,
            異民族に支配されていた時代があります。
それを聞いた御者は。しばらく走っていましたが、たまりかねて、
馬に「おい、T止まりやがれ!」と命令し、しばし、深いため息をついた、という
歌詞です。ですから歌う人は荘重に悲しく歌います。
「冬の星座」も「トロイカ」もどこでどうなったんでしょうか。
「トロイカ」が軽快なリズムに合うように、「冬の星座」も恋しい人を恋い
焦がれている時の歌(?)と思えば、思えなくもないですよね。
次回は ♪ 狭霧消ゆる...の「冬景色」です。


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◆岩切良信の【ほろびゆく日本語を憂ひて】叙情歌・愛唱歌から古典への誘ひ

◆発行:トランスワールド 大阪市中央区南船場1-13-15

◆お問い合わせ・質問・感想等は E-mail:ivakiri@yahoo.co.jp

http://www.geocities.jp/ganchan316/ [ほろびゆく日本語を憂ひて]

http://www.geocities.jp/ivakiri/ [めだかの学校奮戦記]

◆毎週火曜日発行  【無断転載禁止】

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