小学校中退で大学卒業の創作舞踊家・花柳幻舟と仲間たちが、日常の出来事から内外の政治、経済、教育等々の小さな疑問や大きな矛盾について、自由でユニークな観点であれこれ考え語るメッセージマガジン。
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花柳幻舟さんとあれこれ考えてみる(2007.2.10号)
発行日: 2007/2/10
― 誰にとっての「美しい国」? ―
私が好きな落語の演目のひとつに、「高津(こうづ)の富」とい
うお噺(はなし)があります。ストーリーはというと‥‥、
手持ちの一分というわずかな小銭が全財産の男。泊まった宿の亭
主にあたかも自分が豪商で大金持ちであるかのような大ボラを吹い
たがために、それを信じた亭主から売れずに残って困っていた一枚
の富札を一分で買ってほしいと懇願される。話の成り行きで断れな
い男は文字通り一文無しになってしまう。翌日、何もすることがな
い男がぶらりと出かけた先は、富札の抽選が終わったばかりの高津
宮(こうづぐう)。そこに貼り出されていた一等千両の富札の当選
番号を見ると‥‥、というものです。
ホラ吹き男や宿屋の亭主、富くじの抽選会に集まった庶民の感情
描写など面白いストーリーで、私はこのお噺を聞くたびにまさに抱
腹絶倒なのですが、とりわけ(故)桂枝雀さんがこのお噺をすると
きの枕(本題に入る前の小話)の部分が気に入っています。それは、
「金は天下のまわりものと申しますが、どこへでも回ってくるのか
と思いますと、それが違うのやそうです。回る道が決まっているの
です。ルートがあるわけでございます。お金というものは寂しがり
屋だそうです。もっと仲間のたくさんいるところへ飛んで行こうと、
有るところへ有るところへと、どんどん集まるようにできているの
でございます。ですから、金を貯めようと思えば、まずお金を貯め
ないといけないのでございます」
というような枕なのですが、なるほど、石川啄木ではありません
が、働けど我が暮らしが楽にならないのは、私が“お金の回る道”
からはるか遠いところにいるからなのか、と納得。
本メルマガ新年号で、我が自操連の永世総裁(幻舟さん)がおっ
しゃっているように、『小さな努力で大きなお金』が自操連の<5
か年計画>です。しかし、“自転車操業”の身では「寂しがり屋」
さんを、孤独を感じさせないように厚くおもてなしする間もなく(
お金を)お見送りしなければなりませんので、いきなり“大きなお
金”が来るなどということはとても無理のようです。自操連事務総
長としては、まずは少しずつ仲間を呼んでもらえるよう“小銭”を
大事にするところから、始めようと総裁に進言いたしました。
しかしそうはいっても、真面目に働いている人たちの多くが、将
来の自分の生活に不安を感じているという今のニッポン社会はどう
考えてもおかしい。好景気、好景気といわれながら、働いているの
に生活保護水準以下の暮らししかできない「ワーキングプア」とい
われる人たちが現在400万世帯いるともいわれ、いまもどんどん増え
続けているというような今のニッポン社会は絶対に間違っている。
1998年以降、毎年3万人以上の自殺者を出しながらいまだに何の対
策も見出せずにいる今のニッポン社会は明らかに異常である、私は
そう思います。
安倍首相は年頭記者会見で、「私の内閣が発足してこの100 日間
で美しい国づくりに向けて、礎(いしずえ)を築くことができたと
思います。今年は、この礎の上に大きく前進する年にしていきたい
と考えています。今年を、私は美しい国づくり元年としたいと思っ
ています」と言っています。
安倍首相のいう「美しい国」とは一体どういう国なのでしょうか。
「美しい国」の内容について国民に何ら具体的な説明もせずに、ど
うして「礎を築くことができた」などと大見得きって言えるのでし
ょうか。私にはまったく理解できません。「美しい」というフレー
ズを頻繁(ひんぱん)に口にすればするほど、「汚い」作意が見え
てくるように思えるのは私だけでしょうか。
そもそも万人が同じものを見て、「美しい」と思うものが、この
世の中にあるのでしょうか。ある人にとっては「美しい」ものであ
っても、他人からみればそうでないというような例は枚挙にいとま
がないでしょう。
以前聞いたことがあるのですが、『モナリザ』という、レオナル
ド・ダ・ヴィンチが描いた「美しい肖像画」として世界的に有名な
絵がありますが、幻舟さんはこの『モナリザ』という女性の微笑(
ほほえみ)を見て、決して「美しい」とは思わないそうです。これ
は幻舟さん固有の「美」に対する感性です。当然のことですが、人
それぞれで違う感性なのですから、「へえ、そう感じる人もいるの
か」と思うことはあっても、「そんなバカな、おかしいんじゃない
?」などと否定されるものでは決してありません。
私は、力を込め得意のポーズをきめてみせるボディービルダーの
鍛え上げられた筋骨隆々の肉体がどうしても「美しい」とは思えま
せん。しかしある日、「これこそが美しい体なんだ、男はこうある
べし!」などと言われ、肉体の鍛錬を命令されたらと‥‥、考えた
だけでもぞっとするでしょう。
ある価値観を特定の人たちに強要されるということは恐ろしい社
会です。他人に自分の感情まで押し付けられることは怖い世の中で
す。
当初は何を言っているのかわからなかった安倍首相のいう「美し
い国づくり」の恐ろしい内容が、日々正体を現してきました。
そのひとつは、高齢者や低所得者層への実質増税であったり、パ
ート・アルバイト・契約社員・派遣社員といった、雇用主にとって
都合のいい非正規雇用者を増大させる法改正であったり、労働者を
タダ働きさせることを認める法改正であったりと、要は富める者と
貧しい者とを徹底的に分極化する国づくりであり、国民ひとりひと
りをきっちりと明確に「格づけ」する国づくりなのです。
こんな強者にとって住み心地のよい「美しい国づくり」のために、
どうして私たちが犠牲にならなければならないのでしょうか。
別に美しくなくたっていいじゃないですか。建物がいささか古か
ろうが、道路が少々デコボコであろうが、いいじゃないですか。そ
れよりも、みんながやさしく他人を思いやり、いたわりあい、お互
いの命を大切する社会であってほしい。
あの世で枝雀さんが、「ほんまの意味でお金は天下の回りものに
なったから、もうあの枕は使えんなあ」と、笑いながらぼやくよう
な、正直に働く人々が生きがいを持て、将来に夢を持てるような社
会であってほしい。私は心からそう考えます。
【自操連(自転車操業インターナショナル連合会)、
事務総長・中森明彦】
<あとがき>
□「人口統計学では、女性は15歳から50歳までが出産をしてくださ
る年齢だ。2030年に30歳になる人を考えると、今、7、8歳だ。も
う、生まれてしまっている。産む機械と言ってはなんだが、装置が、
もう数が決まってしまった。機械と言っては、本当に申し訳ないん
だけども。機械って言ってごめんなさい。その産む役目の人が、ひ
とり頭(何人産むということ)で頑張ってもらうしかない」
去る1月27日、松江市で開かれた集会での柳沢厚生労働大臣のこ
の発言は、つい口が滑ったというような問題ではない。
ただ単に、「言い方が間違っていました。すみません」と頭を下
げて済まされるような単純な問題ではないことを考えてもらいたい。
どうしてこんな古色蒼然たる愚かな差別発言をしたのか、自分自身
の意識を問い直し、自己の深層心理等を謙虚に検証する、自己に向
き合ってその中でもう一度思考し直す。その上で、真摯に向き合っ
た結果としての謝罪となったのであれば、力強く説得力のある謝罪
となって表れたことでしょう。
昨日今日、急に日本が少子化になったわけでもないのに、自分た
ちの「少子化対策」の無能さを棚にあげて、「少子化」の責任を女
性だけに押し付け、あげく戦時中の「産めよふやせよ」のごとく、
女性を国のために働く「機械」“産む道具”としてしか見ない厚生
労働大臣に、どうして「少子化対策」「国民の福祉」など期待でき
ようか。
先日、元青森県住宅供給公社の職員に公金を貢がせたチリ人女性
が来日したことがマスコミで報じられていた。
彼女は「女」という最大限の「武器」によって大金を手にしたの
だが、柳沢厚生労働大臣説でいえば、彼女は「機械」に徹した立派
な存在だということになるのだろう。ただひとつ、元職員との間に
子どもを産まなかったことは、厚生労働大臣、お気に召さなかった
かもしれない。
ところで、青森県民の皆さんにぜひうかがいたい、「県の住宅供
給公社職員が彼女に貢いだ気の遠くなるような大金、取り返せ!
なんて怒って実質的行動を起こしている住民はいらっしゃらないの
ですか?」と、幻舟さんからの問いかけですが、ご存知の方は教え
てください。
□幻舟さんのホームページは、
http://www.k5.dion.ne.jp/~genshu-h/
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【へんしゅう・幻舟事務所】
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