小学校中退で大学卒業の創作舞踊家・花柳幻舟と仲間たちが、日常の出来事から内外の政治、経済、教育等々の小さな疑問や大きな矛盾について、自由でユニークな観点であれこれ考え語るメッセージマガジン。
- 最新号:2008-10-10
- 発行周期:月2回(10日、25日)
- 読んでる人:105人
- 創刊日:2004-02-26
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花柳幻舟さんとあれこれ考えてみる(2005.11.25号)
発行日: 2005/11/25─────────── 幻舟の今日のひとりごと ─────────── <弱者を守るのは、社会の知性> ホームレスや高齢者、幼児、障害者など、弱者に対する犯罪が多発し ています。 「弱い者いじめ」などというものは、わずかなことでも、人間として恥 ずべき行為だと、私などは幼いころから教育されてきています。 近ごろ多発しているのは、単なる「弱い者いじめ」などと軽く見過ご せるようなものでは決してありません。陰湿(いんしつ)で残酷な反社 会的行為ばかりです。これらを見てみると、今日の社会を象徴するかの ように、弱い者いじめをしている人間が、実は社会で弱い立場や、弱い 精神構造をもった、強いものに向かうことのできない軟弱(なんじゃく) な、卑劣(ひれつ)で卑怯(ひきょう)きわまりない人間の所業(しょ ぎょう)ばかりです。 これまた現代を象徴するかのように、それらを目撃しても、知らんぷ りで通り過ぎていく、我が身大事が先行する人間も増殖しているのです。 誰だって自分が大事です、当然でしょう。しかし自分が実力行使しな くっても、少し知恵を使えば、大事を小事に収める方法もあるのです。 その少しの知恵でさえ使うすべを忘れてしまった、物質文明に汚染され た現在の日本。 無自覚・無意識・無関心は、日々伝播(でんぱ)し、社会全体を汚染 して、結果社会生活の中で一番弱い人たちが被害を受け、おまけに置き 去りにされていくのです。 今年、猛暑のある日のことです。 道幅は5〜6メートルぐらいで、車も少なく、四季折々の樹木が道両 脇に豊富で、ゆっくり歩いていると、大都会にいることを忘れさせてく れるような風景の道が近所にあって、ときおり私は散歩コースとして出 かけます。 私の自宅から1キロあたりに、小さな公園があり、その先500メートル 余りいくとコンビニがあります。散歩をかねて買い物にも出かけたりし ていますが、その日は激烈な暑さでしたが、2週間以上も自宅での原稿 書きで部屋にカンヅメ状態。私は、気分晴らしに散歩をかねてコンビニ でアイスでも買うつもりになり出かけました。 この散歩コース、行きはよいよい帰りはしんどい急坂。公園とコンビ ニの間とくにすごいのが公園の手前から150メートル余り。いつも帰りは この急坂で1日のエネルギーを使い果たしたような、そんな感じさえさ せてくれる、急坂なのです。 何日か前に通販で買った夏の帽子をかぶってフラフラと、猛暑の中、 出かけたのは昼過ぎ。 木々が多いおかげで、部屋の中よりは涼(すず)しい。 小さな公園で、子どもたちが遊んでいます。 久しぶりの散歩に、私はリラックスして歩き、コンビニで予定してい たアイスを買い、またフラフラと帰路に向かいました。 急坂にさしかかる頃、私はフッと前方を見あげ、戦慄(せんりつ)と ともに、我が目を疑った。 公園の入口に黒い車を止め、男が出てきた、しかしその男、自分のズ ボンの前のファスナーを開け、性器をつまみ出し、つまんだ手でプルン プルンと振っています。 性器を振りながら男の視線は、公園の道を隔(へだ)てた、すなわち 私のほうからみると、右側に建っているマンションのゴミ置き場に設置 されている水道の水で無邪気(むじゃき)に遊んでいる2歳くらいの女 児に向けられていたのです。男の口元はうっすら開き、笑(え)みさえ ふくんで。 瞬間、恐怖と怒りが私の全身を包み、ジェット噴射のように動かした、 と同時に、「コラー! うちの児(こ)に何するんじゃ〜」と、響き渡 る大声を発していたのです。 怒鳴りながらも、私は駆けだしていました。いつもこの急坂で、「ほ とんど死んだ、死んでまう」などとひとり言をいいながら、息も絶え絶 えで這(は)うように登るその坂道を、私はそのとき、飛ぶように駆け だしていました。 私の猛スピードに煽(あお)られて、3,000円で買った帽子も、頭から スッ飛んだ。 女児に手の届く位置まで行っていた男は、私の凄(すさ)まじい大声 と形相をチラリと見ました。瞬間、男は動きを止め、ドアを開けたまま の自分の車に駆けこんだ。それは、ちょうど私が女児を抱き上げるのと 同時でした。 男は車のドアを開けたままだった、ということは、ワイセツ行為目的 の誘拐犯だったかもしれません。まさに間一髪、女児は私の手の中で守 れました。 急発進で、すぐ右側に曲がって消えてしまった男の車、くやしくも私 は車のナンバーを確認する間がなかった。 抱き上げた女児は、私の顔をのぞきこむように甘えながら、ニコニコ と「ジャブ、ジャブ、ネ、ジャブ、ジャブ」と、愛らしい声でびしょび しょに濡れた小さな顔を見せていう。 水遊びに興じて、頭も顔もぐっしょりの女児。無邪気な顔を私は見な がら、無事でよかった、ほんまに何事もなくって‥‥、と心から安堵( あんど)しました。 しかし、親たちはどこに行ったんや! と、公園のほうを見ると、の っそりのっそりとベビーカーを押しながら近寄ってくる20歳代の数人の 母親らしき女性たち。 他の幼児たちは公園の中で遊んでいたらしく、女児ひとり、公園の外 に出て、公道を横断し、水道で水遊びをしていたようでした。 しかし、我が子が自分の周りから見えなくなっても不安を感じないく らい母親同士が雑談に興じていられるなんて、私には想像の他で、まっ たく理解できません。 女児は、母親の姿が見えても私から離れようとしません。私は女児の 濡れた髪や顔をハンカチでふいてあげながら、いま起きた出来事を女児 の母親にかいつまんで話しました。 「ああ‥‥そうですか」と一言発しただけの母親、私は愕然(がくぜん) でしたが、とにかく交番に届けてほしい、他の子どもたちや治安のため に、と妙な話ですが、私は届け出を説得しました。 やっと渋々で届け出を承諾した母親。他の母親らは、冷たく帰ってい きましたが、女児の母親は、ほんのわずかの距離にある交番なのに、よ っぽど行きたくない理由があるのか、私のうしろからのったりのったり と、ついてきます。 ベビーカーにも乗らず母親にも近寄らず、なぜか私の手を小さな手で しっかり握りしめ、私から離れません。私をときおり見上げニコニコし ている愛らしい女児を見て、こみ上げてくるように心から無事でよかっ た、ホンマによかったと、実感しました。 交番に向かって少し行きかけると、どこからか現れた5〜6歳くらい の男の子が、飛ばした私の帽子を差し出してくれました。大声で怒鳴り ながらふっ飛んでいった私の姿をこの子は見ていたのでしょう。それで 私が飛ばした帽子を拾って、待っていてくれたのでしょうネ。なんとい うやさしい子。大人は無自覚おまけに我が子の急難さえ察知(さっち) しないくらい無関心。それを思うと、私の心は、真っ暗け。しかし、そ の男の子のやさしい思いやりの行為に接し、心がなごみました。 交番で、私が事件の概要を話しました。 中年の警察官は真剣に話を聞いてくれ、メモを取っていましたが、そ の間、女児の母親はメールを送ったり、交番の隅(すみ)で笑いながら ケータイをかけたりと、事件の重大さについてまったくわれ介せずで、 他所(よそ)ごとのようにしらけた態度。張りとばしてやりたい思いを 私はぐーっと堪(こら)えていましたが、我慢の限界を超えたのでしょ う、オマワリさんも、ついに怒りました。 「お母さん! この方がいなかったら、いまごろ大変なことになってい たかもしれないのですよ。この方が危険をかえりみず身体を張って、あ なたのお子さんを助けてくださったのですよ、わかってるんですか! 当然、私たちももっと巡回しなければなりませんが。とにかく、今回大 事にならなかったのは、この方のおかげなんですからね。お礼くらいお っしゃったらどうなんです。さっきからケータイやメールばっかりして。 ご自分のお子さんでしょう! 子どもを守るのは親御さんなんですよ。 お母さん、しっかりしてください!」 女児は、ずーっと私の手を離しません。 その場の雰囲気を察知したのか、少し不安げな表情をときおり見せる ものの、明るく愛らしい女児が、私をときおり見つめる澄みきった瞳が、 いまでも忘れられません。 子どもは親を選べません。こんな無責任で無教養で、ものごとの判断 力も乏(とぼ)しい大人になりきっていない人間でも、その人から生ま れたら、その人の子なのです。 望むと望まざるとに関わらず、生まれた瞬間から決まってしまう親子 関係。 小学生の女の子が殺害され、段ボール箱につめられて遺棄(いき)さ れたというニュースが、いまラジオから聴こえています。 あのとき、無心に水遊びをしていた愛らしい女児の顔がフッとよみが えりました。あの児(こ)もこんな残酷な被害者になっていたかも‥‥ と思えば、背筋の凍る思いはぬぐえません。 この事件により、さすがに警察も、即、危険を訴えたポスターを要所 要所に貼りだしてくれました。 “危機管理”といえばオーバーに感じられる方も多いでしょうが、もう 少し、身辺を気づかってほしい。 自分の生きている社会での危機管理。自分の体験を他者にも伝えるや さしさ。 明日は我が身だと思う想像力と判断力、洞察力。早い話が、無意識・ 無自覚・無関心ではなく、思考停止の人間ではない、しっかりものごと の考えられる人間でなければ、いまの世の中、危険がいっぱいなんです から。 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ お 知 ら せ 『花柳幻舟さん 映画と講演の集い』 日 時:2005年12月16日(金) 5時30分会場、6時開演 場 所:熊本市民会館 入場料:前売り 1,800円、当日 2,000円 大学生以下は500円 後 援:熊本県、熊本県教育委員会、熊本市、熊本市教育委員会、朝日 新聞、西日本新聞、熊本朝日放送(KAB)、エフエム・クマモト (FMK)、熊本シティエフエム(FM791)、紀伊国屋書店・熊本店 <11月25日現在> (その他メディア等にも後援予定あり) ※当日は保育室の準備もしております。 お預かり料は500円(保険料込み)。受付にお申し込みください。 ※講演終了後、幻舟さんの2冊の新著、『14歳の死刑囚』(現代書館)、 『ウソつきは、人間の始まり』(健学社)のサイン会も行います。 問合せ: 「花柳幻舟さん 映画と講演の集い」を成功させる実行委員会事務局 熊本市京町1−12−2 京町会館1階 ドリームカンパニー44内 電話・096−325−7544 担当・今村哲雄 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ <あとがき> □みなさん、お待たせしました。猛暑のなか、膨大な資料をひとつひと つ検証することから始まった幻舟さんの執筆活動が、2冊の新著という “結晶”になって、いよいよお披露目となります! 12月初旬発売、も う間もなくです! □これまでもお知らせしてきましたように、1冊は(株)現代書館刊、 『14歳の死刑囚』。定価は1575円(税込)です。 「14歳で死刑!? そんなバカな!! と、考えている貴方(あなた)に贈 る警告の書。いざというとき命がけで向き合ってくれる人が、世の中に たったひとりいれば、大きな迷路に迷い込まない少年少女たち。『人は ひとりでは生きられない』という著者の体験的哲学を踏まえながら、現 代の若者たちに語りかける少年少女の刑法入門。厳罰化(げんばつか) で少年凶悪犯罪は抑止できない」(本書申込みチラシより) □そしてもう1冊は、健学社刊『ウソつきは、人間の始まり』。 定価1470円(税込)。 「現代社会の不条理をズバリ指摘し、生きることの勇気と愛を語り実践 する著者自身が掴(つか)みとった、生きるための寸言集。誰にも話せ ない心の悩みを抱きしめているあなたに—、生きていることをあきらめ かけているあなたに—、人間の愛を信じられなくなっているあなたに—、 自分の人生の目的が見えなくなっているあなたに—、どう教育していい かわからなくなっている教師たちに—、ぜひ読んでいただきたい」(本 書申込みチラシより) 2冊とも一字一句に幻舟さんの魂が込められた、やさしさと愛情あふ れる力作です。 もうすぐお近くの書店店頭に並びます。みなさん、ぜひお買い求めく ださい。 また新著発売を記念して、来年1月21日(土)午後3時より、大阪の ジュンク堂書店・難波店において、「花柳幻舟 出版記念 お話し&サ イン会」が開かれることが決定しました。こちらのほうもぜひご参加く ださい。詳細につきましては次号にてお知らせいたします。 □このメールマガジンについてのご感想などは、 genshu-h@mail.goo.ne.jpまでどうぞ。 【へんしゅう・昇】
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