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花柳幻舟さんとあれこれ考えてみる(2005.3.25号)
発行日: 2005/3/25
幻舟の今日のひとりごと <−三権分立− 裁判官の法服(ほうふく)はなぜ黒いか> 権力分立⇒三権分立は、いうまでもなく権力の集中による権力濫用(らんよ う)、国民の権利を侵害されることを避け、国民の権利を保障しようと、立法 (国会)、行政(内閣)、司法(裁判所)が互いに国民の自由と権利を保障す るためを目的として作られた。まさにこれが国民主権の日本国憲法の骨子でも ある。 誰でもご存知であろう三権分立などを、なぜ今、私がここで書いているのか ‥‥。 3月16日下された今回の狭山第2次再審請求特別抗告の最高裁判所[裁判長 ・島田仁郎(しまだにろう、66才)、東大法学部卒業]の結果を見ていると、 “三権分立”は果たして日本にあるのだろうか? と、疑問に思ってしまった からである。 <狭山事件(埼玉県)とは> 1963年 5月1日 女子高生が下校途中行方不明となる。 その夜、同女宅に同女の通学用の自転車と脅迫状が届く。 深夜、身代金を持って同女の姉が犯人指定の場所に行く。警察官40 人以上の大包囲網の中、身代金はなぜか奪われずスルリと犯人を取 り逃がしてしまうのである。 県警は山狩り等の大捜査を展開するが、5月4日、同女学生の殺害 された遺体を発見。その責任をとって柏村警察庁長官は辞表提出。 当時、世の中では身代金目当ての誘拐殺人事件が続発していた。し かも犯人を取り逃がしてしまうという警察の失態続きで、警察権力 のメンツは丸つぶれの状態、警察は焦(あせ)っていた。 5月6日 この事件の重要人物とされていた男性が自殺した。 当時の国家公安委員長は「犯人に死なれてはたまらない。必ず生き て捕まえる。自殺した男はシロ」と、なぜか断定し、警察の威信を かけて犯人に“しやすい”人を、まさに一本釣りのような形で、現 場周辺の被差別部落を集中的に捜索した。 その結果、警察は「死体を埋没に使用した」とするスコップを麦畑 から発見。 5月23日 被差別部落の石川一雄氏(当時24才)が微罪による違法な別件逮捕 となった。 極貧と差別により、劣悪な生活を余儀なくされている石川一雄氏は、 学校にはほとんど行っていないために当時識字能力は、小学校低学 年以下という。 そんな石川一雄氏が作成したという脅迫文も有力な証拠物件となっ た。 5月23日 別件逮捕後、1回目の家宅捜索(刑事12人動員して2時間17分)。 6月18日 2回目の家宅捜索(刑事14人動員して、2時間8分)。 上記2回の捜索でまったく見つからなかった被害者所有の万年筆が 見つかったのは、第3回目の家宅捜索、6月26日だった。 この日はこれまでと違って、刑事3人、捜索時間も24分というわず かなもの。しかも、これまでに捜索を終えている台所の入口の鴨居 (かもい)の上、誰が見ても丸見えの状態で置かれているのを発見、 押収したのである。 7月9日 石川一雄氏は、殺人、強盗、婦女暴行、死体遺棄という罪状で、埼 玉県浦和支部で起訴された。 1963年から2005年の今日まで、彼は、殺人、強盗、婦女暴行、死体遺棄とい う極悪非道な罪名を背中に背負わされたまま、30有余の年月を生きてきたので ある。 高い所に座る裁判官の服装が、傍聴席や、被告席から見上げると黒いマント のように見える。 あの黒い上着というかマントのことを法服(ほうふく)と呼ぶ。 なに色にも染まることのない黒。予断と偏見を含まない、どんな色にも染ま ることのない黒、真のジャッジとしての仕事をするという証(あかし)、それ が黒い法服なのである。 それとは真反対に、『嫁ぐ家』『あなた(夫)の好きな、なに色にでも染ま ります!』という主体のない白、それが花嫁衣裳の白無垢(しろむく)姿であ る。 裁判官の着ている法服の黒は、主体を持ち、凛(りん)とした裁判の公平さ を謳(うた)った、予断と偏見を決して許さない、なに色にも染まらない正義 の黒なのである。 しかし、今回の最高裁の判断は法服に恥じない決定だったろうか。 ◎今回新たに提出された筆跡鑑定書(被害者宅に届いた脅迫状と事件後に警察 で書かされた文書筆跡とはまったく違うことを立証した) ◎脅迫状の宛名の周辺に万年筆で書かれた跡があるので「ボールペンで書いた」 という石川一雄氏の自白は事実でない。従って自白全体に信用性がない、な ど、新たに示した証拠を、裁判官は本当に熟読したのだろうか。 私は、次の2点を想像する。 ?現在、司法は裁判官不足で、一説には裁判官ひとりが年間かかえている事件 は約400件ともいわれている。従って被告側が命を削って作成した新証拠 書面など詳細に読んでいるヒマは皆無(かいむ)とも考えられる。 ?日本国憲法の骨子である三権分立という理念を無視して、三権である立法( 国会)、行政(内閣)、司法(裁判所)のどこやらをチラチラ意識して、最 高裁特別抗告棄却決定としたのでは‥‥などと私は考えてしまうが、これは 私の妄想(もうそう)だろうか。 私のことを書く。 私はずーっと以前、「小学校、出てないねんから文字なんか書けへん」と、 疎外感と劣等感に心が冷えきり、孤独に打ちひしがれたりしたとき、自分の心 の中で強がりをいって奮い立たせ、必死で生きてきた。そんな頃、狭山事件を ニュースで知った。 私はピーンときた。 「この人、読み書きできひんから、警察に騙されたんや、警察になめられたん や」 と、直感した。無学な人間は、いたって勘がいい。 同情は差別のひとつである。同情しながら、その人は非識字者を見おろし、 おのれは優越感にひたる、そんな人種をごまんと見、ごまんと裏切られてきた 当時の私は、“自己を信じて、他者を頼らず”をモットーに生きていた。 義務教育を受けていないだけで奇異な目で見、字が書けないだけで軽侮(け いぶ)する。 東京のJRに“目白駅”と“目黒駅”というのがある。私はその字を読み違 えて、まったく逆の駅に行き、仕事に大遅刻をした経験がある。 文字が読めないことのつらさを、読み書きのできる人間には、おそらく理解 できないことだろう。 私が「警察になめられたらいかん!」と、大きな(?)志をもって読み書き の勉強を始めようと思いいたったきっかけは、変ないい方かもしれないけれど、 石川一雄氏のおかげなのである。 権力の恐ろしさを知る無学な私は、明日は我が身だと、心底直感したからで ある。 <あとがき> □前号でお伝えしました、月刊『学校健康フォーラム』(株・健学社)5月号 からスタートする幻舟さんのコラムについて、学校の先生や“不登校”の子ど もさんを持つ保護者の方などから、「ぜひ読みたいのですが、どうしたらよい でしょうか」といったお問合せを数多くいただきました。改めて詳細をお知ら せします。 幻舟さんのコラムのメインタイトルは『子どもの目線から見た大人たち』。 日々の様々な出来事について、子どもたちの目線に立って考えながら、人間 としての尊厳について、幻舟さんが自らの体験を通して語るコラムです。とい っても幻舟さんのことですから、難しい言葉ではなく“ひらがな的”でわかり やすく伝えてくれることと思います。 第1回目のコラムが掲載される5月号は、4月15日発売になります。 以後、毎月15日発売、定価は700円。このコラムは来年の3月号までの約 1年間にわたって連載されます。お近くの書店の店頭にない場合でも、その書 店でご注文していただければ取り寄せてくれます。 なお書店での取り寄せができない場合には、幻舟さんいわく「健学社の社長 さんはきちんとしたやさしい方だから、電話で申し込んでもらえばすぐに対応 してくださる」そうですから、直接発行元の健学社(03―3222−0557)まで電 話でご注文していただくか、同社のホームページ http://www.kengaku.com/ からお申し込みください。 幻舟さんのピュアな感性から発せられる言葉は、大人たちへの貴重なメッセ ージとなると確信します。ぜひ多くの方に読んでいただきたいと思います。 □3月13日、愛知県渥美町の「男女共同参画事業」の一環として開かれた幻舟 さんの講演会が、多くの町民の皆さんを集め大成功をおさめました。 約20年ぶりに渥美町を訪れた幻舟さんですが、講演の中で渥美町とのつなが りを話したり、前号で紹介した『あつみ音頭』を唄うなどの“サービス”もあ って、町民の皆さんは幻舟さんを一層身近に感じたことでしょう。 会場入り口では、発行からちょうど1年になる幻舟さんの著書『小学校中退、 大学卒業』(明石書店)や、『逃げたらあかん!』(KKロングセラーズ)も 販売され、講演後はサイン会も開かれるなどして、こちらも大盛況だったとの ことでした。 このサイン会では、現役の学校の先生から「なに気なく発せられる大人たち の言葉を子どもたちがどう感じているのか、子供たちとの接し方など、大変参 考になる話が聴けて、私も反省するところが多かった」と、お礼の声が幻舟さ んにかけられたそうです。 「直接こういう声を聞くと、講演会をやって本当によかったなあとつくづく感 じる」という幻舟さんも、さらにパワーアップしてまた次の講演に臨まれるこ とでしょう。 今回の講演会は、幻舟さんの長年のご友人であり主治医の北山ドクターもメ ンバーの一員である渥美町の女性グループが発案し、行政に働きかけて実現し たのだそうです。講演会を成功させるために奔走していただいた皆さんに心か ら感謝します。 この夏から秋にかけて開かれる講演会もすでに数多く決まってきているそう ですが、それまでに新たに2冊、書き下ろしの単行本も出版します。 多くの方々に元気と勇気を与える幻舟さんの講演会が、全国各地で開かれた らどんなに素晴らしいことでしょう。 幻舟さんの講演会は行政等が主催する大きなものばかりではありません。小 さなグループの集会でもお話をしています。 このメールマガジンをお読みいただいている方で、幻舟さんの講演会を開い てみようかなと興味をお持ちになられた方は、ぜひ下記メールアドレスまでお 問合せください。 幻舟さんの類(たぐい)まれなエネルギーは、人々の心にきっと大きなパワ ーを与えてくれるに違いありません。 このメールマガジンについてのご感想などは、genshu-h@mail.goo.ne.jpま でどうぞ。 【へんしゅう・昇】
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