小学校中退で大学卒業の創作舞踊家・花柳幻舟と仲間たちが、日常の出来事から内外の政治、経済、教育等々の小さな疑問や大きな矛盾について、自由でユニークな観点であれこれ考え語るメッセージマガジン。
- 最新号:2008-08-25
- 発行周期:月2回(10日、25日)
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- 創刊日:2004-02-26
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花柳幻舟さんとあれこれ考えてみる(2004.11.10号)
発行日: 2004/11/10───────────
幻舟の今日のひとりごと
───────────
<私を産んでくれた母が逝った>
私が7、8歳ころだった、父と私を残して旅回り先から母は去って行った。
それまでは、母も舞台に立ち、役者としてつとめ、座員の食事係り、三味線
弾きと、ありとあらゆる仕事を小ねずみのように走り回って働いていたことを
私は覚えている。
その母が、幼い私を残して去って行った。
大衆から遊離(ゆうり)していく芝居を、いきいきとした元々あった大衆の
文化を取り戻すため情熱をかける父。しかし、その父を裏切る仲間たち、そし
て世の中の旅芸人に対する差別と偏見。
幼い私にも父が哀れであり、またそんな父を敬愛していた。
母は旅先に時折訪ねてきてくれていたのですが、その足も次第に遠のいてい
き、いつの間にか姿を見なくなった。そんな母が私は憎かった。
だけど、父にはいえなかったが、幼い私には母が恋しかった。
夜、芝居小屋の楽屋で、センベイ蒲団を頭からかぶって、捨てていった母恋
しさに「お母ちゃん…、お母ちゃん…」と声を殺して泣いたことも度々だった。
父を裏切った母を恋しがる自分の中にある矛盾を、幼いながらも戸惑い、あ
らがっていたのだろう。
母とは、私が大人になってから、友人のような形でお付き合いをするように
なった。母の言葉の端々から推察するに、母の生れや、幼年期から娘時代は筆
舌につくしがたい苦渋の連続だったようだ。母は心ない大人たちのせいで、心
の奥底に大きな決して癒えることのない空洞をもってしまった。そのためにい
うなれば後天的愛情欠乏症である。常に人を恋うる、それが母の人生をなお切
なくさせたのだろう。
父と幼い私を捨てて愛する人を選んだはずの母は、その人とは結婚せず、た
った一人で暮らし、本年7月14日、90歳を1年前に、ひっそりと帰らぬ人とな
った。
“人は生きてきたように死ぬ”という。客観的にはまさに母は孤独に逝った。
しかし、主観的にみるとき、私の母は戦士のごとく闘いつづけ、自分の人生を
貫き通し、ついに自己解放を勝ち取り、豊かに死を迎えたと私は思う。
母と同じ血が自分の体の中に流れていると、自己嫌悪に陥った若いころの私。
人を恋うる心を必死で抑制して生きた私の心の中には、母のような“女”にな
ってはいかん! と、母を憎むあまり、母の全人生をも否定的にとらえようと
したこともある。
しかし、もし私が、母のような生まれ育ちだったら…
人生を絶望し、90歳まで生きる勇気はなかっただろう。だが、私の母は生き
つづけた。自分の生まれ育ちと闘った人だ。そのエネルギーは、母が私に垣間
見せてくれた、意地とプライドからのものであろう。
人間、生きていてなんぼのもん。
「死んだもん貧乏、死んだらなんにも反論できまへんで」と、私に口癖のよ
うに叱咤(しった)してくれた母。
私は意地とプライドを支えに、今日まで元気で、そして、笑うことを忘れず
に生きてきた。「何もしなければ何も変わらない」をモットーに。
自戒を込めて「人を信じて、人を頼らず」を心に叩きこみ生き抜いてきた。
考えてみると、どうやら私が生きのびてきたのは母のDNAのおかげらしい。
八重歯をみせて、可愛い顔でオチャメに笑ってくれる母。その母にもう二度
と私は逢えなくなってしまった。
「お母ちゃん、よう闘って生きたネ。おつかれさん…」
今、心から母に私はそういいたい。
☆☆ 緊 急 告 知 ☆☆
幻舟さんの新著、『逃げたらあかん!』(KKロングセラーズ)が去る10月
20日全国一斉に発売となりました。
これを記念して下記の通りサイン会が開かれます。
お近くの皆さん、ぜひお越しください。
日 時 11月13日(土)午後5時〜6時
場 所 ジュンク堂難波店 3階喫茶コーナー
(大阪市中央区難波千日前 なんばグランド花月前、
地下鉄御堂筋線・千日前線・四つ橋線「なんば」駅下車、3番出口)
電話06―6635―5330
<あとがき>
□幻舟さんの新著『逃げたらあかん!』(KKロングセラーズ)の売れ行きが
好調です。
前作の『小学校中退、大学卒業』(明石書店)でも多かった反響のひとつで
すが、「幻舟さんの真摯な姿は、これまで自分がイメージしていた幻舟さん像
とはまったく違っていた」という感想が今回も多く寄せられています。
おそらく皆さんがイメージしている幻舟さん像は、エキセントリックで独善
的な猪突猛進型の人間なのでしょうか。これがマスメディアの誤報と伝聞等に
よって作られた全く偽りの像であることは、幻舟さん自身が卒業論文で検証し
ています(この論文は前出の『小学校中退、大学卒業』に掲載されていますの
で、ぜひお読みください)。
一度作り上げられたイメージを払拭するのには大変なエネルギーが必要です
が、この本が一人でも多くの人々に読まれることによって、幻舟さんの本当の
姿が伝わっていくことを心から切望します。
そして、こんなにも人間を愛し、芸を愛し、悩み苦しみながら必死で自分を
探し求め、自己と闘い、その苦しみや哀しみを決して表に出さずに快活に生き
ているひとりの人間がいることを、ぜひ多くの人に知ってもらいたいと思いま
す。
加えて、行き先の見えない今の時代であっても、この本はきっと多くの人た
ちに生きるヒントと力を与えてくれるに違いないと確信しています。皆さん、
ぜひ周りの方々にも薦めて下さい。
【へんしゅう・昇】
ご感想などはgenshu-h@mail.goo.ne.jpまで。
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