体力勝負の一人旅 No.112【沖縄一周編】
発行日時: 2006/11/29
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【8日目・2006年11月18日】
昨夜のことである。海が見えるホテルの部屋で日記を付けていると、
外から沖縄らしいリズムの太鼓の音が聞こえてきた。フロントに電話
し「何かイベントをやっているんですか」と尋ねたが、「当ホテルの
イベントではありません」とのことだった。
ついつい見に行きたくなるようなリズムが続く。カチャカチャとい
う音も聞こえてくる。私は自転車で音のなる方へ行ってみた。
ホテルの目の前には沖縄コンベンションセンターや宜野湾港マリー
ナがある。どうやらその一角から聞こえるようだ。真っ暗な遊歩道の
向こうから明かりが漏れる。フェンス越しの駐車場で20〜30人が踊り
ながら太鼓を叩いているのが見えた。踊っているだけの人もいれば、
三線を弾いている人もいる。
演奏が終わり休憩になったので駐車場へ入ろうとしたが、一般人が
自由に出入りできないところのようだった。出入り口には有料駐車場
によくある遮断機のようなゲートがあり、併設している管理棟には警
備員が一人いる。辺りが真っ暗なのをよいことに、姿勢を低くし警備
員に気づかれないようにゲートを通過。あとはいちもくさんだ。
踊っていた人たちの近くで自転車を止めた。休憩中にもかかわらず
2、3人ずつで練習している様子を見ていると、一人の青年が近づいて
きた。
「場所を借りさせていただいています」
どうやら管理人と間違えているらしい。私が旅人だというと、近く
にいた女性が「いっしょに踊ってみませんか」と言う。
彼らは沖縄国際大学の学生でエイサーを踊るサークルのメンバーだ。
エイサー好きが集まって、やりたい人は誰でも拒まず歓迎しているの
で学生以外もいるそうだ。確かに本当に休憩している人はほとんどい
なくて、振り付けの練習をしている人ばかりだ。エイサーの晴れ舞台
は8月のお盆の時期、今の時期はただ練習するのみ。それなのに真剣
に取り組んでいる様子には若さのパワーを感じた。
いろいろと説明してくれたのは今帰仁村出身の石川さん。活力のあ
る若い人と話して元気をもらった。「続きはホテルで聞かせてもらう
よ」とお別れした。
朝は天気予報どおり雨だった。それも強い雨。目標は達成したのだ
からもうサイクリングする必要はなかった。しかし昨日行くことがで
きなかった洞穴が心残りだ。自転車で強行するか、バスで行くか。
昨夜の10時過ぎにフロントへ情報収集に行ったが、フロント係の姿
がなかった。そこへ警備員が戻ってきて「すいません警備中だったも
ので」。このホテルでは警備員が夜間のフロント係になるようで、接
客態度もフロントと同レベル。警備員情報によると、片道5Kmで2Kmは
平坦、あとは上り3Km。
朝、フロントの女性にバスルートがあることも確認した。すぐにイ
ンターネットで時刻表を印刷してくれた。本数は多い。あとは私の気
持ちしだいだった。
雨の中を自転車で走ることはそれほどいやでないが、そのあとの濡
れた体や着替えを考えるとバスに気持ちは傾く。しかし、そんなこと
を考えながら朝食を終えると、外は少し明るくなり小降りになってい
た。もう部屋に入るときには自転車で行くと決めていたようだった。
自転車に乗る格好でチェックアウトする。フロントの女性には「普
天満宮洞穴に行ってきます」と告げて、荷物を預かってもらった。そ
んなことをしているうちに雨は強くなっていた。
警備員の言ったとおり2Km走ったところで坂道が始まった。ゆっく
り登ったのできつい坂だったかどうか記憶がないが、坂が緩くなりか
けたところで普天満宮の案内板。そのころにはバケツをひっくりかえ
したようなとんでもない雨になっていた。
神社では七五三の御祈願・御祈祷が行われていて、出入り口では車
を誘導する警備員が出るほどの参拝者がいた。周辺には他に神社がな
いらしく、神社の前にはスタジオがあり、地域のほとんどが神社へ行
くときにはこの神社を利用しているようだった。
受付で洞穴の見学希望を伝えると、みこさんが神社の裏へ案内して
くれた。そこには洞穴への入り口があり、鍵がかかっている厳重さだ。
「見学者は多いのですか」と尋ねると、
「雨の日は特に多いです」
洞穴の中で神様を祀ってある場所が見えるところまで同行し、「祀
ってある場所には入らないようにしてください」と注意事項を言って
戻っていった。
全長280mの洞穴を10分ほど見学して受付へ戻った。受付横の待合室
では祈祷待ちの家族が3組、拝殿でも3組の家族が祈祷中だった。
みこさんに「沖縄ではあまり神社を見かけなかったですが、いくつ
ぐらいあるんですか」と尋ねると、「八社あります」と言って、指を
折りながら次から次へと神社名を挙げていく。若いみこさんなのにし
っかりしたものだと感心させられた。
ご祈祷に来られた方々には、こんな豪雨にしてしまって申し訳ない
と心の中で謝りながら神社をあとにした。
帰りは下り坂にもかかわらず、路面に水がかなりたまっている。ペ
ダルをこぐと前輪の水しぶきがもろに足にかかってしまう。そこで両
足を後ろの荷台部分に乗せて下る。ウルトラマンみたいな格好で何だ
か楽しい。
下り終えたところの交差点はもっとすごいことになっていた。車の
タイヤの3分の1ぐらいは水深がありそうだ。車がはねる水しぶきは豪
快だ。最終日に沖縄らしい雨に出会えてラッキーだった。
ホテルに戻り預けた荷物を受け取りにフロントへ行くと、フロント
の女性は
「わぁー、びっちょりですね」とかわいそうな表情をしてくれた。
「自転車を分解した後、着替えたいので風呂場の脱衣所をお借りして
もいいですか?」
「はい。これから鍵を開けさせますので使ってください。」
と言った後、すぐにどこかへ電話をし「お客様がお使いになるので
鍵を開けてください。それとタオルを置いておいてください。」と言
ってくれる。
使わせてもらえるだけでもサービスのよいホテルだなと思ったが、
タオルの用意までしてくれるなんて感激だ。それも若い女性がすぐに
そういう指示をだせるとは、教育がしっかりしていると感心した。
自転車の分解を終えて風呂場に行くと、脱衣所にはバスタオルとタ
オルが置いてあった。シャワーもどうぞということなのか、と都合の
よい解釈をして扉を開けると、なんとお湯まで張ってある。さすがに
湯船に浸かるのは気が引けたので、シャワーだけをお借りした。
次は自転車を自宅へ送る手配だ。ヤマト運輸の「サイクリングヤマ
ト便」で送るのだが、取り扱ったことのない営業所が多いので説明す
るのが大変なのだ。
しかしフロントの女性に「昨日言っておいた自転車を送る件ですが
」と言いかけると、なんとフロントの女性は「ヤマト運輸さんに確認
しました。サイクリングヤマト便で送れるそうです。サイクリングタ
ッグはお持ちですか?」と言ってくれるではないか。10年以上自転車
旅行をしているがこんな経験は初めてだった。
こんなにサービス満点のホテルなのに、不人気なのがどうにも納得
いかない。インターネットの予約サイトでは空きが目立つし、実際昨
日は7割以上空室のようだった。従業員が報われなくてかわいそうな
気がした。
ホテルを出るときには雨が上がり、「一番強く降ったときに行かれ
たようですね」とフロントの女性は言いながら見送ってくれた。
おわり
11月18日(土) 宜野湾
本日の走行距離 11Km
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