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体力勝負の一人旅 No.079【めざせ本州最東端編】

発行日: 2005/8/5

【13日目・2005年8月4日】

 本州最東端を目指す日だ。本州最東端は重茂(おもえ)半島の先端
にある。国道45号線は重茂半島の付け根を南北に結んでおり、南側が
陸中山田、北側が宮古。
 最東端へは県道を進むことになるが、私の地図には「日本の秘境」
と書かれているし、昨日の観光案内所のおばさんからもかなりアップ
ダウンがあると聞かされていた。地図に距離表示がないし、かなり手
ごわいだろうと覚悟を決めた。

 9時17分に宿を出発し、水分1.5リットルと食料を買い込み県道へ突
入する。
 最初は田舎にありがちな小さな漁港を通る平坦な道。漁港を過ぎる
と登りが始まる。斜度表示はないが10%以上はあるだろう。ただ四国お
遍路の山々に比べれば、2つ重めのギアで走れている。
 助かるのはアップダウンの連続ではなく峠越えであること。標高差
140mぐらい登ると下りになり部落が現れる。その繰り返し。
 もう一つ助かるのは開拓が進んでいない道。中央線がない細い道で
両側が木々に囲まれている。おかげで木陰の下を走れてそれほど暑さ
を感じない。おてんとう様も最東端到達にふさわしくよく晴れた日に
してくれた。これで木陰がなかったら1.5リットルの水分はあっという
間にカラッカラになっただろう。

 直線がほとんどないカーブだらけの下りでも最高速度50Km/hオーバ
ーを記録。いかに斜度がきついかがわかる。
 峠を2つか3つ越えたところで自動販売機発見。残り半分になった水
分を補充しよう。
 売店の前に設置された自動販売機で飲み物を買い、売店のおばちゃ
んに「店先で休ませてもらいます」と声をかけると、「こっちで休ん
でいきなさいよ」と外に面した部屋の大窓を開けて、部屋を提供して
くれた。私はお言葉に甘えて一休み。
 パンを食べながらおばちゃんと世間話をしたり、ここから先の情報
を聞いたりした。そこへ1歳の孫を乳母車に乗せたおばあちゃんがやっ
てくる。見知らぬ人たちとのちょっとした会話、ここだけ時間がゆっ
くり流れているようだ。コンビニでは味わえない、何か失ったものを
思い出させてくれるような時間だった。

 炎天下に置いておいた自転車備え付けの温度計は43度。休憩前が32
度だったから木陰さまさまだ。
 20分の休憩後、もう一つ山を登ると姉吉キャンプ場へ通ずる道との
分岐点。この道を海に向かって2Kmほど一気に下る。ここも50Km/hオー
バー。自転車は姉吉キャンプ場のちょっと先までしかいけない。あと
は自然歩道を4Km歩くと本州最東端だ。入り口に灯台の案内板はあるが
かなりマイナーな地の雰囲気を漂わせている。
 自然歩道からはほとんど海が見えず景色は楽しめない。1時間ほど歩
くと灯台が見えてきて海にでる。本州最東端の碑はそこからさらに右
手の岩場を数分あるいたところにある。12時30分、本州最東端に到達。
他に観光客はなく、いるのは釣り人のみ。本州最西端と似ている。
 灯台横の東屋で休憩していると、自転車旅行者が1人やってきた。こ
こで出会う観光客はやはりこの手の人だった。彼は東京出身で日本一
周中。旅に出て4ヶ月が経過。単なる一周ではなくジグザグにあちこち
行っているようだ。最近は暑くて走れないが、北海道では1日200Km走
ったというからかなりのつわものだ。行った先々の話をしているうち
に20代前半の彼とは年の差を感じてしまった。
 そして自転車旅行を始めて十余年の私は長いこと旅してきたなとし
みじみ思った。今日で本州東西南北の端を制覇した。私の体力レベル
からすれば、満足いく自転車旅行人生だ。

 宮古までは半島の残り半分を北上しなければいけない。この道も南
側同様に峠越え。しかし目標を達成した今は、気持ちに余裕があると
いうか、惰性で山を越えられる。下りは50Km/hオーバーで飛ばしてい
く。が、突然対向車。慌ててブレーキ、後輪が滑る。事無きを得たが
ヒヤッとした。いつのまにか、50Km/hオーバーを目指すスピード狂に
なっていた。

 宮古市街地まで来たが、せっかくなので浄土が浜まで足を延ばすこ
とにした。とがった白い岩々と白い浜。これぞ景勝地と言わんばかり
の風景に見入った。自転車旅行を始めた当初は観光地を巡っていたの
に、いつごろからだろうか足早に先を目指すようになってしまった。

 宮古で泊まって明日帰るつもりだったが、民宿のおばちゃんが教え
てくれた品川行きの夜行バスに間に合いそうだ。バスの時間と連絡先
をメモした紙を出掛けにおばちゃんは手渡してくれたのだ。
 バスの予約が取れたので近くの銭湯で汗を流し、自転車旅行を終了
する。湯船に浸かりながら銭湯の料金350円より、伊東温泉のほうが安
いのはなんなんだろうと思ってしまった。

 夜行バスの中で、今回の旅だけでなく、今までの自転車旅行を回想
した。思い浮かぶのは厳しかった峠や雨の走行、そして人との出会い。
特に今回はいつも以上に出会いがあった。
 出会いなくして旅は語れないな。

8月4日(木) 宮古
本日の走行距離 59.2Km+徒歩9Km

おわり

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