自転車旅行や歩き旅を旅先から紹介します。
東海道五十三次、伊豆一周ウォーキング、沖縄一周自転車旅行を終え、ゴールデンウィークは2巡目の四国お遍路です。
- 最新号:2008-08-06
- 発行周期:不定期
- 読んでる人:71人
- 創刊日:2003-12-07
- Score!:100点
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伊豆一周歩き旅 No.006
発行日: 2004/1/4【6日目・2003年12月30日】
昨晩はぴゅうぴゅう音が鳴るほどの風で寝付けなかったが、朝を迎えると風
は治まっていた。チェックアウトの際、バスの通過時間まで余裕があったので
お上さんとおしゃべりする。年のころは40代後半とお見受けするお上さんだが、
最近ウォーキングに行ったそうで23キロを2時間30分で歩いたと言う。
「1日でどのくらい歩くのですか?」
と聞かれたので、
「歩いても30キロぐらいですよ。それだけの時間で23キロも歩くなんてすごい
ですね。」
と答える。私はカメラを首からぶら下げていたので、
「写真を撮りながらでしょ、そのときは一緒に行った人に付いていくのが必死
で、景色など見れなかったわ。」
宿からバス停に向かう途中、そんなお上さんの言葉に感化され、「よーし、
今日は最終日だし、足は痛くなるだろうがペース上げて歩くぞ。」と意気込ん
だ。しかし、後日冷静に計算したら2時間30分で23キロも歩けるはずはなかっ
た。
バス停近くの商店でパンと水を購入。今日のコースは食料調達できそうなと
こではない。過去に自転車旅行で苦しい思いをした場所だけに、これで一安心。
9時40分のバスに乗り、15分後石廊崎に到着。ジャングルパークの大駐車場
に止まっている一般車はたったの10台前後。有料だったはずの大駐車場入口に
は係員がいなく『ジャングルパークは閉園しました』の看板。まさかと思った
のでバスの運転手に、
「ジャングルパークは夏場だけ営業しているのですか?」
と尋ねると、
「いや、もう閉園しました。」
石廊崎の地盤沈下もここまで来てしまったか。子供のころ、親に連れられ何度
も来たとこだけに寂しい気持ちになった。バス停付近の郵便ポストが繁栄時代
の名残のようだった。
西伊豆は鉄道がないので頼りはバスだけ。宿のお上さんから「バスの本数が
少ないから必ずチェックしてから歩き出さないとだめよ」と忠告されている。
早速松崎行きの時間を確認し、あせった。2時台が最終でその前が1時10分だっ
た。
最低でも20数キロ先にある野猿で有名な波勝崎まで行く予定だが厳しくなっ
た。波勝崎はバス通りから海側に数キロ入ったところにある。波勝崎に行って
戻ってくる間に最終のバスが行ってしまえば、終わりだ。タクシーを呼べば来
るよとお上さんは言っていたけど、PHSの圏内である可能性は低い。波勝崎に
もバス停はあるが、そこの最終バスを期待するのは危険だ。考えている時間は
ない、とにかく歩き出そう。灯台には寄らず10時に大駐車場をあとにした。
駐車場そばの閉鎖されたガソリンスタンドを過ぎると、山奥のような斜度の
きついアップダウンの道。20分ほど歩くと右側に遊歩道入口と案内図。約4.5
キロの遊歩道で、距離は車道とそれほど変わりない。ただ、足場が悪く早歩き
できないと困るので、車道を選択した。
車道はいきなり急な下り坂。足の裏に痛みを感じ足を止めた。右足の魚の目
が昨日から内出血している。その部分が痛む。この先トンネルが2つ控えてい
ることもあり、遊歩道にしようかなと気持ちが揺らぐ。10歩ほど戻り、遊歩道
を覗き込むと人が出てきた。この時期でも歩く人がいるコースならば安心と思
い、遊歩道に切り換えた。
さっき見えた人に近づくと、猟銃を持っていた。いのしし狩りだろうか、ち
ょっといやな予感がする。
木や背の高い草に囲まれた遊歩道に入ると登りが続く。10分ほどで視界が開
け、休憩所。昨日までの透き通るような青空ではないが、晴れていて暖かい。
下りになってからが大変だった。急斜面が続き、滑りやすい。杖がなければ、
半身になり片手を付いて下りるようなところだ。遊歩道と言うよりハイキング
コースとか登山道と言ったほうが正しい。前にはカメラをぶら下げ、リュック
にはパソコン、こんな状態で来るところではなかった。魚の目の痛みがさらに
増す。
休憩所から約10分、いったん車道に合流するが遊歩道はまだ続く。もちろん
車道を選択した。
11時ちょっと前、『妻良(めら)海岸 9キロ、松崎 30キロ』の標識が現れ
る。松崎まで行けばバスの本数は圧倒的に増え、最終もかなり遅くまであるだ
ろう。すっごくがんばって松崎まで行ってしまおうかとちょっとだけ思う。
しばらく行くと斜度9%の標識が現れた。今日はずっとこのぐらいの坂道を
歩いている。それにしても久しぶりの斜度表示だ。少なくとも下田に入ってか
らは初めてだろう。
下田と松崎を繋ぐ国道に合流した。今日初めて民家が並ぶ道を通る。そして
初めての平坦地だ。しかし500メートルも歩かずに再び登り坂。
いくつものアップダウンを繰り返し、坂を下っていると右に海が見えてきて
びっくり。相当入り組んだ地形のようだ。少し下ると説明板。『眼下の湾は妻
良湾、対岸は小浦。帆船時代は東西航路の重要な風待港として栄えましたが、
今は漁業と民宿を主体とする人情こまやかな集落です。』と書かれている。か
なり昔にこの町を不況が襲ったことだろう。
つま先が痛くなるほどの下り坂の途中に遊歩道の入口とその案内。そこには
『ハンターの皆様へ』と題し、遊歩道付近での注意を促していた。遊歩道には
行かないほうがいいようだ。民家の軒先にはいのししがぶら下がっている。こ
の辺の民宿に泊まればしし鍋をいただけるのかもしれない。
12時45分、妻良港に到着。観光案内マップが設置されているすぐ横に観光案
内所。弓ヶ浜以降の観光情報を持っていないので収集したかったが閉鎖されて
いる。再び観光案内マップの前に立っていると、缶ビール片手に酒臭いおじさ
んが話しかけてくる。宿を探していると勘違いしたのか、泊まれそうな民宿は
こことここだと教えてくれる。
「今日は泊まらないんですよ。ところでここは温泉はないのですか。」
と尋ねる。
「40年前にボーリングしたんだけどね、1100メートルで岩盤に当たっちゃって。
俺が小学校5年のときだよ。」
「だめだったんですか」
「湧泉って言ったっけ、沸かして温泉にするやつね、あれなら出たんだけど。
許可を得るのは取れるんだけどね。」
「それでもやっておけばよかったですね」
「持ち主がやんないわけ。妻良に提供しなかったんだ。それで妻良温泉っての
が成り立たなかったんだ。」
「今、結構各地では沸かしてやってますよね。そのときやっておけばね。」
「もう、1回だめだったから誰もやんないでしょ。場所がちょっと違えば出る
んだけどね。」
「場所は山のほうだったんですか」
「トンネルのすぐ下の田んぼのところ」
と目の前のトンネルを指差した。
「残念でしたね」
と言って別れたが、今の話が本当であれば妻良にとってすごくもったいない話
である。掘削能力が向上したおかげで温泉地でないところが突然温泉地になっ
たり、沸かし温泉なのに集客力がある温泉地など、いくつも例はある。また再
チャレンジしてもらいたいものだ。
ボーリングの跡地と思われる田んぼはススキが植わって荒れ放題だった。
国道をそれて小浦港に立ち寄った。今の集落の規模にしては立派過ぎる神社
があり、昔繁栄した面影を感じた。もう1時15分なのでバスの時間を気にしな
がら山のほうを通っている国道まで一気に急坂を登っていく。
国道に合流しても急坂は続く。そこをバスが通過していく。最終の1つ前の
バスだ、時間は1時45分。バス停を見つけては時間をチェックしてきたが、最
終バスがこの辺りを通るのは2時30分ごろ。波勝崎まで4キロの表示はあったが、
それが国道沿いの波勝崎入口を指すのか、野猿のいる地点を指すのか分からな
い。波勝崎はあきらめて、次のバスが来たら手を上げて乗り込もう。宿のお上
さんが「バス停でなくても止まってくれるよ」と言った言葉を信じて。
地図には峠など1つもないが、いくつもの峠を越えてきた感覚だ。とても暑
く、残った水もあとわずか。夏でもないのに脱水症状になりそうだ。少しぼう
っとして、まっすぐ歩けていない気がする。残った食料は白田の宿でもらった
みかんのみ。最終のバスが伊浜経由堂ヶ島行きなのが気になる。伊浜は数キロ
先だが国道上ではない。最悪のときはバスの本数が増えそうな雲見温泉まで行
くつもりでみかんを温存する。雲見までは15キロないだろう。
2時ごろ、伊浜海岸入口まで来る。バス停があり、最終は2時38分。このまま
国道を進むべきか、伊浜海岸へ下りるべきか迷うが、この先国道沿いに売店を
併設した夕日ヶ丘休憩所があるのでそちらを選んだ。
やがて夕日ヶ丘休憩所。自動販売機で水分補給し、バスの時間を確認する。
最終は3時31分、あと1時間弱ある。15分ほど休憩して、1キロ先の波勝崎入口
まで行くことにした。そこで終わりにしよう。
安心したためか、休憩して頭が働き始めたためか、魚の目が痛み出し、筋肉
痛を感じ、一歩一歩がつらくなる。それでもあとわずかだ。みかんを食べつく
し、3時ごろ波勝崎入口に着いた。バス停もあった。
バスの時間まであと30分。よせばいいのにまた歩き始めた。2、3分歩いて地
図を見る。30分以内にバス停が現れそうにない。雲見までは7キロあるし、こ
こは無理せずさっきのバス停に戻ろう。
万歩計は約32000歩で22キロぐらい。早歩きしたつもりだったが時速4.4キロ。
きびしい道だった。
3時32分のバスに乗り、松崎で下田行きのバスに乗り換えて、下田の手前の
蓮台寺駅で電車に乗り換え岐路に着く。小田原へ帰るのに一番都合の悪い地点
で旅を終えたようだ。もちろん続きをするにも一番都合の悪い場所になってし
まった。
12月30日(火) 波勝崎入口
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