外資系通信社で日米の政治、経済、マーケット、金融のニュース速報の最前線で活躍してきた筆者がアメリカの株・債券・為替市場やホワイトハウスや米議会、米連邦準備理事会の要人コメント、経済指標を分析します。
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3分で読めるアメリカ経済情勢ニュース 第273号です
発行日: 2008/3/16■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■■
■■ ◆3分で読めるアメリカ経済情勢ニュース◆
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■■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 第273号 ━■■
米FRB、ベア・スターンズに緊急金融支援=ドル、全面安に
−18日のFOMC、1%の大幅利下げ観測強まる−
【2008年3月16日(日)】 − 先週末(14日)、米住宅市場の悪化によるサブプライム・
ローン(信用度の低い顧客への融資)の焦げ付き拡大で、主にサブプライム債権を担保
にしたCDO(多数債権プール型資産担保証券)で巨額の運用損失を出し、昨年8月から始
まった金融市場の混乱の引き金となった米投資銀行5位のベア・スターンズに対する緊急
金融支援策が突然、FRB(米連邦準備制度理事会)のニューヨーク連銀から発表された。
これを受けて、NY株式市場では、クレジット市場不安が再燃し、ダウ平均株価指数は
前日比194.65ドル(1.6%)安の1万1951.09ドルに急落する一方、NY債券市場では安全資
産の国債が買われ、債券価格と反対方向に動く利回りが急低下。特に、2年国債の利回り
は一時、1.37%と、2003年7月以来4年8カ月ぶりの低水準となった。また、NY外為市場で
も、ドルが金融不安からFRBによる大幅利下げは避けられないとして、全面安となった。
円もリスク投資回避の動きが強まり、円キャリートレード(低金利の円で資金調達し、
高金利の他国通貨に投資する手法)の巻き戻し(円買い)の中で、ドルに対し急騰。一
時、13年ぶり安値98.89円を付け、終値も99.23円と再び、100円割れとなっている。
金利先物市場、来週FOMCで1%利下げ織り込み始める
金利先物市場では来週18日のFOMC(公開市場委員会)で1%ポイントの利下げを織り込
み始めた。14日のCBT(シカゴ商品取引所)で、FF金利先物の4月物は18日のFOMCで、政
策金利であるFF(フェデラル・ファンド)金利の誘導目標が、現行の3.0%から2.0%へ
1%ポイント引き下げられる確率を前日の0%から52%織り込んだ。
市場関係者の中には、ベア・スターンズは電気代を払うお金もなかったのかと揶揄し
て驚きを示したが、大手投資銀行で、これほど大きな衝撃を与えたことはかつてなかっ
たというほど大きなショックが走った。市場では、早くも、ベア・スターンズの次はど
こだと“犯人捜し”に躍起になっている。特に、市場関係者が驚いたのは、ベア・スタ
ーンズのアラン・シュワルツCEO(最高経営責任者)がここ1週間は、資金繰り悪化のう
わさに対して、作り話だと否定していたのが、14日になって、資金不足になったと180
度、手のひらを返す発言を行ったことだ。これには、投資家は今後、同社に対する金融
支援策についても信じることができなくなるだろうと懸念を示すほどだ。
ベア・スターンズCEO、24時間で急激に財務状況が悪化
ただ、同CEOは声明文を出し、「当社は(流動性不足の)噂と対決し、これを払拭しよ
うとしたが、それにもかかわらず、市場でうわさが広まる中で、この24時間の間に、急
激に財務状況が悪化した。当社は、今回の重要な金融支援対策を講じることにより、市
場での当社の信頼を回復し、財務状況を強化、正常な業務を継続する考えだ」と述べて
いる。
エコノミストや元FRB関係者は、ベア・スターンズが返済に失敗すれば、同社が保有す
る担保資産が投げ売りされるばかりか、同社の取引先の他の金融機関が連鎖倒産した
り、証券の狼狽売りが起こり市場が閉鎖される事態を招くほか、他の健全な金融機関ま
でもレポ金融がかなり厳しくなり、円滑な資金調達ができなくなるとFRBは恐れたと見て
いる。
1997年のアジア通貨危機とロシアの通貨・金融危機をきっかけに、翌1998年に経営破
綻した1000億ドル(約10兆円)の運用資産規模を誇ったヘッジファンドLTCM(ロングタ
ーム・キャピタル・マネジメント)の場合、融資先からの資金引き揚げ要求で、同社は
数十億ドル規模の資産売却に向かい、その結果、世界の金融市場が大混乱し、世界の金
融市場は資金流動性不足の危機に直面している。ベア・スターンズの場合は、「Too
Big To Fail」(影響が大きすぎて破綻できない状況)で、特定の金融機関を救済するこ
とに対するモラルハザードを越えた金融リスクがあったといえる。
FRB、JPモルガン・チェース経由で緊急融資
ベア・スターンズに対する金融支援策は、ニューヨーク連銀が、ディスカウント・ウ
ィンドウ(FRBが金融機関に直接資金を供給する制度)を通じて、最大で28日間、国債を
担保に貸し出しを行うもので、ノンリコース・ローン(ローン返済ができなくなったと
きに、担保になっている資産以外に債権の取り立てが及ばない非遡及型融資)をまず、
米銀行3位のJPモルガン・チェースに対して実施する。そのあと、JPモルガンがベア・ス
ターンズに又貸しするという手順で実施される。貸出額は未定だが、差し出される担保
価値に応じて決められるという。
FRBが金融セクターに資金を供給する方法には2通りある。一つは20社あるプライム・
ディーラー(ニューヨーク連銀との直接取引を認められたディーラー)に、国債を担保
として、期日28日間の資金を貸し出すが、これは特定の金融機関にだけ多額の資金を貸
し出せない難点がある。もう一つは、ディスカウント・ウィンドウの方法で、これだと
無制限に貸し出しができるが、原則、銀行だけが対象となっている。
このため、FRBは、JPモルガン・チェース銀行に貸し出しの仲介役を頼んだ経緯があ
る。JPモルガンは、ベア・スターンズと付き合いが長く、お互いに周知の間柄であるこ
と、また、JPモルガンはすでに、ディスカウント・ウィンドウを利用していることが選
ばれた理由といわれる。ただ、今後、ベア・スターンズが経営再建に失敗し、今回の貸
し出しに対する担保資産の価値が不足する事態になれば、JPモルガンではなく、FRBが損
失を被ることになり、その意味では重要な決定だったことが分かる。
いずれにしても、こうした手法が取られるのは、1929年の大恐慌以来といわれるだけ
に、ベア・スターンズ救済の深刻さが浮き彫りになった格好だ。(了)
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