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エンロン元会長兼CEO、金融詐欺とインサイダー取引など11件の罪状で起訴
【2004年7月12日(月)】−アメリカの歴史上、最悪といわれた不正経理事件を引き
起こした世界最大のエネルギー卸し事業会社、エンロン(本社・テキサス州ヒュー
ストン)の創業者、ケネス・レイ元CEO(最高経営責任者)兼会長(62)が8日、米
司法省とFBI(米連邦捜査局)、IRS(米内国税歳入局)による約3年間にわたる捜査
の結果、起訴された。同事件はSEC(米証券取引委員会)を巻き込んだ大規模な事件
としても全米の注目を集めた。
レイ氏といえば、現ブッシュ大統領とその実父で元大統領のジョージ・H・W・ブ
ッシュ氏の2代にわたり、共和党支持者として、大統領選挙では多額の選挙資金の集
金に重要な役割を演じてきた人物としても有名だ。
それだけに、今回のレイ氏の起訴は、ブッシュ大統領にとって、11月大統領選を
間近に控えているだけに、大きなマイナスイメージになることは避けられない。こ
こぞとばかり、ブッシュ大統領の対立候補である民主党のジョン・ケリー大統領候
補(マサチューセッツ州選出の上院議員)の陣営では早速、捜査が3年もかかったの
は問題だとして、ブッシュ政権のエンロン事件に対する腰の重さ糾弾する声明を出
し、早くも火花を散らしている。
この日は、ホワイトハウスはエンロン元会長起訴の余波を食い止めようと、火消
しに躍起となった。マクレラン報道官は、レイ氏の起訴後に開かれ記者会見で「ブ
ッシュ大統領とレイ氏が会って話をしたのは、かなり昔の話だ。レイ氏は、以前は
(ブッシュの)支持者だった。レイ氏は共和党だけではなく、民主党にも政治献金
していた人物だ」と一定の距離を置いた。
米司法省は8日、レイ氏に対する11件の罪状概要を公表したが、それによると、罪
状は金融詐欺、証券詐欺、公文書偽造、インサイダー取引などで、全11件で有罪が
確定すると175年の懲役と570万ドル(6億3000万円)の罰金が科せられる。
エンロンの不正経理事件が発覚するのは、2000年12月に、当時、会長兼CEOだった
レイ氏が自分の後継者として、ジェフリー・スキリング社長兼COO(最高業務執行責
任者)を次期CEOに選出したころからだ。しかし、スキリング氏はエンロン破綻の引
き金となった2001年第3四半期(7-9月期)決算を発表する直前の同年8月にわずか就
任6ヵ月で突然辞任したため、会長職にとどまっていたレイ氏が再び会長兼CEOに復
帰することになったのである。
このとき、エンロンはすでに本社だけではなくその子会社の保有資産まで帳簿価
格が実際の価値より数十億ドル上回るよう意図的に帳簿操作し、儲かっていない事
業でも利益が出ているかのように利益水増し操作を行うなど広範な不正会計を行っ
ており、もう後戻りできないほどの巨額の水準にまで来てしまっていた。これもす
べて、民間格付け機関による同社の格付を(信用度)高め、自社の株価を引き上よ
うという狙いからだったが、そのほころびが出始めていた時期だった。
起訴状によると、「1999年から2001年にかけて、レイ、スキリング、リチャー
ド・コージー(エンロンの元最高会計責任者)や他の経営幹部は一般投資家やSECま
でを騙す計画に関与し、本当のエンロンの業績や財務状況を隠していた」とし、米
司法省のレイ司法次官補は同日の記者会見でも「アメリカの歴史上、最大の企業ぐ
るみの詐欺事件」とエンロン事件を断罪している。
また、起訴状は「株式市場のアナリストによる業績予想を裏切らないように、エ
ンロンは健全なペースで成長している、巨額な不良資産の特別償却や負債を抱えて
いない、投資価値のある会社であり、業績好調な多数の子会社を持ち、適切なキャ
ッシュフローを維持しているとし、さらに、実際には達成の見込みがない業績目標
を会見や報告書などを通じて、アナリストやSECに虚偽説明(証券詐欺容疑)を行
い、1998年当初の株価約30ドルから2001年1月には80ドル以上に意図的に株価操作し
た」と指摘している。
圧巻は、レイ氏が1998年から2001年にかけて、自社株の売却益3億ドル(330億
円)、手取り収益で2億1700万ドル(234億円)強を上げ、同期間だけで給与とボー
ナス合わせて1900万ドル(21億円)が会社から支払われていたことだ。さらに、
2001年8月21日から同年10月26日の期間中に自社株91万8104株を売却し、会社からの
ローン2602万5000ドル(29億円)を返済していた。
また、起訴状によると、同氏はエンロン本社と子会社の保有資産には最低70億ド
ル(7700億円)ものキャピタルロス(資本損失)があることを知っていたにもかか
わらず、2001年第3四半期決算発表20日前の9月26日にインターネットのチャットサ
イトを通じて、従業員に第3四半期の業績目標の数字を達成する見通しだと話し、こ
こ2ヵ月間に自社株を買い増しし、自社株に信頼を寄せているかのような印象を与え
たという。実際、同氏は自社株400万株を買っていたが、その一方で、非公開取引
で、2400万株を売り抜いていた。
こうしたエンロンの不透明な動きを察知して、SECは調査に入っていたが、会社側
もその事実を10月22日に正式に公表、同月24日には元CFO(最高財務責任者)のアン
ドリュー・ファストー氏が会社の利益水増しや負債の過小計上など不正経理に関与
していたという報道を受けて解任され、11月8日には過去5年間の財務諸表の修正を
報告し、ついに11月28日には同社の株価は1ドルとただ同然にまで下落してしまい、
12月2日に破産申請に至ったのである。
司法省もSECから協力を得て、2002年1月9日から刑事事件として、エンロン捜査に
乗り出し、レイ氏の起訴に向けて、同氏の周辺から捜査を固めていく方針を取っ
た。特に、今年1月にエンロン事件のカギを握るファストー氏(2002年10月に起訴)
と司法取引をしている。
司法取引では、ファストー氏は、パートナーシップ会社を設立などさまざまな方
法で、利益を水増しし、エンロンの負債が少ないように見せ、同時に数百万ドルを
着服していたとする罪状について有罪を認め、刑期を10年に短縮する見返りとし
て、レイ氏とスキリング氏の指示に従ったという証言を引き出し、レイ氏が不正経
理に関与していたとの証拠を固めたのである。
これに対し、レイ氏は8日、連邦大陪審に詰めかけていた記者団に「自分は何も不
正なことはしていない。起訴は不当だ」とし、「彼(ファストー)が何をしていた
か私は分からない。彼が何をしていたかについて何も聞かされていなかった」と述
べており、無罪を主張している。コージー氏とスキリング氏も2月に起訴されたが、
いずれも無罪を主張している。
また、SECは8日、レイ氏がインサイダー取引と証券詐欺によって得た不正な株式
売買益9000万ドル(99億円)以上の返還を求める民事訴訟を起こした。刑事裁判の
方は、来年前半にも初公判が開かれる予定だが、司法省はレイ氏の裁判をファスト
ー、スキリング、コージーとの共同裁判にする考えだ。レイ氏はファストー氏によ
る陰謀の犠牲者なのか、あるいは首謀者なのか、今後の裁判の展開が注目される。
(了)
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発 行 元 :「誰でも分かる!アメリカ経済情勢ファイル:ザ・裏読み」
発行責任者 :編集主筆 増谷栄一
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