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『あふりかくじらの自由時間』【101】
発行日時: 2007/7/14 ★.+・゜゜・。☆ ○o.+・゜゜・。○o.++++++++++++++
『あふりかくじらの自由時間』
【101】
http://africanwhale.net/
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暮れていくハボロネの街に明かりが灯り始め、実にひさしぶりに再会したひとの
運転する車の中からすべるように流れる風景を見つめ、戻ってきたことを
実感していました。
ボツワナに来るのは、実に9年ぶりになります。
9年前、大学生だったわたしは、作家ベッシー・ヘッドが48歳で亡くなるまでの
22年間を過ごした国で彼女の足跡をたどり、あわせて二ヶ月くらいをボツワナと
南アフリカで過ごしました。
いま、お隣の国ジンバブエにいるのに、ボツワナを訪れるのはそれ以来でした。
(厳密に言うと、ジンバブエとの国境近くのチョベ国立公園には行ったので
ここへきて二回目なんですが、それは例外です)
★ ★
いかがお過ごしでしょう。
日本には台風がきているようですので、心配です。
☆ ○o.+・゜○o..+・。☆
作家ベッシー・ヘッドは1937年南アフリカ生まれ。
白人の母とアフリカ人(と思われるけど真相は不明)の父との間に
いわゆる「カラード」として生まれ孤児院で育ち、アパルトヘイトの
厳しい時代をジャーナリストとして生き抜き、やがて独立前のボツワナに亡命する。
その後、作家として徐々に成功を収めていくが、48歳の若さで肝炎にかかり
そのまま亡くなってしまう。
(詳細は、http://africanwhale.net/bessiehead.htm)
わたしは彼女のことを「ライフワーク」として研究し、また同時に「ソウルメイト」
としておつきあいしてきた。ベッシーは、わたしにとって特別なのである。
今回のボツワナ訪問は、ボツワナ大学で開催された「ベッシー・ヘッド学会」に
出席するためであった。
今年は2007年。生きていれば、7月6日はベッシー・ヘッドの誕生日なのだ。
彼女の70歳を祝うため、人々は学会や多くの関連イベントを企画したのである。
★ ★
9年ぶりにボツワナで会うひとたちは、変わらず温かくわたしを迎えてくれた。
そして、そこへ集まった約30人の面子のすごさといったら!
ベッシーの伝記を書いたデンマークの女性。
博物館のアーカイブをつくるために奔走した女性。
ベッシーのお友だちや知り合いだった数々のひとたち。
彼らは、わたしが過去10年近くにわたってずっと本や資料の中でしか
見かけたことの無かったひとたちだ。でも、論文を書いたりするうちに
幾度と無く繰り返し見てきた名前の数々。
わたしの中では、長いあいだ「有名人」だったひとたちなのである。
彼らが一堂に会し、ベッシーの70歳を祝い、彼女について語り合うということは、
個人的には夢のようにすばらしい出来事であった。
感動したわたしは、ベッシーのお友だちであったカナダ人のトム・ホルツィンガーや
南ア出身のセシル・エイブラハムズに握手をもとめ、彼女の伝記を書いた有名な
デンマーク人のジリアン・ステッド・アイラーセンの新版(中身はわたしの
持っているぼろぼろの伝記とほぼ一緒)を買い、そこにサインまでしてもらう始末。
それでも、若手研究者も含めて、これだけのひとたちが自分とベッシーへの思いを
シェアできるなんて、心の底から感動した。
★ ★
集まったひとたちの中には、研究者、お友だち、ファン等さまざまなひとがいた。
そして、この日のために、アメリカやデンマークなどから遥々ここへやってきた。
亡くなってすでに20年以上。
ベッシー・ヘッドのすごさが、理解できるような気がする。
★ ★
学会での発表はそれぞれにすばらしく、彼女の作品や書簡(ベッシーは何千通という
手紙を書き残しており、それらが博物館に保管されている)についての解釈が
たくさん出てきて非常に興味深いものであった。
聴いているだけでも、皆の熱意が伝わってきてうれしかった。
いままでベッシー・ヘッド研究をここまでシェアできる人たちはいなかったし、
わたしはずっとひとりだった。
だから、ここまで研究している人たちと議論できる機会というのはほんとに貴重だ。
というより、わたしには初めての経験であった。世界のベッシー研究者と会うのは。
★ ★
ただ、いつも言いたいのは、わたし個人は「文学研究者」ではないということである。
学部のときも修士課程のときも論文のテーマに作家ベッシー・ヘッドをとりあげた
ことで、わたしはよく「文学研究者」と誤解される。
それには声を大にしてノーと言いたい。
文学を、わたしは愛していると思う。
活字中毒気味でもあるし、色んな本を読む。
でも、読書はあくまで個人的だ。そしてわたしは、文学の半分は読者が作っていくもの
だと思っている。
文学は、読まれて読者のなかで個人的解釈が構築されて初めてできあがる
ものだと思う。そしてその解釈は、必ずしも著者が意図したものではない。
そこに、批評会の面白さが生まれる。
それぞれの読者の意思や人生が入り、膨らんでいくからだ。それだけに、
文学の解釈というものはとても主観的だ。
これはわたし自身が小説を書いたりするから、とくにそう思う。
批評会をすると、まったくわたしの意図とは別の世界から別の解釈が生まれている。
それもまた良いのだ。
だから一方でわたしは、文学を研究対象にしようとはとうてい思えない。
わたしの中で、客観的には到底なりえないのである。
だからわたしが書いたふたつの論文は、決して「テキスト研究」をしていない。
★ ★
アパルトヘイトの苦しい時代、カナダに亡命していて、アイオワ大学のプログラムに
ベッシーを呼び寄せて発表などさせた友人セシル・エイブラハムズが、
当時の思い出を交えつつ話をした。
そしてひとこと、「これだけ色んなひとが彼女の作品でplay aroundしてくれて、
ベッシーも面白がっているよ」と言った。
そう。
彼は真面目な学術研究を"play around"と言ったのである。ユーモアたっぷりに。
これにはわたしも同感だ。なんとなく、それぞれが全く違ったアプローチの仕方で
まったく違ったベッシーをみているようでもある。
★ ★
わたしとベッシー・ヘッドは、「特別な関係」だと思う。
ベッシーが大好きとか、そういう問題ではない。
彼女は研究対象でも、「お友だち」というのでもない。
もちろんわたしは、孤独に生れ落ちたベッシーとは違って幸せな家庭に生まれ
恵まれて育ってきた。
ただ、帰属すべき場所を捜し求める人生とか、激しい気性とか文章とか、
そのところどころが恐ろしく似通っているところがある。
そして、他人を容赦なく攻撃する気質。
さらには、精神的におかしくなっていく過程の、そのことばまで似ているのである。
もちろん、わたしは彼女のように精神病院に入院してもいないし、
ナイフを持って誰かを追いかけたりもしていない。少なくとも今はまだ。
(ちなみに、ナイフ持ったベッシーに追いかけられたという女性もいた)
それでも、周囲の人間関係がどんどん壊れ自分が磨り減っていくのを感じると、
やがて頭がおかしくなるんじゃないかと恐ろしくなることがよくある。
そしてわたしは、彼女のようにものを書くことで精神状態をぎりぎりのところで
保っている。ただひたすら、ことばが降ってくるこの感覚なのだ。
やがて、どこか「キレて」しまうんじゃないかという恐怖がいつも
わたしのなかにある。それでも、ベッシーの文章にとりつかれてしまう。
頭の中がどんどんおかしくなるのを感じることがある。
精神的に不安定な状況にあって、彼女の苦しかった時代のことがまるで
自分が経験してきたように脳裏に繰り返し浮かぶのである。
これはたぶん、他人に説明してもあまりわからないのかもしれないけど。
だからわたしは、彼らの誰にもとくにこのことは言わなかった。
これはあくまでも、非常に個人的なことなのだ。
そして、これまでの10年、これから一生をかけてつきあっていく類のものなのだ。
★ ★
さらには、ベッシーの小説『マル』と短編を組み合わせて脚本を描いた
演劇を観賞した。なかなか良くできた脚本で、新しい世界を描いていた。
でも、ベッシーが言いたかったことはちゃんと入っていたように思う。
★ ★
学会に出席したことは、わたしの人生の中でとても重要なイベントであった。
いままで大切にしてきたもの、これからも大切にしていくもの。
そして、誰かとシェアできた幸福の温かさみたいなもの。
それらすべてを、ボツワナの大地で得ることができた。
作家ベッシー・ヘッドは、やっぱりすごいひとであり、身近なひとであり、
わたしが恐れ愛する「ソウルメイト」なのである。
朝夕冷え込むボツワナの空を見上げて、そんなことを考えた。
☆ ○o.+・゜○o..+・。☆
政治経済が崩壊寸前のジンバブエにいるからでしょうが、平和で安定していて
人口の少ないボツワナでは、すべてがすばらしくきれいに見えました。
穴ひとつ無い道路。(ジンバブエでは、一部以外は穴だらけ)
きらびやかなショッピングセンターに、フラットテレビの並ぶ電気屋さん。
そして、治安は悪くない。
かつて南アに次ぐ経済力を誇っていたジンバブエは現在、政府による価格統制が
強制的に行われています。インフレ率が公式発表では、年率4,500%ほどですが、
実際はこれをはるかに上回るでしょう。
そして、政府は、価格を安定させようと食料品を含むあらゆる日用品等の
価格を低く定め、これをすべての卸・小売に適用させようと必死なのです。
もちろん、原価を大幅に下回る売値など誰がつけるでしょう。
そして、多くの小売店店主などが逮捕されています。
理由は「値段をつりあげた」ため。コンビ(ミニバス)代なども同様です。
7月13日現在、街中のスーパーなどからものが消えています。
パン、牛乳、メイズ、卵、料理油、肉、菓子類なんかも全く棚にありません。
もちろんです。統制価格では、商売になどなりませんから。
事態は、かなり深刻になってきているようです。
これはまた、ブログ(http://blog.livedoor.jp/africanwhale)にでも書きます。
★ ★
長くなりました。
停電がますますひどくなり、毎晩のようにまともなご飯が食べられません。
読んでくださりありがとう。
あふりかくじら
追伸:
作家ベッシー・ヘッドの小説『マル』(原作)は、こちら。
http://www.amazon.co.jp/gp/product/0435909630?ie=UTF8&tag=africanwhale0-22
ジリアン・ステッド・アイラーセンによる伝記(英語)はこちら。
http://www.amazon.co.jp/dp/1868144461/ref=nosim/?tag=africanwhale0-22
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『あふりかくじらの自由時間』【101】2007年7月14日発行
【発行者】 あふりかくじら
【メール】 africanwhale@mail.goo.ne.jp
【URL】 http://africanwhale.net/
【ブログ】 http://blog.livedoor.jp/africanwhale
【エンピツ日記】 http://www.enpitu.ne.jp/usr1/10741/
★バックナンバー★ http://www.melma.com/backnumber_103336/
【あふりかくじら★カフェ】メールマガジン(週3回程度、軽く短め)
http://africanwhale.net/cafe.htm
ジンバブエ共和国より発行。日々の風景、思ったことなどを
短く短くつづった15秒だけのお昼休みマガジン。ふとしたことばが
誰かに届けばよいなと思います。
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*ふふん。でも、今日は電気があるのだ。やた。
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