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『あふりかくじらの自由時間』【97】
発行日時: 2007/1/23
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『あふりかくじらの自由時間』
【97】
http://africanwhale.net/
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ティーンエージャーだったころ、あまり星野道夫というひとのことを知らなくて
なんとなく好きでもなかったのは、あのアラスカの表現しつくせない
圧倒的な力と存在感みたいなものを「表現」しようとする行為に、
無意識的に微かな反発を感じていたからなのかもしれない。
でも、今はなんとなくわかってしまった気がする。
三十歳になってやっと。
ある瞬間、「そういうこと」がふっとわかってしまって、身体の中に
すとんと落ちた。
★ ★
いかがお過ごしでしょうか。
いま、ハラレでは滝のように激しい雨が屋根を打ち付けています。
暗い夜です。雷が、闇夜を切り裂いて暴れている時間です。
☆ ○o.+・゜○o..+・。☆
ぼんやりNHKの国際放送を観ていたら、その番組はわたしの心を
あまりにも突然、強くひきつけた。
それは写真家・星野道夫の番組で、彼の文章を用いながらとてもうつくしく
まとめた完成度の高い番組であった。
アラスカの写真を撮り続けたその写真家のことは、あまり好きではなかった
というのが正直なところである。
きっと、わたしの心は長い間「そういうこと」に頑なになっていて、
それらを受け入れる準備ができていなかっただけなのであろう。
わたしがアラスカに暮らしていたのは1988年から1991年のことで、それからもう
ずいぶんな月日が経ってしまっている。
★ ★
初めて外国へ出て、日本とは違う文化や国の存在、アイデンティティの問題を
考えるようになったのは、アラスカに暮らしていた中学生時代であった。
そして、あの圧倒的な大地や空、動物、森、ひとびと、それからオーロラの存在。
わたしが出会った多くのものは、わたしの心の深いところに今でも鮮やかに
横たわり、そしてわたしを「つなげる」原動力になっている。
11歳で始めて海外に出て、新しい環境で暮らし、国のこと文化のこと、
英語という言語のあり方のことだけでなく、地球のことや大地のことを考えた
アラスカ州アンカレジという小さな町での生活。
11歳は、幼すぎず、しかし同時にまったく手付かずに未成熟な時期でもあり、
その年齢をそうやって過ごしたことは、わたしにとって成長過程の重要な
ステップとなった。
だから、自分の中で「始まり」の時期であった「アラスカ」を、この写真家は
ほんとうにわかってくれているのか、などと疑ってすらいたのである。
そういうある意味神聖なる部分を、誰かに汚されたりすることを
恐れていたのだともいえる。
★ ★
しかし。
星野の写真は、うつくしい。
彼の生き方の色が、やさしく力強くにじみ出ていて、ときに胸がいっぱいに
なりさえするようなパワーを持つ。
写真はときに、恐ろしいパワーを持つ。
初めて(テレビ番組だけれども)まともに向き合って、わたしはそのパワーを
胸の中に直に感じて、瞬間、地球上にひとりになって、身体中の全神経を集め、
そのすとんと胸に落ちる「そういうこと」を確認していた。
わたしは、知っていたのだ。
そして星野は、知っていたのだ。
そう思った。
その瞬間、わたしは初めて彼の写真に感動し、文章にまっすぐ共感した。
そうなのだ、ほんとうにそうなのだ、と。
★ ★
年末から正月にかけ、ヴィクトリア・フォールズを訪れた。
初めて訪れたヴィクトリア・フォールズは、圧倒的であった。
世界三大瀑布のひとつであり、ジンバブエが誇る最高の場所。
その水の量、気が遠くなるほど昔から繰り返されてきたその大地の営み。
この圧倒的なパワーを感じるだけで、わたしはこの国に暮らすことができ、
人生のなかで何か大切なものをひとつ積み重ねたような気さえしていた。
それくらい、滝は圧倒的であった。
こちらから、あちらまで。何キロも続く信じがたい水量、胸に響く重たい音、
そこにかかる虹と、水煙。そして水しぶき。
わたしの心のなかで何年も積み重ねてきたアフリカの大地は、いまここで
悠久の昔からその姿を変化させ続けてきたひとつの巨大な滝という生き物と、
まるでファインダーのフォーカスがあっていくようにひとつになった。
そうしたら、アラスカのことや、いつかザトウクジラを見た小笠原のことが
素直に「つながるもの」として身体に感じられた。
これが、わたしのヴィクトリア・フォールズであった。
そしてわたしも、写真を撮った。
★ ★
少女時代に見た、オーロラのパワー。
わたしは、宇宙に浮かぶあの緑色のカーテンのような光に、畏怖すら感じた。
氷河の青白い氷が、悠久の年月を越えて、いま崩れ落ちる瞬間の鼓動。
マイナス40度の空から輝き舞い落ちるダイヤモンド・ダスト。
森の中からやってくる、立派な角をもったムースの生命力。
大学生になって訪れた小笠原の持つパワー。
ザトウクジラのブリーチに、個を超えた地球の生命を感じた。
いま、アフリカに惹かれて十年。
ジンバブエという国で、わたしは圧倒的な滝を見ている。
そして、恐れ多くも滝と対話などをしている。
すべてはどこかで、つながっているのである。
★ ★
アフリカの大地に沈む夕日はうつくしくて、わたしはことばを失う。
わたしがこの大地に惹かれてやってきてのにも、きっと理由がある。
いまやっと星野の写真に「気づいた」ことで、わたしはますますこの大地の
うつくしさを知るようになった。
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そして、野生動物もあんなに見たのはほとんど初めてだったと思います。
キリン、ゾウ、バッファロー、バブーン、クドゥ、インパラ、カバ、ワニ…。
念願の、ボツワナにあるチョベ国立公園にも行きました。
それは、人々と社会に関心があるだけでなく、「アフリカ」という大地に
惹かれている自分を知る瞬間でもありました。
この大地を感じるだけで、落ち着いたようなこの感覚なのです。
そして、夢中で撮った写真はウェブサイトへ。
http://africanwhale.net/victoriafalls.htm
アフリカといえば野生動物や大自然、といったようなステレオタイプに
無意識的に反発してきた自分ではありますが、しかしそれもまた大切な
アフリカの一面であるわけなのです。
何年暮らしても、わたしには時間が足りない。
そしてわたしは、この大地に暮らすひとびとも好きです。
自分も同じ、地球上に暮らすひとりの人間として。
そういうふうに思いました。
読んでくださりありがとう。
あふりかくじら
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『あふりかくじらの自由時間』【97】2007年1月23日発行
【発行者】 あふりかくじら
【メール】 africanwhale@mail.goo.ne.jp
【URL】 http://africanwhale.net/
【ブログ】 http://blog.livedoor.jp/africanwhale
【エンピツ日記】 http://www.enpitu.ne.jp/usr1/10741/
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誰かに届けばよいなと思います。
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*とりとめもなく。
星野道夫の公式サイト、の一部。http://www.michio-hoshino.com/morito.html
最近、こればっかり見ています。
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