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『あふりかくじらの自由時間』【77】
発行日時: 2006/1/9 ★.+・゜゜・。☆ ○o.+・゜゜・。○o.++++++++++++++
『あふりかくじらの自由時間』
【77】
http://africanwhale.net/
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南ローデシアというのが、ジンバブエの独立前の名前だった。
その名前は、白人少数支配の歴史を物語る。
でも、それはつい25年ほど前。1980年までの話。
遠い昔の歴史ではないのである。
★ ★
2006年、手付かずの真新しい年です。
いかがお過ごしでしょうか。
今日のハラレは、雨も降らずにとても良い天気。
真っ青な空に白い雲、暑い日差しが降り注ぎながらも気温は低く涼しいです。
☆ ○o.+・゜○o..+・。☆
わたしが現在暮らしているフラットは、少し変わったところである。
ハラレの中心地から車で10分程度のところにあり、周囲は家々が途切れた
何もない緑の野原。
そこへ、数百軒の背の低い淡いピンク色のフラットが立ち並び、
ぐるりと塀に囲まれている。いわゆるヴィレッジになっているのである。
もともと退役軍人のために作られたリタイアメント・ホームなのだが、
現在ではビジネスマンなどさまざまな人たちが住む。
そのほとんどが白人で、そしてこの国に長く暮らす、あるいはここで生まれた
お年寄りなのである。
わたしは、たまたま特別の計らいをいただき、20代にもかかわらず
リタイアメント・ホームに入居させてもらった。
★ ★
ホームといっても老人ホームではなく、普通のフラットが並ぶだけである。
周りを塀に囲まれ警備員がいつも巡回しているため、近年強盗などが多い
ハラレのなかで、安全性はずいぶん高い。
少し普通と違ったところといえば、環境良く整備されたうつくしい庭に
池があり、それからコミュニティセンターのようなところや、レストラン、
スイミングプールに、イギリス風のパブ、そしてクリニックやファーマシーが
あるところであろう。
つまり、内部で散歩ができ、ひとに会い、医者にもかかれるし、
お茶を飲んだりビールを呑んだりもできるのである。
コミュニティセンターでは、サークル活動のようなものもある。
★ ★
たまたま近所でであったお爺さんに誘われてパブに出入りするように
なってから、近所づきあいが広がった。
いろんな人に会い、彼らの話を聴いた。わたしは若く、日本人でもあるので、
非常に目立ち、あっという間にこのコミュニティで有名になった。
ここに暮らすことになったのは偶然だったけれども、わたしはこの少し変わった
環境で高齢の方々と交流することにより、まったく違ったジンバブエの一面を
見ることになった。
★ ★
ジンバブエは南ローデシアとして白人政権が一方的に独立したが、
その偏った政治体制は国際社会から認められなかった。
(日本もこの国を承認しなかった)
その後、長い闘争の時代を経て1980年にジンバブエとして独立。
黒人政権の確立である。
南アフリカのアパルトヘイトとは違うが、ここでも人種差別は行われていた。
その解放の歴史は、わたしも幾度となく書物などで触れてきたことだった。
★ ★
ある日、何度か家のそばで見かけていた白髪の女性が声をかけ挨拶をした。
そしてわたしに言った。
この国はすてきでしょ。こんなに過ごしやすい気候で。
「ローデシア」のいいところは、この気候、それからサーバントがいることよ。
彼女は、この国で生まれた、典型的な英国系の白人である。
もこもことした真っ白いちいさな犬を二匹飼っている。
★ ★
誤解しないでいただきたいが、わたしが知る限りここに暮らす人たちは
愛情あふれるとても良い人たちだ。
しかし、概して人種差別主義者を自称するか、あるいは若干その気がある。
わたしが黒人のジンバブエ人と親しくすると、あからさまではないが、
少しだけ眉をひそめる。
そして、ほとんどが英国やアイルランドなどのヨーロッパから移住してきた
人々の子孫であり、この国で生まれている。
多くは、かつての大農場経営者で、親や先祖から引き継いだ農場を経営している。
しかし、2000年に大々的に行われたファストトラックにより土地を奪われ、
また昨年も憲法の改正により農地は国有化された。
補償もほとんどなく、事実上、財産はほぼ没収ということになる。
ここで何代にもわたり暮らしている彼らは、もとの英国などにも血縁関係は
あまりなかったりする。帰るところはジンバブエなのだ。
しかし、ジンバブエ政府はますます白人に対してそのような仕打ちを行い、
白人は居場所をなくしていく。
★ ★
白人支配の人種主義政権下で黒人は差別され、多くの人が迫害されたり
投獄されたり、場合によっては殺されたりしてきた。
周辺諸国が次々と独立していく中で、強固な白人政権を討ち取るまで
長い闘争を経なければならず、多くの血が流された。
白人の大農場によりジンバブエはアフリカの中でもブレッド・バスケットと
呼ばれるような地位を築いてきた。既得権益は、なかなか手放さなかった。
しかし今、政府は強制的に農場を奪い再分配する。
もちろんそれを維持するだけのキャパシティもノウハウもなく、
農業経営は立ち行かなくなる。そして経済は崩壊寸前。
かつてこの国を牛耳っていた白人に対するリベンジと言ってしまえば
それまでであるが、その考え方はあまりにも甘い。
★ ★
このヴィレッジに暮らす人々は、多くがまだローデシア時代に生きている。
解放闘争のときに軍の司令官をしていたひともいる。
政治に偏り、1965年の白人政府の一方的独立宣言を支持している。
そして当時、「アフリカ人などに政権を握らせれば国は崩壊してしまう、
だから我々が支配するのだ」といった彼らの掲げたテーゼは、
皮肉にも現在のジンバブエを、まったく違った側面からではあるが、
予言しているとさえ言える。
彼らは真剣にこう言う。
「だからあの時、独立宣言をしたんだ。彼らに任せたらこうなることが
わかっていたからだ」
★ ★
今なお溝は深く、横たわっている。
この国の白人の多くは、こうして荒れていくこの国の片隅に追いやられ、
ローデシアの夢に暮らす。
やはり豊かなひとは豊かなままで暮らしてもいる。大きな家も、まだ持っている。
わたしの暮らすヴィレッジに集まる人たちは、そういう人たちだ。
とてもすてきで、しかしわたしから見れば、とても哀しくある、
過去に生きる人種差別主義者である。
ローデシアのせいで流された多くの血は、その死んでいった者たちの思いは、
彼らにはいまでも通じていないのである。
しかし、いまさら白人政権が樹立するわけもない。
だから、片隅にいる。
★ ★
日常生活の中で、彼らはとても愛すべきおじいちゃんおばあちゃんたちだ。
わたしを娘のようにかわいがってくれる。
わたしはアフリカ研究者としても一個人としても、こういうところでみた
ジンバブエの横顔を、ローデシアの記憶を、きちんと心にとどめておくべきと
何度も思った。
この、愛すべき淋しいひとたちに囲まれて。
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今日も、お茶に誘ってくれたおじいちゃまあり。
残念ながら、あふりかくじらは昨夜呑みすぎでダウン中。
ここの暮らしを、もっときちんとした文章にまとめていきたいと思います。
ある意味、とても貴重な経験だから。
いつも読んでくださり、ありがとう。
新しい年ですね。今年もどうぞよろしくお付き合いください。
『あふりかくじらの自由時間』は、今年で六年目に入ります。
あふりかくじら
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『あふりかくじらの自由時間』【77】2006年1月9日発行
【発行者】 あふりかくじら
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