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『あふりかくじらの自由時間』【63】

発行日時: 2005/5/6

 ★.+・゜゜・。☆ ○o.+・゜゜・。○o.++++++++++++++




          『あふりかくじらの自由時間』

                           【63】

                  http://africanwhale.net/index.htm

 +++++++++++++・。+★・。・゜゜・☆ ○o.・..+・。★


歴史書を紐解いて思う。

歴史は歴史として生まれるわけでなく、どこかでかならず自分自身の人生と
つながっている。

その関連性をとかく忘れがちな現代において、本を閉じ気を緩めたその瞬間に
ひょっこりと顔を出してくるのが連綿と続く歴史の流れであるのだと
つくづく思う。


 ☆ ○o.+・゜○o..+・。☆


ゴールデンウィークもおしまいのようです。
Maxやまびこ二階建て新幹線、仙台から東京に向けて移動中です。

緑がいよいよ鮮やかな季節となってまいりました。
いかがお過ごしでしょう。

木々のたっぷりした山々とトンネルの合間に、空を映す田んぼの日本的な
風景が広がるなか、ずんだ餅(絶品)のパックを三つも紙袋に入れながら
眺めの良いMax(はじめて乗車)の中、歴史の連続性についてしみじみと
物思いにふけり、高速移動中です。

トンネルで耳が痛いです。これは苦手。


 ☆ ○o.+・゜○o..+・。☆


昨年の十月ごろ、南アフリカと日本の関係と「名誉白人」について研究
している南ア在住日本人女性の研究者が、ある研究会においてその著書
(博士論文)について発表されたのを聴いた。

その内容は非常に興味深かったので、すぐに書きとめようと思っていたが、
このゴールデンウィーク(関係ないが、これはとても良い響き)で、
あるきっかけを得たので、今やっとここに書きつけようと思う。


            ★         ★


「名誉白人」という言葉についてはすでにご存知かもしれないが、これは
人種差別主義のアパルトヘイト下の南アフリカにおいて日本人に対して
使用されたタームとして有名である。

このことばは、いつどこで使われはじめ、かつ文書化はされているのか?
これを生んだ南アフリカと日本の関係―19世紀から20世紀前半の歴史―とは?

彼女の研究は、分厚い一冊の本になっている。


            ★         ★


世界中から非難をあびながら、南アフリカが人種主義に傾倒していった時代、
南アフリカと交易を行う数少ない国のひとつが日本であった。

1920年代から1930年代にかけ、南アフリカにしてみれば、羊毛の輸出先として
重要な相手国となったのが日本である。

しかし、徹底した人種隔離政策を推進していた国のこと、非白人との取引を
正当化させるため、わざわざ「名誉白人」という不名誉極まりない「称号」を
使用したということは、歴史の流れとして理解に難くない。

よって、研究者をはじめアフリカのことを語る日本人は、南アとの関係を
この「名誉白人」というタームを使用して語ることが多い。
残念ながら、「名誉白人」の意味をはきちがえ、そのことばを肯定的に
捉える一部の某商社などの人間などは存在するが、一般的にこのことばは
かなり否定的に捉えられている。当然だが。


            ★         ★


このことばはしかし、件の研究者の女性によると、南アフリカ政府の発行した
公式の文書には一度たりとも登場していないという。

これほどまで耳慣れてしまったことばではあるが、南アフリカの大統領や
政府高官など各種のスピーチにおいても、歴史上正式に登場してきては
いないという。

彼女が集めた多くの資料の中で、「名誉白人」ということばが登場するのは
一部の新聞記事くらいだということである。
(この辺の話は大変面白いのだが、長くなりそうなのでここまでにしておこう
と思う)

つまり、名誉白人と言う言葉は、日本人が自ら強く意識し、何度も口にし、
広めていった言葉という捉え方のほうが正確な気がしなくも無い。

考えてみれば、徹底した人種主義をうたっていた南アフリカ政府がこのような
「例外」を正式に認めてしまえば、人種主義の根本が揺らいでしまうような
危険性を孕んでいる。


            ★         ★


ゆうべ、仙台に住む祖母の家で、祖母が古い写真を見せてくれた。

それは彼女がまだ二十歳前の写真で、お気に入りの紫色(祖母談)の
ワンピースを着て、家族と写真館で撮ったきれいな一枚だった。
(もちろん白黒なので色は見えない)

わたし自身、過去にこの写真を見たことはあったが、夕べ祖母は初めて
この写真に写った自分の身に着けているベルトについて、思い出しながら
語ったのである。

そのベルトは(写真ではもちろん色がわからないが)、祖母の記憶によると
とてもカラフルなビーズをあしらったものだったという。
色は、鮮やかな白と赤、それから緑色などや黒を幾何学模様にならべた、
とてもうつくしいベルトで自分の父親が外国から送ってくれたという。

なんということだろう。

いまになって気が付くわたしも鈍感だが、それは間違いなくズールービーズ
である。南アフリカのズールーの人々の伝統的なカラーで彩られた有名な
装飾品なのである。


            ★         ★


祖母の父、つまりわたしの曽祖父は、その頃繊維業の会社におり、当時には
珍しく海外を飛び回っていて、帰国するのは一年に一度か二度ほど
であったという。

当時、一家は愛知県にいた。繊維業の盛んなところである。

そして、そのとき日本代表(祖母談)になりケープタウンに派遣され、そこで
娘である祖母のために購入した飾りがそのズールービーズであったというので
ある。

1930年代、南アフリカに向かった日本の人たち。そこから輸入された羊毛。
愛知県で生産される繊維製品。

つまり、去年の十月にわたしが聴いた講演の、まさにその歴史の一ページが、
目の前に生きている祖母の手にした、彼女の過去の中にあったということで
ある。
歴史物語の中で羊毛の輸入をしていたのは、他ならぬわたしの曽祖父に
間違いなかった。

今になって、やっとこの事実を知り、歴史が目の前で自分とつながったことに
驚きをおぼえた。
祖母によると、このことは当時の朝日新聞に載ったとのことだ。


            ★         ★


年月が経ち、わたしが生まれ、そのような曽祖父のことなど知らないままに
南アフリカについて研究をはじめた。

ケープタウンに行き、ズールービーズのお土産も買っていた。
もちろん、白と赤、それから緑色に黒。

祖母にとっては、遠い遠い未知なる異国の地。
それでもわたし自身にしてみれば、それは新しい故郷であり挑戦の地でもある。

歴史はつながっている。
しかも、ちっとも気が付かないところで。


 ☆ ○o.+・゜○o..+・。☆


わたしは仙台で生まれています。
でも、仙台で育ったわけではありません。

今回、この事実を知ったことで、あまり意味は無いのだけれど、
仙台に暮らすこの祖母の孫娘であってよかったと思えるような気がしました。

何故だか、よくわからないけれど、いろんな土地や人々とつながっていられる
自分の生き方に感謝しました。

そろそろ宇都宮に到着します。
東京まであと一時間足らず。

読んでくださり、ありがとう。


うつくしい季節です。


                         あふりかくじら


前回に引き続いてご案内:

 *まだ空きがありますので、ご興味おありでしたらどうぞ↓

TICAD市民社会フォーラムでは、JICAの後援を得て6月18日〜19日にかけて
「連続講座アフリカ学」(初級コース)を開講します。

研究者やJICA関係など様々な分野から講師を集め、いままでは
なかなか実現しなかったアフリカ研究の総合講座を実現しました。

若干参加費がかかってしまいますが、これはかなり貴重な機会ですので、
ご関心がありましたらどうぞご参加ください。

詳細はこちら:http://www.ticad-csf.net


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     『あふりかくじらの自由時間』【63】2005年5月6日発行

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*ずんだ餅には「くるみ」バージョンもあります。美味。
 「パン屋のかりんとう」も忘れずに(3パック)購入。





 
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