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『あふりかくじらの自由時間』【61】
発行日時: 2005/3/14 ★.+・゜゜・。☆ ○o.+・゜゜・。○o.++++++++++++++
『あふりかくじらの自由時間』
【61】
http://africanwhale.net/index.htm
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1986年4月17日、作家ベッシー・ヘッドは、南部アフリカのボツワナ共和国
セロウェ村の病院でその生涯を終えた。
48歳。肝炎だった。
アパルトヘイトという史上最悪の人種主義政権が支配した南アフリカ共和国で、
黒人の父親と白人の母親とのあいだに生まれた「カラード」で、その出生は
人種主義当時の南アフリカでは違法であった。
一人息子を連れ、ボツワナに亡命して22年。
片方の手を黒人の友人に、もう片方の手を白人の友人に握られ、大きな町の
病院へ移送される間もなく、息を引き取ったという。
アパルトヘイトに翻弄され、あまりに劇的な人生を送った彼女。
南アフリカのアパルトヘイトが崩壊し、新しい政権に代わったのは1994年の
ことだった。
ベッシーは、人種主義の終焉を見ることはなかった。
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今年の一月、ある身近な方が亡くなりました。
あまりにも突然で、周りが皆、このことを信じられずにいました。
まだ四十代前半という若さ。少し前に結婚したばかり。
マラウィの研究をしている人でした。
ちょっとマイナーな研究ですし、あまり書くとプライバシーのこともあって
気が咎めますが、彼が亡くなって一月以上たったいま、思うことがあります。
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アフリカセミナーという勉強会をはじめたのが2000年ごろ。それから現在まで
月一回ペースで続いてきて、彼はその常連だった。
少し変わった経歴の持ち主で、会社で何年も働いた後もう一度学士をとり、
それから修士号を取ったひとである。
マラウィで、非常に興味深い研究をしていた。おそらくこのようなテーマで
論文を書いたひとは、日本ではほとんどいなかったことだろう。
一時期は、勉強会の教室を予約してくれたりなど、事務方を手伝ってくれ、
なじみの顔だった。だから、いつ会ったのが最後だったかなんて、
すぐに思い出すことができなかった。
★ ★
エディンバラ大学にいたころ、髄膜炎で亡くなった大学院生がいた。
この病気は、高熱が数日間続いたあと、あまりにも突然亡くなってしまうことが
あるのだということを聞いた。
そのひとの恋人であった女性は、あまりにショックであっただろう。
大学院ではコースメイトだったという。
まわりの友人たちや自分も単なる風邪なのではと思っていた矢先、このような
悲劇が突然おそってくる。そのショックは計り知れないと思う。
しかし、どのような経緯があったかは知らないが、この残された彼女は、
気丈にも彼の研究を引継いだという。彼の遺した資料やノートをみながら、
論文を準備し始めたのだとか。
★ ★
わたしには、19歳で亡くなった友人がいる。
彼は、父親を病気で亡くしたあと、福祉の道を志して留学した。
帰国後大学を受験し合格したが、入学式のころ交通事故で亡くなった。
あとには、母親がひとり残った。
彼女は、たくさんの交通事故遺族とともに、法律改正運動をし、
それからアート展を開いて全国を回ることもするようになった。
★ ★
誰かが亡くなったあと、残された人間が、そうして何かを始める。
それはどんなにか辛い作業だろうと思う。
その人にしかわからない、心の作業なのだろう。
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大きな志あるひとの生がこんなにも唐突に終わりを迎えてしまうとき、
どんなに拒もうとも、我々はこの地上に残され、哀しみのなかで
あくる日もまた生き延びねばならない。
だが、我々に残された生とは、果たしてどれだけのものだろう。
どれだけの時間があるのだろう。
★ ★
ベッシー・ヘッドは亡くなる前、自伝を書き始めていたという。
しかしそれは、書き終わることはなかった。
だれも引き継ぐことができない仕事。
どんなにか、心残りだったことだろうと思う。
★ ★
先日のアフリカセミナーに、亡くなった彼の奥様が見えた。
とても知的な方で、ご自分の専門分野である哲学的な観点から実に的確な
意見を述べてくださった。
まだマラウィに行ってるんじゃないかと思うくらい、と微笑んだ彼女の様子に、
涙がこぼれそうになってしまったのは、わたしのほう。
愛するひとをこのような形で失ったら、果たしてわたしはこうやって強く生きて
ゆけるのだろうか、と思った。
★ ★
誰かの生を受け継ぐことなどできはしなくて、我々は自分自身の生を
ただひたすらに生きていくしかない。
今日できることは、たったひとつだけかもしれない。
でも、今日のこの日、そのたったひとつをすることなくどうして眠れよう。
一度に百のことはできないけれど、たった一行だけでも
ベッシー・ヘッドの文章に向き合い、たった一行だけでもわたし自身の
文章をつむいでいくということが、どれだけ貴重なことであるのか。
この地球の歴史の中で、ベッシーが生き、わたしが生きたということを、
わたしは私に残された生を、こうして文字を綴ることで確かめようと
している。
こうすることしかできないのなら、わたしはベッシー・ヘッドではないけれど、
ベッシーに向き合い、自分自身に向き合い、できることをしていくことこそが
この地上で生きていく自分に課せられた仕事なのだと思う。
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生命のメッセージ展、ご関心があれば。
http://www.inochi-message.com/
読んでくださり、ありがとう。
あふりかくじら
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『あふりかくじらの自由時間』【61】2005年3月14日発行
【発行者】 あふりかくじら
【メール】 africanwhale@mail.goo.ne.jp
【URL】 http://africanwhale.net/index.htm
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