『あふりかくじらの自由時間』【45】
発行日時: 2004/5/7○o.・゜゜・。★・。.・゜゜・○o.・..・゜゜・。★
あふりかくじらの
じゆうじかん
【45】
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ゴールデンウィークも過ぎ、日常が戻ってまいりました。
いかがお過ごしでしょうか。
あいにくのお天気でもありましたが、良い休日でしたでしょうか。
○o.゜゜・。★
いつだったか、友人がわたしに言ったことばをとてもよくおぼえている。
「ものを書くひとって、土地に敏感だよね」
そのせりふを、わたしはとてもよく理解し、そうなのそうなの、と
何度も力強く頷いた。
「土地」「作家」「言葉」をつなぐもの。
ボツワナに暮らした南アフリカ出身の作家ベッシー・ヘッドは、
どう考えても余所者だ。だからこそ、その土地に対してさらに敏感になった。
余所者の視点から、帰属意識を持とうとし、故郷を探そうとした。
…ということを、先月の勉強会で発表した。
★ ★
ベッシー・ヘッドがボツワナに亡命したのは政治的要因が強いけれど、
やはり南アフリカという土地では書くことができなかったという理由もある。
うってかわって平和的なボツワナで、ボツワナの農村をモチーフにして
描いていくことで、南アフリカの人種主義を論の中心に持っていくことを
避けている。
外部の人間がボツワナに入り、社会を変え、影響しあってやがて帰属意識を
形成していくというテーマが繰り返される。
★ ★
わたし自身はひとつところで育っていないし、「出身は?」と訊かれると
非常に困ってしまう、ということはよく他人に言っているけれども、
一方で、東京で生まれ育ったというひとでも、「故郷はない」という
意識を持っているということを知った。
帰属意識というのはどうも、その土地に住んだ時間の長さで形成される
ものではないらしい。
★ ★
ボツワナの土をはじめて踏んだとき、帰ってきたような気がした、というのも
何かそういうものと関連があるのだろうか。
たとえば、ベッシー・ヘッドが暮らしたセロウェ村の、博物館の宿泊施設に
わたしは滞在していた。博物館の敷地内だ。
それは真っ暗闇の中にたったひとつ、円筒形の土壁に藁葺き屋根の
南部アフリカ風ハット(小屋)で、屋根と壁の隙間から砂埃が入るものだった。
それでも電気がひいてあって、裸電球がぶらりと薄暗くたれ下がっていた。
古い迎賓館を改装した博物館の夜は真っ暗で薄気味悪い、はずだったけれども
怖がりのわたしはちっとも恐怖を感じていなかった。
むしろ、その円筒形のハットは一種の魔法にかかった聖域のようで、
あたたかみがあり、余所者のわたしがうまく余所者としてその中に納まって、
ある種の帰属意識を抱く感覚があった。
意識が澄んで、言葉が天から降ってくるような感覚を覚えた。
なんとなく、ベッシー・ヘッドと向かい合ったような気がしなくもなかった。
現に、机には彼女の手紙などを広げていたし。
★ ★
社会が変化するとひとも流れ、文学も様相を変えていく。
文学という視点を通したことばが、社会を変えていくこともある。
「文学研究」という姿勢に対して、愚かしくも批判的な態度をとってしまうことを
深く反省はしているけれども、ベッシーの生き方やその小説をみてしまうと、
とてもではないけれど「文学」を切り離してみることはできない。
わたしにとって「文学」とは、あまりにも個人的なものとつながっているからだ。
○o.゜゜・。★
現在論文の締め切りを抱えているわけではないのをいいことに、上記のようなことを
研究者ばかりの勉強会で述べてみたところ、結論なんかでるわけもないのに
皆様とても大切なことをおっしゃってくださいました。
人生論だね、これは。
たぶん、小説を読むという行為はひとり旅に出るようなもので、それはとても
プライベートなことだと思う。
わたしが未熟なのかもしれないけれど、やっぱりそれを論文にはできない。
という、言い訳をしています。
あなたにもきっと、その人生に深く根を下ろしてしまった小説や文学作品が
あるのではないでしょうか。
ご購読、感謝。
今日は、いいお天気です。
あふりかくじら
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『あふりかくじらの自由時間』【45】2004年 5月7日発行
【発行者】 あふりかくじら
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