『あふりかくじらの自由時間』【42】
発行日時: 2004/3/9○o.・゜゜・。★・。.・゜゜・○o.・..・゜゜・。★
あふりかくじらの
じゆうじかん
【42】
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わたしはわたしとして、いったい何をすればよいのだろう。
生命のあふれるような音楽は、からっぽの器のようなわたしに
なみなみと水を注ぎ、満たし、やさしさでいっぱいにさせてしまい、
わたしはわたし自身に与えられた生のなかで、微かな困惑をおぼえた。
★ ★
「ムビラ」という楽器のことを、ご存知ですか。
アフリカの色んな国々にあっていろんな名で呼ばれる親指ピアノだけれど、
ジンバブエの親指ピアノは、ショナというひとびとにこのような名で
呼ばれています。
平らな棒状の鉄をオルゴールのように固定し、親指や人差し指で奏でる楽器。
とても、くすぐったくて懐かしくて、やさしい音がします。
お元気ですか。気温の低い日が続いています。
○o.゜゜・。★
ジンバブエからやってきたそのひとは、とてもやさしい表情のひとだった。
それはひとえに彼の内面を映し出すものであり、そして音楽もまた
そうに違いなかった。
わたしたち研究者がカジュアルに続けていたアフリカ関係の勉強会は
ここ数年のあいだ順調に継続していて、その土曜日は、そのひとつの区切りと
するためのパーティを開く予定であった。
アフリカ料理屋ではなくって、小さな中南米料理屋を借り切ってだったが、
よく見知った顔のあつまる会であった。
そんななか、偶然というべきか何なのか、ともかく何かに導かれて
彼はやってきた。
レジナルド・チウンディザである。
いわゆるアカデミックな集まりであったから、たんなるアフリカ趣味とは
まったく違う雰囲気の我々だったが、彼の登場は、そのひとつの区切りとなる
場所にすこし違った風をやわらかく吹き込み、溶け込ませていくかのようだった。
★ ★
彼は、糖尿病を患っている。
兄弟の多い家族の長男として生を受け、親を亡くし、兄弟の世話をしてきた。
ムビラの奏者であり、ダンサーであり、彫刻家であり、他にも多くの
活動をしている、まさに天性のアーティストだ。
いろんなものに導かれて、いま少しだけ、この東の端っこの日本に
やってきている。
演奏と、歌と、ダンスと、講演を通し、糖尿病と闘うひとびとのことを
たくさんのひとに知ってもらおうとしている。
★ ★
糖尿病は、生活習慣だけでなく体質などもその誘因になりうるという。
ジンバブエという国も、多くの糖尿病患者を抱えている。
そしてその病は、インシュリンの注射などの治療により克服することができる。
一方で、経済的理由などで、適切な治療が受けられずに命を落とす人間も、
じつはたくさんいるのである。
★ ★
レジナルドが、主張したいこと。
糖尿病という病気を知ってもらう。治療をすれば治るのだ、と。
偏見をなくしてもらいたいということ。
そして、糖尿病患者だろうがなんだろうが、明るく笑い、
音楽を愉しみ、生を満たすことが大切なんだということ。
神が、理由をもって、自分をこの世に使わした。
これは、彼自身のことば。
★ ★
神の名を、微塵の嫌味もなく口にすることができる、ほんとうに
こころのきれいなひとのだと思う。
あれだけまっすぐで、やわらかなまなざしで、明るい。
たくさんの苦しみとか、死んでいくひととか、苦しさとか、病とか、
そういうものをみたひとは、どこまでも明るく、やさしくなれる、
のかもしれないと思った。
すべては神が与えたもうたものとして、彼はそれを音楽にする。
ムビラのやさしい音が、よく似合う。
哀しいできごとを、あれだけ明るい光に満ちた音楽にする。
ときに懐かしく、愉快で、まぶしい。
誰かの心を明るく照らす。
そのひとは、とてもうつくしい生を歩んでいる。
彼とわたしは歳も近くて、彼は色んな話をきかせてくれた。
あんまりきれいな眼をしているので、わたしは自分の心の中を
省みずにいられなかった。
わたしは、わたし自身として何をすべきなのであろう、と。
★ ★
音楽が盛り上がっていって、やがてみんなが踊り始める。
ここいちばんとでも言いたげに、空気が最高潮に達する。
はじける音楽、はじける魂。アフリカの空気が満ちていく。
いつかジンバブエの空の下で、彼の音楽を聴く夜のことを想った。
その日は、そんな夜だった。
○o.゜゜・。★
レジナルドさんの音楽に浸りたい場合、また糖尿病について
考えたい場合はこちら:
http://www.bekkoame.ne.jp/~hirao-k/reginald.htm
読んでくださり、ありがとう。
うまく言葉にならないので、すこし考えてみようと思います。
あふりかくじら
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『あふりかくじらの自由時間』【42】2004年 3月8日発行
【発行者】 あふりかくじら
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