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『あふりかくじらの自由時間』【36】
発行日時: 2003/12/16○o.・゜゜・。★・。.・゜゜・○o.・..・゜゜・。★
あふりかくじらの
じゆうじかん
【36】
○o.・..・゜゜・。★○o.・゜゜・。○o.・゜゜・。★
テロ対策って、何をすることだと思いますか。
武器を向けられているのに、まっすぐ立ち向かっていくこと?
銃を構えて平和と正義を押し売りすること?
脅しに屈するな?
国際協調というのは、そういう意味なのでしょうか。
もはやそんな精神論では済まされないというのに。
★ ★
今年も残りわずかとなりました。
良いお天気が続きます。いかがお過ごしですか。
でも、やっぱり世界では大変なことがたくさんおきている。
フセイン元大統領が捕まって、事態は好転しているのでしょうか。
日本で、たとえば新宿の雑踏なんかで、テロが起きたらなんて不吉なことを
思わず想像してしまいます。
あなたは、どういうことをお考えですか…
○o.゜゜・。★
金曜日の午後、夕暮れの少し前。
くすんだブルーグレーの空と海が、その境界線で溶け合っている。
水面を静かに切る船の通り道が、薄く消えていく。
舞浜と葛西臨海公園のあたり、いつも電車の窓からみえる東京湾が好きで、
かならず海が見える方向に座る。
東京湾の先には小笠原がある。
曇ったお天気のなかで、どこかどんよりしたような静かな気持ちでいた。
また、誰かを見送ることになったからである。
★ ★
K氏には、感謝の言葉がつきない。
ほんとうに、ほんとうにお世話になった。
六年間の日本駐在を終えて、ボツワナ共和国に帰国されるという。
金曜日には、ボツワナ大使公邸で送別会があった。
わたしは、ぱりっとした黒い綿のシャツにふわりとピンクのスカーフを
肩にかけて、夕方エディンバラ大学の先輩の授業に出席してから
田園都市線に乗った。
さよならを言わなければさよならの時がこないのかというと、
そうでもない。
それなら、さよならを言ったほうがいいのかもしれない。
★ ★
1998年の初夏、自分にとって未知の国であったボツワナ共和国と
南アフリカ共和国に、卒業論文のリサーチにいこうと決めた。
手探りの中でできるだけ情報を集めようとしたけれど、やっぱり少ない
情報の中でちょっとした不安を押し隠していた。
学部四年生だったわたしは、すでに何度も読み込んであるはずの
「南アフリカ共和国」の旅行ガイドブック(ボツワナは出版されていない)を
本屋で偶然手に取った。
2ページほどしかないボツワナについてのページに、「駐日ボツワナ大使館」の
連絡先が目に留まった。わたしの持っていたガイドブックには載っていなかった
新しい情報である。
ちょうどその少し前に、東京にボツワナ大使館ができたばかりであった。
電話をかけ、初めてつないでいただいた方がK氏だった。
当時の一等書記官、現在の参事官である。
★ ★
ボツワナの首都ハボロネの町の様子を教えてくれ、安く泊まれるB&Bを
イエローページで探して国際電話で料金を尋ね、作家ベッシー・ヘッドの
暮らしたセロウェ村はハボロネの北方約350キロのところにあり、
長距離バスは駅のところから乗れる、ということまで教えてくれた。
わたしは、何度も彼のオフィスに通い、いろんな細かい質問をした。
アフリカに行くのなんて初めてだったからだ。
お昼ごはんも、何度かご馳走になった。
★ ★
ベッシー・ヘッドの調査は、彼女が亡くなっているため主に文献に
よるものであるが、それでもボツワナ政府のリサーチ許可が必要だった。
K氏に会うことがなければ、そのことも知らないまま行くところだった。
彼は、ハボロネのオフィス・オブ・ザ・プレジデントに申請書類を
提出するやり方を教えてくれ、書類を取り寄せて、レターも書いてくれた。
ボツワナ大学のリサーチ学生として、政府の許可が下りた。
何から何まで、手伝ってくださったのである。
★ ★
彼自身、かつてはボツワナ大学の学生で、生前のベッシー・ヘッドの
講演会に参加したことがあり、ベッシーに直接質問をした思い出もあるという。
ベッシーを知る、ひとりである。
彼女のことにも興味を持っていて、わたしの調査にもたくさん協力してくださった。
アフリカからの帰国後も、こんなわたしを大使館のパーティに招待して
くださったり、警察もほとんどまともにとりあってくれなかった嫌がらせを
受けたときも、親身になって対処してくださった。
ときには一緒に食事に行って、冗談を言ったり夢を語ったりするするわたしに、
丁寧に聞き入ってくださる。
★ ★
とっても背が高くて落ち着いた雰囲気のK氏と、小柄で知的な雰囲気の奥様、
それからキュートで「おしゃま」なお嬢さんと生まれたばかりの赤ちゃん。
ボツワナ風の料理が並んで、いつも明るいボツワナ大使がわたしを迎えて
くださった。
(大使はセロウェ村出身で、ベッシーの息子もよくご存知である)
そこには、たくさんのアフリカ系大使館の外交官の方がいた。
K氏が乾杯の挨拶をする。
冗談を言って、みんなが大笑いする。場が和やかになる。
さっきのスピーチ大使みたいだったよ、って誰かが言った。
9歳くらいの娘さんが、ぐるりと大使公邸のリビングをとりかこむ椅子に座った
大人たちに、ひとりずつ挨拶をしてまわる。
(なんてすてきなんだろう。アフリカらしい感じがする)
K氏はわたしに声をかけ、冗談を言って笑った。
いつ、ボツワナに来るんだい。
周りでは、ウガンダとかモザンビークとかエチオピアや南アフリカの
ひとたちなんかが、バンツー系言語の類似性について喋って笑ってた。
「水」は「マジ」って言うんだ。うちらは、「マジョ」って言うよ…
ニホンゴ?「ミズ」だよ!似てる?……
大使がノリのいい音楽をかけ、ほろ酔いの人々はワイングラス片手に踊る。
もちろん、ノリのいいわたしも。
★ ★
たくさんのひとは去っていくし、自分も去る。
でも、こうしてまた多くの人たちと知り合えるのはすばらしいことだ。
ウガンダの外交官の方がおっしゃった。
★ ★
彼のファーストネーム「Pula」は、ボツワナでは大切な言葉だ。
「平和」とか「雨」とか「恵み」のような意味もあるし、乾杯のときにも
言ったりする。貨幣の単位でもある。
Pulaと名のつくものがたくさんある。
次は、ボツワナ共和国で会えるのだろうか。
またボツワナに行けるかな?
○o.゜゜・。★
さて、あまりにも良いお天気なので、とりあえず外に出たくて
仕方ありません。
地球はどうしても回っていきます。
また、カフェで書き物でもしようかと思います。
ところで、クリスマスはどう過ごされますか。
読んでくださりありがとう。
これからもどうぞ、よろしくお付き合いください。
あふりかくじら
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『あふりかくじらの自由時間』【36】2003年12月16日発行
【発行者】 あふりかくじら
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