>> 記事トピックス一覧 
トップ > 地域情報 > 海外 > アフリカ > 『あふりかくじらの自由時間』

『あふりかくじらの自由時間』【33】

発行日時: 2003/11/17

○o.・゜゜・。★・。.・゜゜・○o.・..・゜゜・。★

      あふりかくじらの
             じゆうじかん
                     【33】

○o.・..・゜゜・。★○o.・゜゜・。○o.・゜゜・。★

「北浦和の居酒屋で朝までコース」の最終日から何日たったんだろう。

しばらく考えごとをしていたのですが、何だかちょっとわかってきたことを
ここに書き出してみようと思います。

寒くなってきましたけど、お元気でおられますか。

先週末は、埼玉大学で行われた集中セミナー『現代アフリカの宗教と呪術』と
いうやつに参加しながら、運営の手伝いをしてまいりました。
何だか不気味なタイトルですけど、それはさておき。

あなたはこのことを、どう思われますでしょうか。
どのように考えて毎日過ごしておられますか。
ぜひ、意見をきかせてほしいです。

 ○o.゜゜・。★

先月末で会社員というステータスを卒業して、好き勝手ものを書いたりしながら、
このような催し物の手伝いに奔走する。
大変勉強になる良い機会であった。

とくに、頭も鈍っているし。
じつにアカデミックな議論が交わされて、ある意味濃厚で非常に刺激的であった。

★ ★

出席しているひとの大半を、大学の先生を初めとした研究者や大学院生が占め、
宗教と呪術というだけに、いわゆる人類学者らしいひとが多くいた。

大学に所属しているって、けっこういいことだ。
「今、何をされているのですか?」
(大抵の場合、これは職業を問うわけだ→ベッシーもこのことについて記述している)
あるいは「ご専門は?」という問いに、実に明快な回答がくる。
何々大学の博士後期課程に在籍中で、ケニアのどこそこの人たちのこういう
儀礼について研究しています、という具合。

では、私はなんだろう。

何をされているのですか?うーん、あふりかくじら。あふりか屋さん。(なにそれ?)
ご専門は?ううむ、あふりかケンキュウ…?(アフリカの何?)

もちろん「作家ベッシー・ヘッドの研究をしています」と答えることもある。
でも、それは自分を限定してしまうようで、ときにおそろしい。
できれば避けたい。
第一、「文学研究者」と思われてしまうのがいやなのだ。
ベッシーのことを大学で論文にするために生きているわけじゃない。

そう思って、わたしは自分の無所属加減を茶化したりしてごまかす。
それとも400字以上の自己紹介スピーチをさせてもらうか、だ。

では、ベッシー・ヘッドを大学で研究するというのはどういうことだろうか。

★ ★

作家ベッシー・ヘッドは1937年に南アフリカ共和国に生まれた「カラード」で、
黒人の父親と白人の母親をもつ。養父母に育てられるが、13歳のときに自らの
出生の秘密を知ってしまう。
その後、ジャーナリストをしながら結婚、子どもが生まれるがやがて結婚生活は
続かなくなり、二度と帰国を許さない出国許可証のみを手に、ベチュアナランド
(現ボツワナ共和国)へ亡命する。

彼女のことを研究しているひとは、けっして少なくない。
ベッシー・ヘッド学会なども開かれたりしていたくらいだ。
そして、このひとを研究するひとたちには、いわゆる「文学研究者」が多いけれど、
その辺わたしにはどうもよくわからないので、避けておきたい。

ただ、わたしという個人とベッシー・ヘッドという個人との関係において、
以下のことがいえるんじゃないかと思う。

★ ★

(1)「ベッシー・ヘッドというアカデミズム」
アパルトヘイトが生み出した南アフリカ社会のこと。その歴史の変遷と社会構造。
そのなかで生きた人々は何を思ったか?
アパルトヘイトを生み出したものはなんだったのだろうか。
そして、アパルトヘイトが生み出したものは?
それを知るために、ベッシー・ヘッド自身のアイデンティティの模索を発見し、
彼女の意識のフィルターを通した社会をみていくということが一点。
それは、ベッシー・ヘッドのようにアパルトヘイトの悪を憎み、その理想を
描き出そうとした作家の作品とその存在意義を、社会科学的に問うという姿勢である。
そこに、可能性を見出したい。
(これは、非常に難しい視点だということは重々承知)

(2)「ベッシー・ヘッドという一方向的ソウルメイト」
〜彼女は死んでいるので双方向ではないだろう〜
彼女は、耳の後ろのほうで雷が鳴ると言った。
('Thunder Behind Her Ears'というタイトルで、あるデンマークの研究者が
彼女の伝記を書いている。)
そういうとき、強烈なイメージとことばたちが爆発するように生まれてくるとか。
わたしはといえば、脳みその中に天からものすごい勢いでことばが降ってくる。
どんどんことばとイメージがあふれそうになる。
彼女のことばを手に取ると、痛さが伝わってきて怖いことがある。
この距離感は、ある意味非常に危険である。
自らをベッシーと重ねることができてしまうからだ。
その文章の息吹を、自分の心の奥深くで、まるで自分自身のことばのように
感じ取ってしまう。

★ ★

ベッシー・ヘッドはわたしの人生の中のひとつのテーマにすぎない。
アカデミックな意味でも、プライベートな意味でも。

そして何より、(1)と(2)は相反するものである。
ここが、いわゆる一般的な「研究者」とは大きく異なっている部分なのかもしれない。

★ ★

人類学というものをしているひとをみると、どうしてか落ち着かないことがある。
ちょっと心配をしてしまうのだ。
このひとは、どういう気持ちで、どんなスタンスで「人類学」をするのかしら、と。

人間の生活をもろに研究対象とするその学問は、非常に難しい。
その「対象」は化学物質でも動物でもない。
実際に実生活を営んでいる人間に他ならないからだ。

そこにあるのは、ある種の客観性と冷たさだ。
相手の体温を感じない程度の、距離をとることだ。
「彼ら」の生活。「彼ら」の社会。
まるで自分が無色であるかのように、「彼ら」のことを「分析」しなくてはならない。

いったい自分は誰で、誰のために、どんな「言語」〜文字通りの意味だけでなく〜で、何を目的として書くのか。
これを熱心に議論するひともいれば、目を瞑るひともいるだろう。
答えはなかなか出ない。

いわゆる「ブッシュマン」の研究をしているというと、ボツワナ政府に調査許可を
敬遠される場合がなくはない、という話をきいたことがある。
倫理的な問題どころか、政治的な問題などにもかかわってくる。

★ ★

アカデミックな研究をするということは、ある種の冷たさをもつことでもある。
対象はあくまで、個としてのアイデンティティではなく、対象として認識する。

「アカデミズム」や「アカデミック」を辞書で引くと、いろんな意味が出てくる。
伝統的・保守的・閉鎖的な学風。学究的。非現実的。机上の。空疎な。
形式を重んずる、など。
どちらかというとマイナスイメージの意味が多い。

★ ★

アカデミックな冷たさと客観性を求めていっても、厳密な意味でそれは
客観的になりきれず矛盾を呈しているのではないだろうか。

選択をしていく時点でその客観性は徐々に失われていくだろうし、そして
ある種の個人的な情熱もなければ続かない。

★ ★

上記の(1)と(2)は相反するものである。

しかし、社会科学者は生きた社会を考察するのであれば、
血が流れていなければならない、と単純に思う。
わたしにしてみれば、ときに矛盾さえしてしまうその両者がなければ、
ベッシー・ヘッドを通した社会の考察は成り立たないように感じている。

実に奇妙な話だけれど、そういう意味で「熱く」ない研究者の研究や、
矛盾をどこかで感じていないひとの研究は、実につまらない。
人生そうでなくちゃ面白くない、というのが率直な感想だ。

★ ★

わたしは、短い期間ながら会社勤めをしてきた。
違う世界の人々に会い、違う視点からの社会を経験するということで、
一見回り道をしているように見えるが、このことでわたしの研究はずいぶん深みを
増したような気もしている。

無所属の、良いところでもある。

ずっとおんなじ大学やおんなじ会社にいただけでは、気づかないことがたくさん
ある。
いちばん危険なのは「井の中の蛙」に成り下がること。
いろんな考え方をしているひとがいることを、忘れること。

★ ★

わたしのなかで矛盾している数々の要素は、目をそらしてはいけない部分だ。
いくつかの要素が絡まりあってこそ、立体的になる。

そして、養老孟司も言っているけれど、人間自分の脳で理解できることは限られていて、
自分以上のもの、つまりプラスαについては理解できない。
つまり、自分が理解しうる範囲のことを、世の中で起こりうる事象の100%だとして
断言することなどできない。

知らないことって、たくさんあるからだ。
そうでしょう?
そして、自分自身や人々は、常に変化している。

 ○o.゜゜・。★

長くなりました。
ちょっと、一週間くらい考え込んでいたのです。

ほんと、読んでくださりありがとう。

さて、あなたは何をなさっているひと?
きかせてほしいなぁ。

                あふりかくじら
  
 ○o.・゜゜・。○o.・゜゜・。○o.・゜゜・。★

あふりかくじらへのメール : africanwhale@mail.goo.ne.jp
あふりかくじらの自由時間 :http://africanwhale.hp.infoseek.co.jp/

 
このメルマガの読者になる
規約 
>> メルマ!の会報誌もお届けします
ブックマーク: はてなブックマークに追加del.icio.usに追加Buzzurlにブックマークニフティクリップに追加ライブドアクリップに追加Yahoo!ブックマークに登録My Yahoo!に追加Add to GoogleRSS

このメルマガを読んでいる人はこんなメルマガも読んでいます

週刊アカシックレコード
02年W杯サッカー韓国戦の「誤審」を世界で唯一「前日」に誌上予測し、誤審報道を「常識化」した推理作家(金正日の「遺書」で始まる「中朝戦争」後の北朝鮮...
宮崎正弘の国際ニュース・早読み
 評論家の宮崎正弘が独自の情報網を駆使して世界のニュースの舞台裏を分析
Africa Now!
アフリカの生活を覗いてみよう!アフリカの田舎町に住む唯一の日本人ツアーガイド ちはるが、アフリカの人々、食べ物、生活などを写真つきで紹介します。南ア...
虹の国・南アフリカ情報・2008
南アフリカは1994年に新政権が誕生しました。2010年にサッカーWカップが開催されます。最近の南アフリカの情報をお伝えします
グローバル・エイズ・アップデート
地球規模の広がりを見せるHIV/AIDS問題。アフリカなど途上国を中心に、現状と国際社会、市民社会の取り組みの最新情報を伝えるメールマガジン。


この記事へのコメント


コメントを書く
コメントはありません。

おすすめキャンペーン

利息、払いすぎ?
オリックスVIPローンカードなら<<年率5.9%〜、利用可能枠最高500万円>>
ゆとりのカードローンです。


比べてみれば、こんなにお得→

メルマガデータ

  • メルマガID : 103336
  • 創刊日 : 2003-11-12
  • 最新号 : 2008-04-21
  • 発行周期 : 月2回程度
  • バックナンバー: 全て公開
  • 発行者サイト: あり
  • 読んでる人 : 54人
  • コメント数 : 1
  • Score! : - 点
  • >> 月間ランキング

発行者プロフィール

ペンネーム :


このメルマガの読者になる

規約に同意する





このメルマガの最近の記事


このメルマガの最近のコメント


このメルマガのバックナンバー


注目情報


新着記事トピックス