Vol.81 遺言 松井政就の『賭け遊びコラム』
発行日時: 2005/5/18Vol.81 遺言
(大勝負オークスの話は週末までとっておくとして…)
先だって、知り合いと久々にあって酒を呑んでいた時、彼が身なりもしゃんとし、持ち物もバカに高級品になっていることに気づいた。それまでは、決してセンスがあるとは言えないような、要するにダサイ格好が多く、大してファッションに詳しくもないぼくからみても目を覆うような感じだった。それが急に(着こなせているかどうかは別として)、上品な質のものを着ていたのだ。
水を向けると、何でも、親だか誰だかの遺産が入ったとのこと。取り分についても、ちゃんと彼の名前が入っていて、額は知らぬが、あの目つきからしてきっと過分なお金を受け取ったに違いない。
「遺言があれほど絶対だとは思わなかった」とは、彼の弁。
ところで遺言といえば、ぼくの周囲でもいくつかそれにまつわる話があった。
一つは、知り合いが貸していた部屋の住人の話。
ある日、その借り主(住人)が死んだ。その住人は何十年も一人暮らしで、成人した子供はどこか遠くに住んでいた。その住人の遺言というのが「この(借りていた)部屋を絶対に明け渡してはいけない」ということだった。 その意味するところは子供たちにも不明だったらしい。借り主は死に、その子供も使う予定が全くない部屋なのだが、子供たちは「遺言だから」ということで、延々とその部屋を契約していた。数年後ついに子供たちはバカらしくなったようで、「遺言に背いてもよいのか」と恐れながら弁護士事務所を訪ねたという。
他に聞いたものでは、父親が死ぬ間際に枕元に息子を呼び寄せ、「おまえは今の彼女と別れなさい」と言った話。
「どうして?」と息子。
「あの子は、お父さんがあの子のお母さんと浮気して出来た子だ。つまりおまえと兄弟なんだ」
「何だって!?」
あまりに驚いた息子は病室を飛び出して母親のところに行き、今、父親から打ち明けられた衝撃の話を伝えた。すると母親はニコリと笑い、言った。
「大丈夫よ。あなたはお父さんの子じゃないから」
これは遺言ではないかもしれないが、よく聞く(?)話だ。
いくつか聞いたそうした話の中で、ぼくが一番好きなのは、友人Hのじいさんの遺言。
死の淵を覗きながら、おじいさんは家族全員を部屋に集めて言った。
「お前たち、領収書が落ちていたらお金だと思って拾いなさい」
ちなみにそのじいさんは、有名な税理士であった。
松井政就
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