松井政就の『賭け遊びコラム』 ダービー
発行日時: 2004/5/29
Vol.32 18年ぶりのグランバズドリーム 〜日本ダービー〜
厳格で知られていた社台ファーム総帥の故・吉田善哉。彼をもってしてもダービー制覇は涙を堪えきれなかった。しかし、優勝馬の口取りをするその陰で、悔し涙を抑えきれなかった男がいたことをぼくらは忘れてはいない。「相馬眼の天才」として知られた若き日の岡田繁幸である。
名門岡田牧場の長男として生まれた岡田であったが、考え方の違いからやがて父と袂を分かつ。生産中心主義の父に対して、岡田は購入中心主義をとなえていたからだ。しかし対立していた父子に雪解けがやってくる。ある日岡田が連れてきた仔馬をみて、「いい馬だ」と父が言った。はじめて息子の仕事を認めた言葉であった。
しかし、仔馬のデビューを前に父は急逝する。岡田の息子をとてもよく可愛がってくれた父だった。その父の夢にかけ、岡田はその馬に「グランバズドリーム」(おじいさんの夢)と名付けた。
1986年の日本ダービー。若き日の田原成貴が渾身の騎乗で直線を抜け出していく。14番人気。まったく無視された存在のグランバズドリームが内からゴールに突き進む。我が目を疑う大観衆。しかしその外から、吉田善哉の夢を乗せたダイナガリバーが差しきった。そこで岡田父子のダービーが幕を閉じた。
あれから18年。岡田の夢は、地方競馬の夢に成り代わった。
時代も変わった。安藤勝己が中央騎手に、そして地方馬が地方所属のままダービーに出走できるまでに日本の競馬は変わった。
そんな中で登場した道営競馬のコスモバルク。背負わされるものはあまりにも多い。それは種牡馬価値を上げるためという、キングカメハメハに背負わされたテーマとはあまりにも違いすぎる。
2歳時に強豪を下し、休養させて今年2戦。2度の2000に先行力と差し脚を確かめたコスモバルク。
一方の、強さは本物ではあれど、2200→2000、そして1600mへと距離が短縮するほど着差を広げてきたキングカメハメハ。2400mを照準にするには、あまりにも好対照のステップである。
そこに加わったのが青葉賞勝ちのハイアーゲーム。2400mを快勝したこの馬に高い評価を付ける人は多い。しかし2歳、3歳ともに影さえ踏ませなかった馬が快勝できた青葉賞だ。バルクならば圧勝していたかもしれない。
バルクが勝てば感動、キングが勝てば賞賛のダービー。
勝つのはもちろん強い方だ。しかしどちらを選ぶかは、最後は自分の競馬観しかない。
◎コスモバルク
ぼくらは明日、18年ぶりのグランバズドリームを見られるだろうか。
松井政就
http://www004.upp.so-net.ne.jp/tjk/index.html
keiba@usa.com
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