市九郎は、主人である三郎兵衛の寵妾と非道な恋をしてしまい、その不義から主人に
手討ちにされそうになりました。しかし逆に手向かい殺してしまいます。こうして、
三郎兵衛の家を飛び出したのですが、その後も悪事を重ねていました。しかし、良心
の呵責に耐えきれず、苦しんだ末、美濃の浄願寺というお寺で仏道に帰依し、衆生済
度のために身命をなげうって人々や自分自身を救う誓いをたてるのでした。全国を巡
る修行の旅の途中で、豊前の国に立ち寄り、山国川を通った際、その川に面する断崖
絶壁に鎖渡しで通していた道の上から馬子が足を踏み外して死んでしまうという事故
を知りました。聞くところによると、年に10人ほどはそのような事故で死者が出る
との事でした。市九郎はその時、贖罪のためにもと自分の身命を捨ててこの難所を除
こうと思いつき、この絶壁を掘り貫いて道を通じようという誓いを立てたのです。
(つづく)