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職場でトラブル!会社側も労働者側もいつ非常識な相手に遭遇するかわかりません。このメルマガでは具体例を取り上げ、法律上どのように解釈されるのかを解説します。小難しい条文を勉強しなくても、これを読めばOK




会社VS社員045(出会い系サイトへの書き込み)

発行日: 2005/11/9

                         2005/11/09
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会 社 VS 社 員  訴えたら勝つのはどっちだ!?  第45号
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◆◆今回の訴え◆◆

「業務用のアドレスを連絡先とし業務用のパソコンを使用して、出
会い系サイトに投稿し私用メールの送受信をするなんて、即刻クビ
だ!」

             VS

「懲戒解雇に該当する事実もなく、正当な理由を欠きますので、懲
戒権の濫用にあたります」


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労働者側も、会社側も、いついかなるときに非常識な相手に遭遇す
るかもしれません。

そんなとき、自分の身は自分で守るため、裁判で争うところまでは
いかないにしても、自分の正当性を訴えていく必要があります。

そのためには、法律上はどう解釈されるのか、その“境界線”を知
っておくことが大事!

小難しい条文をお勉強しなくても、これを読めば労働法の勘所がわ
かる、そんなメルマガです。


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◆◆事件の経緯◆◆

K社は、平成10年頃からパソコンの導入を始め、平成13年以降には
全社員に対してパソコンを貸与するようになりました。

ただ、K社では社員に対して、パソコンの使用方法や使用にあたっ
ての遵守事項等について、特に説明や教示は行われなかったし、パ
ソコン使用規程のようなものも定められていません。

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平成15年8月、K社の総務部に「通行人」と称する人物から、「こ
んな書き込みがありますが…」というタイトルのメールが送られて
きました。

このメールを調べてみると、K社の社員Aさんが、いわゆる出会い
系サイトの掲示板に「M嬢を探しています」等と交際相手を求める
投稿を、会社のアドレスを使用して行っていることが判明しました!

そのためK社は、Aさんの使用するメールアドレスについてサーバ
ーの調査を進めたところ、Aさんが送受信した多数の私用メールが
あり、特定の女性と毎日のようにメールのやりとりをしていたこと
が判明しました!

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そこで、K社の社長はAさんを呼んで事情を聞き、Aさんの上司と
三者で面談を行いました。

Aさんは上記の事実を認めましたが、会社が自主的な退職を勧めた
ところ、拒否しました。

その際、Aさんは、会社に対して謝罪や反省の言葉を述べることは
なく、さほど悪いことをしたとは思わないという態度でした。

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K社は、社長の諮問機関である懲戒委員会を開催したところ、

「上記のような行為を、業務用のパソコンを使用して、もっぱら業
務時間中に多数回行われたことは職務専念義務に違反し、社員とし
ての適格性に欠けることを示している。
 また、連絡先が業務用アドレスであったために、そのような投稿
をしている者が当社の関係者であることを第三者に容易に知らしめ
ることになり、会社の名誉や信用を著しく傷つけたもので、就業規
則第4条、第5条1項及び2項、第6条2項及び8項、第8条4項に違反し、
第75条1号及び18号に該当する。」

と、全会一致でAさんを懲戒解雇に処する旨、答申されました。


※K社就業規則抜粋

第4条(規則遵守の義務)
会社及び社員はこの規則を誠実に守り、その義務を履行し、相とも
に協力して業績の発展に努めなければならない。

第5条(服務の基本)
1 社員は、事業の尊厳及び自己の使命を自覚し、会社の諸業務の効
率的な運営によってこれを発展させ、もって社会に貢献することを
念頭に置き、自己の本分を守り全力を挙げて職責の遂行に専念しな
ければならない。
2 社員は、常に品性を正しくし職能の向上に努め、互いに人格を尊
重し、信義、礼節を重んじ、相協力して職務を完うしなければなら
ない。

第6条(職場の秩序維持)
2 社員は、勤務時間中定められた業務に専念し、上司の許可を得な
いでほしいままに職務を離れてはならない。
8 社員は、会社または会社の施設、設備、自動車、燃料、油脂、伝
道力その他の財産又は物品を愛護節用し、いやしくもこれを不当に
使用し、棄却し、毀損し、亡失し、又は私用に供してはならない。
または社外に持ち出し、あるいは他人に使用させてはならない。

第8条(信用失墜行為の禁止)
4 社内外を問わず、社員としての品位、体面及び学校等の名誉信用
を傷つけるような行為をしてはならない。

第75条(懲戒解雇、諭旨退職)
次の各号の一に該当する行為があった社員に対しては、懲戒解雇も
しくは諭旨退職に処する。ただし情状によっては第73条の懲戒区分
によって処分することができる。
(1)会社の名誉信用を傷つけたとき
(18)その他前各号に準ずる違反又は不都合な行為があったとき

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K社は、懲戒委員会の答申を受け、平成15年9月25日にAさんを懲
戒解雇しました。

Aさんはこれを不服として、雇用契約上の地位の確認及び未払い賃
金の支払いを求め、会社と争うことになりました。

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【K社の主張】

Aさんは最古参の課長であり、管理職としての重責を負う立場であ
りながら、勤務時間内に数回にわたり、業務用アドレスを連絡先と
して、会社のパソコンを使用して、いわゆる出会い系サイトに以下
のような交際相手を求める投稿を行うなどの書き込みをし、私的メ
ールを送受信していました。

平成15年8月6日
「M嬢を探しています。経験、年令は一切問いませんので、少しで
も興味があればメール下さい。お互いの感性を知ることが大切です
ので、メールからゆっくり始めましょう。完成が合うM嬢と良きパ
ートナーの関係が築けるようにお互いに努力していきたいと思って
います。SMに少しでも興味があって、マゾっ気の女性であればど
なたでもどうぞメール待っています。」

平成15年7月18日
「自分はMじゃないかな?またMですよって思っている女性の方、
先ずはお互いを十分理解するまでメール交換しましょう。話を重ね
ていく中でお互いの信頼が確立するまではプレーに入りませんし、
貴女の嫌がる行為は基本的にしません。ソフトでもハードでもご要
望にお答えしますので、勇気を出して先ずメールをください。秘密
厳守しますので安心して下さい。」


Aさんの使用していたパソコンのハードディスク内のメール送受信
記録には、平成10年9月21日から平成15年9月3日までの受信記録合
計1,655件及び平成11年5月18日から平成15年9月3日までの送信記録
合計1,331件があるところ、いわゆる出会い系サイトに関連すると
判断されるものが、受信メール815件、送信メール820件もあり、A
さんの送受信したメールの概ね半数が出会い系サイトの関連メール
です。

このように、送受信したメールのほとんどが出会い系サイトに関連
するものだという状況自体からいって、業務をないがいしろにして
私的活動に走っていることがよくわかりますし、メールの分量から
すると業務時間の相当程度をメール作成に費やしていたことが明ら
かです。


そして、Aさんが今件の訴訟を提起したことにより、新聞報道にも
取り上げられ、その結果関係各所から批判的な問い合わせがあり、
会社の名誉・信用が傷つけられました。


それにAさんは、メール交換の相手方から「会社のパソコンで女性
とメールして問題ないんですか?」とか「会社名だして大丈夫?」
などとメール内で明確に指摘されていたにもかかわらず、その後も
平然と業務用のアドレスを使用し続けており、業務用のメールアド
レスを用いて出会い系サイトへの投稿を行うことで、会社名が公然
と表示されることになることを十分認識していました。


このように、Aさんの行為は、職務専念義務に違反するなど職場規
律の違反の程度が甚だしいのみならず、会社員としての適格性に欠
けることを示しており、また会社全体の名誉・信用を著しく傷つけ
ました。


そのため、Aさんに対する懲戒解雇は相当であって、やむをえない
ものと言えます。


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【Aさんの主張】

この懲戒解雇は、以下の通り懲戒事由に該当する事実がないし、正
当な理由を欠くものであるから、権利の濫用に該当し無効です。

・会社は、処分理由書において、私が「出会い系サイト」への投稿
をし、かつこれに基づいて「私用メールの送受信」を業務用パソコ
ンを使用し、もっぱら「勤務時間内に多数回にわたって行った」こ
とを捉えて職務専念義務に違反し、会社員としての適格性を欠き、
結果として会社の名誉信用を傷つけたと指摘していますが、私が会
社の指摘する出会い系サイトへ書き込みをしたことは事実であって
も、これに基づいて多数回の私用メールをした事実はありません。

・会社は、私や私の所属する全国一般労働組合福岡地方支部K社分
科会から、再三懲戒解雇の理由とされる「私用メール」の内容の開
示を求められたにもかかわらず、これに応じず、一切の資料を開示
しないままに懲戒解雇を断行しました。

・会社は、私や組合が処分にかかる弁明の機会を与えるようにと要
求したにもかかわらず、これを一切拒否しました。懲戒委員会や苦
情処理委員会も私の弁明を聞いておらず、私の弁明権は完全に奪わ
れました。


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さて、この訴えの結末は…


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労働者側の勝ち:懲戒事由には当たるが、懲戒解雇は苛酷すぎる
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◆◆趣 旨◆◆


■ Aさんの行為は、懲戒解雇事由に該当する

Aさんが、管理職として、日々の業務の遂行に対し、職場での規律
維持等について、一般社員より思い責任を負っていたことはいうま
でもない。

このような立場からすれば、Aさんの行為は、内容からして破廉恥
とのそしりを免れない点や、メールアドレスを通じて投稿者がK社
の関係者であると判明しうる点から、モラルを欠き不適切であって、
就業規則に違反するものである。

したがって、これら一連の行為は、社員としての職務専念義務や職
場の規律維持に違反するというだけでなく、K社の社員としての適
格性にも疑問を生じさせるし、さらには会社の名誉信用にも関わる
ものであって、就業規則の懲戒解雇事由に該当する。


■ 社会通念上相当と是認できなければ、懲戒権の濫用になる

しかしながら、懲戒解雇は、労働者に対し社員としての地位を喪失
させるという極めて重大な不利益を負わせるものであることを鑑み
ると、規律違反の種類、程度、非処分者の事情、その他諸般の事情
を考慮して相当なものでなければならず、客観的に合理的な理由を
欠き、または社会通念上相当として是認できない場合には、懲戒権
の濫用として無効になると解釈されるべきである。


■ 懲戒処分のうち最も重い懲戒解雇を実施するのは苛酷すぎる

Aさんの行為は、職務専念義務や職場規律の違反があるほか、社員
としての適格性にも疑問がつく。

しかしながら、事を子細にみると、投稿に基づくメールのやりとり
は、紹介者との間の送受信が数回あるだけであり、しかもこのやり
とり以上にAさんが女性とのメールの交換や交際をしているわけで
はない。

また、投稿以外では出会い系サイトで知り合った者と私的なメール
交換を繰り返しており、その内容は単なる日常生活に関する私信か
ら交際相手とのいわゆる痴話げんかのようなやりとりまで様々であ
るけれど、いずれも直接性的関係を求めるなどの卑猥なものとは性
質を異にしている。

そしてAさんは、懲戒解雇当時、自らの職務を特に疎かにしたこと
はなく、メールの送受信自体によってK社の業務自体に著しい著し
い支障を生じさせてもいない。

また、Aさんが訴えを提起した後に新聞に掲載されたため、関係者
から問い合わせがあったが、Aさんの訴え提起前には、Aさんの投
稿について外部で話題となったり、K社に指摘がなされたりしたこ
とは、「通行人」からのメール以外には特になかったのであり、A
さんの投稿等自体が、具体的・現実的にK社の名誉・信用を毀損し、
社会的評価を低下させたとはただちに言い難い。

さらには、K社においてはパソコンに関する使用規程はなく、他の
社員もこれを少なからず私的に利用していたという実績もあり、こ
のような結果を招いたことに、K社が適宜対応していなかったとい
う落ち度がないとも言えない。

これらに加え、Aさんは、K社に昭和52年4月に入社して以来、長
期に渡りまじめに働いてきたものであって、他に処分歴もなく、今
件に関しても謝罪文を提出する等、自ら反省改悟している。

以上のような諸事情を総合勘案すると、Aさんに対し、他の懲戒処
分ではなくて最も重い懲戒解雇をもって臨むのは、いささか苛酷に
過ぎると言わざるをえず、今件の懲戒解雇は解雇権の濫用として無
効というべきである。


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◆◆参考判例◆◆

K工業技術専門学校(私用メール)事件


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【編集後記】

前回のメルマガは、なぜかいつもより反響がありました。

感想等お送りいただいたみなさま、ありがとうございます。

どのような題材が受けるのか、自分では今ひとつわかりません。(^^;



次号は11月23日(水)配信予定です。

ご意見、ご感想、その他取り上げて欲しい事例などございましたら、
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