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会社VS社員044(躁うつ病の社員を解雇)

発行日: 2005/10/26

                         2005/10/26
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会 社 VS 社 員  訴えたら勝つのはどっちだ!?  第44号
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◆◆今回の訴え◆◆

「躁うつ病のため、出勤してもほとんど業務を行えないため、就業
規則の規定により解雇する」

             VS

「仮に形式的には解雇事由に当たる行為があったとしても、会社の
適切な指導により改善できたことで、解雇は不当」


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労働者側も、会社側も、いついかなるときに非常識な相手に遭遇す
るかもしれません。

そんなとき、自分の身は自分で守るため、裁判で争うところまでは
いかないにしても、自分の正当性を訴えていく必要があります。

そのためには、法律上はどう解釈されるのか、その“境界線”を知
っておくことが大事!

小難しい条文をお勉強しなくても、これを読めば労働法の勘所がわ
かる、そんなメルマガです。


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◆◆事件の経緯◆◆

K社は、ガス施設並びに水道衛生、空気調和、冷房工事等を行う会
社です。

Aさんは、平成1年にK社に入社し、T営業所に勤務しガス工事用
の資材管理を担当していました。

その後、Aさんは平成10年9月にM営業所に異動になり、同様の業
務を担当していましたが、異動してしばらく経った頃から、資材の
用意をしていなかったり、資材を取りに来た協力会社の作業員に高
圧的な態度を取って口論になったり、K社の得意先であるI社に資
材を注文する際に命令口調で話すため、I社から苦情が寄せられた
りするようになりました。

M営業所長は、上記のAさんの行動を知り、

・資材の用意を依頼されたときは必ずメモを取ること
・I社は当社の得意先であり、電話で話す言葉には十分気をつける
こと
・協力会社の作業員は倉庫に入っても構わないこと

と注意しました。

M営業所長は、注意をしている際に目の焦点が合っていなかったこ
となどから、Aさんの問題行為が躁うつ病のそう状態によるもので
あることを知りました。

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Aさんは、M営業所長が注意したにもかかわらず、問題行為を止め
なかったのですが、M営業所長はAさんが躁うつ病であることを知
って以降、Aさんを注意することは病気の悪化につながりかねない
と思い、これ以上Aさんに注意しませんでした。

この頃から、Aさんは精神科のC医師の診察を受けるようになって
いました。

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平成12年1月、M営業所に「Aさんが交通事故を起こしたので、事
情聴取を行いましたが、挙動がおかしいので、Aさんの親族に保護
願を出すよう伝えていただけませんか?」と、警察署から連絡があ
りました。

Aさんは独身だったので、Aさんの兄が保護願を出しました。

そしてAさんは、自律神経失調症という病名で、入院及び療養のた
め欠勤しました。

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Aさんは平成12年3月に復職しましたが、その後、勤務時間中所長
の不在時に、他の従業員が執務している事務室で私用電話をかけて
長時間話したり、他の従業員に仕事に関係ない話をしたりするよう
になり、その声が大きいこともあって、他の従業員の業務に支障を
来たすようになりました。

これを知った所長は、Aさんの病気に対する配慮をしながら注意し
ましたが、Aさんは上記のような迷惑行為をやめなかったばかりか、
朝礼の際所長に対して唐突に「おまえの上司は誰だ」とどなったり
しました。

またAさんは、半日年休・早退により、終業時刻前に帰宅すること
が多くなり、それどころか就業時間中も、倉庫内の一室に中から鍵
をかけて寝ていることもありました。

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Aさんは、平成13年1月以降うつ状態が続いて欠勤が増え、また出
勤したとしても、仕事振りは集中力に欠けるようになっていきまし
た。

そのため、Aさんに任される業務も、ガスメーターの出入の個数を
パソコンに打ち込んだり、月末の棚卸を手伝ったり、週1回I社の
関連業者から配送される資材の納入を手伝う等といった、単純なこ
とに終始するようになりました。

以下がAさんの欠勤状況です。

平成13年1月 欠勤4日
平成13年2月 欠勤5日
平成13年3月 欠勤7日
平成13年7月 欠勤2日
平成13年8月 欠勤9日
平成13年9月 欠勤3日
平成13年10月 欠勤8日
平成13年11月 欠勤8日
平成13年12月 欠勤8日
平成14年1月 欠勤7日
平成14年2月 欠勤7日
平成14年3月 欠勤6日
平成14年6月 欠勤5日
平成14年7月 欠勤13日
平成14年8月 欠勤10日

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K社は、Aさんの解雇を検討しました。

しかしながら、休職して治療に専念することにより病気が治癒し、
普通に働くことができるようになる可能性もあると考え、Aさんに
対して「休職してから1年半の間は、傷病手当金と補助金で基本給
の90%が支給され、治療に専念できますよ」と伝え、休職を検討す
るよう申し出ました。

Aさんは、平成14年8月24日、K社に対して9月1日からの休職願を
提出しました。

Aさんは、9月1日より休職し、休職と同時に総務部に異動となり
ました。

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平成15年3月末頃、AさんはK社に対して「病気が良くなったので
復帰したい」と申し出、「次第に症状軽快し、現在のところ勤務可
能と思われます」と記載されたC医師の診断書を提出しました。

これを受け、K社は平成14年4月7日からのAさんの復職を認めま
した。

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Aさんの休職前のポストは資材管理であり、Aさん自身も資材管理
に従事することを希望していましたが、そのポストに空きがなく、
Aさんの病気が良くなっているかどうかに不安があるため、総務グ
ループに配置し補佐的な仕事をさせながら様子を見ることにしまし
た。

総務グループのマネージャーは、Aさんに仕事を任せてもきちんと
こなせるかどうか不安であるし、病気を悪化させることがあっても
いけないと思い、期日を設けずに雑務を命じるくらいに済ませてお
きました。

ところがAさんの勤務態度は思わしくなく、次のような問題行為が
見受けられました。

・特定の女性従業員に対して、仕事に関係ない話をしてばかりいて、
業務を妨げた

・マネージャーから、協力会社との賀詞交歓会の出席者リストのチ
ェックを命じられ、勘違いで名簿の一部がないと総務グループの従
業員を非難し、間違いに気づいた後でも謝罪せず、他の従業員がマ
ネージャーに対してAさんに問題があることを指摘すると「そうい
うことを言うなら仕事をしない」などと言って、作業を中止しよう
とした。

・付近の法務局に登記簿謄本を取りに行ったとき、昼食時間を含め
3時間も戻ってこなかった

・就業時間中にエクセルの講座を受講したが、講師の説明の内容が
わかるときは「わかっている」との発言を繰り返したり、わかって
いないときは同じ質問を何度も繰り返したりしたので、会社は講座
の主催者から苦情の申し入れを受けた

・他の従業員が都庁へ証明書を取りに行くというのを聞いて、都庁
の展望台に行きたいとして、その従業員の代わりに自分を行かせる
ようマネージャーに執拗に頼み続けた

・人事部専用のパソコンを使用して作業していた際、従業員の給与
データファイルを開け、勝手に盗み見ていた

・就業時間中他の営業所の従業員に電話をかけ、「おまえは仕事が
できないから飛ばされたんだ」とか「俺は総務にいるから、俺のハ
ンコひとつでおまえを飛ばすことなんか簡単にできるんだ」とか
「昨日見た車がかっこよかったから、おまえの親父に捜すように頼
んでくれ」等と、業務に関係ない話を繰り返した

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総務のマネージャーは、Aさんの病状を確認すべく、自身とAさん
及び主治医のC医師による三者面談をしようとし、Aさんにその旨
話をしました。

しかしながらAさんは、自分は正常であって、C医師と会うのはマ
ネージャーだけで良いと主張しました。

マネージャーは、過去の経験から、C医師がAさん同席でないと話
をしてもらえないと判断し、C医師に連絡を取ることをせず、C医
師の意見を聞きませんでした。

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このような状況を鑑み、平成16年1月30日、K社はAさんに対して
解雇する旨の通告をしました。

Aさんは解雇の無効を主張し、K社を訴えることになりました。

双方の主張は以下の通りです。

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【K社の主張】

Aさんの、平成10年9月以降の勤務状況には、就業規則28条1項及び
2項に定める解雇事由

・社員の職務遂行能力または能率が著しく劣り、また向上の見込が
ないと認められたとき

・精神または身体の障害もしくは病弱のため、業務の遂行に甚だし
く支障があると認められたとき

に該当します。

Aさんは、M営業所に異動した同時から資材担当者として当然求め
られるべきレベルの業務をこなしていませんでしたが、しばらくす
ると躁うつ病の躁状態になって、職務遂行能力のレベルは低下する
一方となっていました。

そして、交通事故を起こして欠勤した後、復職してからも躁状態が
悪化して、職務遂行能力のレベル低下は顕著となって、欠勤を繰り
返し、出勤したとしてもほとんど業務を行えない状態になりました。

また、温情により休職させた後、勤務可能との診断書を提出してき
たので復職させたにもかかわらず、業務中特定の女性従業員に業務
と関係のない話をし、業務指示を守らず、気にいらないことがある
と場所をわきまえずかっとなって大声で怒鳴り、周囲の従業員の業
務に支障を生じさせるようになりました。

私どもは、Aさんの躁うつ病が悪化したと判断して、会社・Aさん・
主治医による三者面談の場を設けるよう指示しましたが、Aさんが
拒否したために、それも実現しませんでした。

その後Aさんは、社外で受講したパソコン講座で講義の進行を妨害
する、頻繁に大声で私用電話をかける、特定の従業員と私語を繰り
返す、機密データを盗み見る等といった行為をして、会社の業務を
著しく妨げました。

以上の経緯を受けて、私どもも十分に検討した結果、Aさんが今後
休職しても良くなる見込みはないと判断して、解雇を行うことにし
たのです。

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【Aさんの主張】

私について、就業規則28条1項及び2項に該当する事由はありませ
ん。

仮に、形式的には該当する事由があったとしても、それらは会社が
私に対して適切な指導を行うことで容易に改善できることですから、
この解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当とは認め
られず無効です。

私は命じられた業務を全て行っていますし、上司の指示に従わない
とか、会社の業務を妨げるような行為をした事実もありません。

むしろ、パソコン教室に通うなど、業務に意欲を見せていました。

また、私は会社から主治医を交えた三者面談の申出を受けましたが、
私が同席しない場で主治医から真実を述べてもらう方がよりよい解
決につながると判断し、三者面談自体は断りました。

しかし、私が面談を拒んだ事実はなく、むしろ主治医には会社との
面談に応じるよう要請しています。

これに対して、会社は主治医に電話をかけることすらしておらず、
私の病状を知るために努力したとは言えません。

まして、会社には私のほか、病気で通常勤務をすることができない
従業員が2人いますが、会社は解雇をしていません。

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さて、この訴えの結末は…


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労働者側の勝ち : 治癒の可能性もあり、解雇は行き過ぎ
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◆◆趣 旨◆◆


■ Aさんの病状は業務遂行の妨げになっていたが、解雇について
は慎重に判断する必要がある

Aさんの勤務状況は、躁うつ病が原因で他の従業員に比べ劣ってお
り、K社の業務遂行に支障となっていたことは否めない。

しかしながら、C医師は平成16年4月5日、Aさんについて「躁うつ
病による軽躁状態のため通院治療中であるが、請求書の整理、認証
手続等の事務的な作業を行うことに支障はない」との診断書を作成
しており、またK社が解雇に先立って専門医に助言を求めた形跡が
ないことからすると、Aさんの躁うつ病の状態については、慎重に
判断する必要があるというべきである。


■ Aさんの問題行為に一切情状の余地がない、とまでは言えない

Aさんの状況を具体的に判断すると、

・女性従業員に対する私語、他の営業所の従業員への電話について
は、過剰ではあるものの、通常のコミュニケーションの延長線上に
あると見ることも可能

・給与データを盗み見ていたことについては、そのパソコンを使用
すること自体はとがめられておらず、機密データにセキュリティが
施されていなかった点はK社にも落ち度があり、Aさんを一方的に
避難するのは相当でない

・その他の行動も、外部の要因の要因に過剰に反応してしまったた
めであり、K社に具体的な損害が生じたとは言い難い

・その他問題とされるAさんの行動全般についても、1日1回程度の
もので、四六時中異常があったとは認められず、平成15年12月まで
は見られなかった


■ K社は解雇に当たりC医師の助言を求めるべきであり、再度の
休職取得等により治療を施していれば、効果があがる余地はあった

さらにK社は、解雇に先立ってC医師の見解を求めていないが、C
医師は傷病手当金請求書に意見を付しており、解雇後のAさんの状
況をK社に報告していることからすると、もしC医師がK社から意
見を求められた場合、Aさんが同席しなくても、K社にAさんへの
対処について助言をした可能性は高いというべきである。

そして、平成16年11月の時点の尋問におけるAさんの供述態度には
躁うつの症状が見受けられず、治療の効果があがっていたと考えら
れることからすると、Aさんに対して適正な対応を取り、適正な治
療を受けさせることによって、治療の効果をあげる余地はあったと
認めることが相当である。

また、Aさんの勤続年数からすると、休職期間は最長で2年である
のに、取得した休職は7ヶ月余りに過ぎないことからすると、治療
の効果が期待できるのであれば、再度の休職を検討するのが相当で
ある。


■ 他者との兼ね合いからも、不平等で権利の濫用に当たる

それに加えてK社には、C型肝炎から肝臓を患い、ラッシュ時の通
勤及び8時間労働ができない者と、遅くとも平成15年4月以降自律
神経失調症を患っている者の雇用を継続しているので、Aさんの症
状の程度に照らし合わせると、Aさんのみを解雇するのは平等取り
扱いに反するというべきものであり、解雇権を濫用したものと解釈
される。


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◆◆参考判例◆◆

K社事件


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【編集後記】

みなさんはアマゾンで本を買いますか?

僕は基本的に、気になる本のレビューをアマゾンで確認し、良さそ
うなら、(タイトルを忘れないように)レビューを印刷した紙を持っ
て本屋に行き、実物で中身を確認してから買うことが多いです。

(入手しづらそうなものを買うときや時間がないときに、アマゾン
で買います。)

先日、アマゾンのレビューを持った人を本屋で見つけ、同じような
ことを考える人はいるもんだなあと思いました。

意見の合いそうな方のお薦め本をネットで見ることによって、従来
なら出会えなかったはずの本を知ることができ、その本の内容をネッ
トで確認し購入できる、あらためて便利だなあと思います。


次号は11月9日(水)配信予定です。

ご意見、ご感想、その他取り上げて欲しい事例などございましたら、
info@hmpartners.jpまでお寄せください。


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