職場でトラブル!会社側も労働者側もいつ非常識な相手に遭遇するかわかりません。このメルマガでは具体例を取り上げ、法律上どのように解釈されるのかを解説します。小難しい条文を勉強しなくても、これを読めばOK
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会社VS社員042(解雇無効で会社に損害賠償責任?)
発行日: 2005/9/30 2005/09/30
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会 社 VS 社 員 訴えたら勝つのはどっちだ!? 第42号
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◆◆今回の訴え◆◆
「懲戒解雇は無効との判決が下ったが、さらに解雇そのものが違法
であり、損害賠償を請求する」
VS
「解雇無効が確定したからといって、当然に損害賠償責任があるわ
けではない」
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労働者側も、会社側も、いついかなるときに非常識な相手に遭遇す
るかもしれません。
そんなとき、自分の身は自分で守るため、裁判で争うところまでは
いかないにしても、自分の正当性を訴えていく必要があります。
そのためには、法律上はどう解釈されるのか、その“境界線”を知
っておくことが大事!
小難しい条文をお勉強しなくても、これを読めば労働法の勘所がわ
かる、そんなメルマガです。
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◆◆事件の経緯◆◆
株式会社Sテレビに勤めているAさんは、会社から解雇されました。
しかしながらAさんは、解雇が無効であると主張して訴訟を起こし
たところ、労働契約上の地位を有することを確認し、未払賃金の請
求を認める判決を受けました。
Aさんはさらに、この解雇について、その理由とされた就業規則違
反の事実が認められず、さらに平等性、相当性及び適正手続を欠い
ている違法な処分であり、故意または重大な過失による不法行為を
構成するとし、損害賠償の請求を起こしました。
両者の言い分は、以下の通りです。
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【Aさんの主張】
会社が懲戒事由としてあげている事実は、
(1) 販売促進目的で、スポンサーを招待する旅行を企画したが、現
地での不都合があったために、旅行を取りやめた。その際、旅行代
理店から9名分54万円相当の旅行クーポン券を受け取ったが、そのう
ち3名分18万円相当の旅行クーポン券をスポンサーに渡さず現金化し、
この金員を会計年度中に会社に返還せず、その処理を会社に報告し
なかったこと。
(2) 販売促進目的で、スポンサーを招待する沖縄ゴルフツアーを
企画したが、このツアーに参加できなくなったスポンサー2名を川奈
のゴルフ場に招待するので50万円必要である旨を会社及び旅行代理
店に申し出、会社が旅行代理店に代金を入金した後、旅行代理店か
ら現金50万円を受領し、これをスポンサーに交付したこと。
(3) 沖縄ゴルフツアー中、某招待客に対し、「こういうゴルフ旅
行につれてきてやっているのだから、しっかり出稿してもらわない
と困る」と発言し、その招待客に不快感と屈辱感を与えたこと。
の3点です。
しかし、実際は以下のとおりであり、懲戒事由となるような事実は
なく、そのことは会社にも容易に判断できたはずです。
(1) 旅行クーポン券を現金化し、会計年度内に処理できなかった
ことは確かだが、3名のスポンサーにクーポン券を交付しなかったの
はB取締役の判断であり、私はB取締役からこれを販売促進用に利
用するよう指示され、社内の私の机の引き出しの中に他の金員と区
別して保管しておいたところ、その後のB取締役の転勤、事務所の
移転や社内の混乱等によって、この金員の存在を失念していたに過
ぎない。
(2) 沖縄ゴルフツアーに参加できなくなったスポンサー2名分の費
用に当たる現金50万円を、そのスポンサーに支払ったのは確かだが、
これは営業販売促進費として交付したので、何か問題のある行動を
とったわけではない。
(3) このような発言をしたことはない。
また、当社は開局以来約20年の歴史の中で、懲戒解雇処分が行われ
たことはなく、過去の事例と比較しても極めて重い恣意的な処分で
あり、合理性に欠けています。
しかも、解雇事由についての告知聴聞の機会が1回しかなく、上司
のB取締役に対しても短時間の事情聴取が2回行われただけで、適
正な手続を踏んだとは言えません。
これらを考え合わせると、以前明らかになった内部告発について、
私が犯人であると考え、私を社外に追放する手段として、形式的な
懲戒事由を捏造して行った故意による不法行為であるか、私には解
雇に値する事由がないことを知り得たにもかかわらず、重大な過失
によってこれを誤認して行った不法行為であるかのいずれかであっ
て、会社は私に生じた損害を賠償する責任があります。
解雇当時の私は、妻、大学生の長女、大学受験を間近に控えた長男、
多感な中学生の次男及び年老いた両親を抱えており、解雇された後
復職するまでの約2年半に渡り、違法な解雇という屈辱、世間から
の視線、家族との葛藤、生活不安、家族の受ける精神的な打撃、自
己及び家族の将来への不安等が相まって、耐え難い精神的・肉体的
な苦痛を受けました。
この苦痛に対する慰謝料は、少なくとも1,000万円を下回ることは
ありません。
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【会社側の主張】
解雇が無効であることは、既に判決で確定していますが、だからと
いって当然に損害賠償義務があるわけでなく、解雇が不法行為に該
当するかどうかは、個別の事例ごとに不法行為の要件(故意、過失、
違法性、損害の発生及び因果関係)を満たすかどうかを検討のうえ
判断するべきものです。
まずAさんには懲戒事由としての就業規則違反が存在するので、懲
戒事由がないにも関わらず故意又は過失により懲戒処分をしたわけ
ではありません。
例え懲戒処分の程度を誤ったとしても、そのことで過失があるとま
では言えないはずです。
それに、私どもは解雇に先立ってAさん及びB取締役から事情を聴
取しているので、手続上問題はありません。
また、当社において過去懲戒解雇の事例がないことは事実ですが、
実際には懲戒解雇処分相当の事例で本人の申出によって依願退職し
ているケースが3件あります。
懲戒事由とした個別の案件については、以下の通りです。
(1) スポンサーに対して、旅行クーポン券を進呈することは会社が
決定したことであり、A取締役の指示だとしてもそれを勝手に流用
することは許されない。そして10万円以上の資産の処分や支出に関
しては稟議決裁が必要とされているのに、その手続をとらず独断で
現金化している。
(2) Aさんは、あたかもB取締役がこのゴルフに同行し、かつ旅行
代理店から50万円を拠出させることを承諾したかのごとく虚偽の説
明をしている。しかしながら、川名ゴルフ場は予約さえされず、招
待者の一人はこの企画自体知らされていない。
(3) 沖縄ゴルフツアーにおける暴言は、同行した社員が目撃してい
る上、当社の浜松市局長が謝罪に出向いていることからも明らかで
ある。
なお、当社はAさんの復職を含めて十分な原状回復措置をとってお
り、これによりAさんの損害は回復されています。
また、Aさんは解雇されてから復職するまでの間の生活不安等を訴
えていますが、賃金相当額の仮払いを受けていた上、別会社を設立
して月額30万円の役員報酬も得ていました。
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さて、この訴えの結末は…
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会社側の勝ち:就業規則違反に該当し会社に過失はない
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◆◆趣 旨◆◆
■ 懲戒解雇が無効だからといって、その懲戒処分が直ちに不法行
為とはならない
懲戒解雇が権利の濫用として無効となるのは、その懲戒権の行使が、
客観的合理性に欠き、社会通念上相当と認められない場合である。
しかしながら、権利濫用の法理は、解雇の正当性を失わせるもので
あって、懲戒解雇が権利の濫用とされた場合であっても、そのこと
で直ちに懲戒解雇によって他人の権利を侵害したと言うことはでき
ず、懲戒解雇が不法行為に該当するかどうかについては、個々の事
例ごとに不法行為の要件を充足するかどうかを、個別的具体的に検
討の上判断するべきものである。
■ 懲戒解雇そのものが不法行為として、損害賠償責任が生じる要
件
労働者に対する懲戒は、会社が、「行為の非違性の程度」「企業に
与えた損害の有無・程度」等を総合的に判断するものであって、ど
のような懲戒処分を行うかは、会社の裁量に委ねられている。
一方、懲戒解雇は労働者の生活に多大な影響を及ぼすことから、特
に慎重にすべきこととされている。
これらを考え合わせると、
・懲戒解雇すべき非違行為が存在しないことを知りながら、あえて
懲戒解雇をしたような場合
・通常期待される方法で調査すれば懲戒解雇すべき事由のないこと
が容易に判明したのに、ずさんな調査、弁明の不聴取等によって非
違事実を誤認し、その誤認に基づいて懲戒解雇をしたような場合
・懲戒処分の相当性の判断において明白かつ重大な誤りがあると言
えるような場合
等に該当する必要があり、このような事実関係が認められて初めて、
懲戒解雇の効力が否定されるだけでなく、不法行為に該当する行為
として損害賠償責任が生じるといえる。
■ 懲戒事由(1)について
旅行クーポン券については、受領を辞退するスポンサーもいたため、
B取締役はこれを販売促進のために利用しようと考え、Aさんに対
し適宜利用するよう指示し、その処理を任せた。
B取締役としては、Aさんに処理を任せた時点で具体的な利用方法
を考えていたわけではなく、Aさんに一任するつもりでおり、旅行
クーポン券を換金することについても特に否定する考えはなかった。
株式会社Sテレビにおいては、10万円以上の接待交際費の支出、1
件当たりの取得価格が10万円以上の資産の処分は稟議事項とされて
いることが認められ、旅行クーポン券が利用されないことが決まっ
たら、すみやかに会社に返還すべきであり、これを勝手に現金化し
たり他の費用に流用したりすることは許されない。
稟議制度が1人による独断専行を防止し、複数の者の意見や批判を
経て合理的な判断と実行を行う目的で設けられていることを考えれ
ば、たとえ旅行クーポン券を流用することがB取締役の判断であっ
ても、一存で流用することを許可する内規でもない限り許されない
ことになる。
そうすると、クーポン券の処理については指示を仰ぐべきであり、
それを怠ったAさんの行為は就業規則上の懲戒事由「職務上の義務
に違反し、または職務を怠ったとき」「社員としてふさわしくない
行為のあったとき」「懲戒に該当する行為につき故意に報告を怠っ
たり、その事実を隠蔽したりしたとき」に該当する。
そのため、Aさんは一存でクーポン券を換金し、その保管状況も第
三者の目からは不明瞭であるとの批判を免れないものであることを
考え合わせると、Aさんの終業規則違反は軽視できない非違行為で
あると言える。
■ 懲戒事由(2)について
Aさんが旅行代理店からクーポン券で払い戻しを受けたり、これを
支出及び使途が不明朗になりがちな現金に変えたりすることは、そ
もそもAさんにはゆるされておらず、B取締役も承認していなかっ
た不正な処理であり、そのような処理をする必要性も合理性もなか
ったと言える。
株式会社Sテレビの開局以来のつながりの深いスポンサーだったの
で、Aさんが特別の判断をしたと思われ、実害もないので重大な非
違行為に該当しないとB取締役は証言しているが、これが緊急に処
理しなければならない案件であったとは到底認められないから、A
さんが独断専行する必要性や合理性はなく、かえって支出及び使途
が不明朗になりがちな現金交付による接待を許容するときの弊害を
考えれば、Aさんの行為の非違性はむしろ高いと言うべきである。
したがって、上記(1)と同様、Aさんの行為は就業規則の懲戒事由に
該当する。
■ 懲戒事由(3)について
Aさんがその職責上から、沖縄ゴルフツアーの宴席でCMの出稿を
依頼したことは十分考えられることだが、Aさんの性格もあって、
多少くだけた態度で直接的な表現をした可能性はあるものの、宴席
での発言であり、出席したスポンサーも不快な思いをしていないと
の証言があるため、これらを「暴言」とすることはできず、取り立
てて懲戒事由とするほどのものではない。
■ 会社が調査をすることなく解雇をしたとは言えない
株式会社SテレビのC取締役は、Aさんに関する旅行クーポン券の
情報を耳にし、スポンサーに授受の事実確認をした結果クーポン券
を交付していないことが判明したため、こうした事前調査を踏まえ
Aさん及びB取締役から事情を聴いた旨の証言をしている。
調査の時期や詳細は明確ではないが、会社がAさん及びB取締役か
ら事情を聴取していることは当事者間に争いがないので、少なくと
もそれより相当期間前から調査が開始されたことが合理的に推測で
きる。
したがって、会社がAさんに対する調査をすることなく解雇をした
とはいえないし、Aさんに就業規則違反の事実が認められる。
■ 総合的に勘案すると、会社に過失があるとは言えない
仮に会社がAさんを内部告発者と疑っていたと言えるにしても、上
記のように認定されたAさんの非違行為があくまで建前で、実は内
部告発者放逐の手段としてAさんに対する解雇を行ったと認定する
には根拠が薄弱と言わざるを得ない。
そして、この解雇がAさん及び関係者に対する事情聴取等を経た上
で行われていること、Aさんに就業規則違反の事実が認められ、こ
れらが取るに足らない違反であるとも言えないこと、会社における
過去の依願退職事例と比較して、解雇の相当性の判断において明白
かつ重大な誤りがあるとすることはできず、会社に過失を認めるこ
とはできない。
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◆◆参考判例◆◆
静岡第一テレビ(損害賠償)事件
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【編集後記】
すみません。
また1回飛ばしてしまいまいした。
何だかここのところ、仕事用のメールアドレスに迷惑メールがやた
ら届いて、非常にうざいです。
事務所のHPに晒している場合は、仕方がないのでしょうか・・・
次号は10月12日(水)配信予定です。
ご意見、ご感想、その他取り上げて欲しい事例などございましたら、
info@hmpartners.jpまでお寄せください。
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なお、このメールマガジンは、判例等をもとに著者が脚色して作成
しています。できる限り法知識が正確に伝わるよう努力しています
が、実際の事件には様々な要素が複雑に絡んできますので、類似の
案件に必ず同様の判断が下されるとは限りません。
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