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職場でトラブル!会社側も労働者側もいつ非常識な相手に遭遇するかわかりません。このメルマガでは具体例を取り上げ、法律上どのように解釈されるのかを解説します。小難しい条文を勉強しなくても、これを読めばOK




会社VS社員034(降格基準の判断)

発行日: 2005/3/2

                         2005/03/02
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会 社 VS 社 員  訴えたら勝つのはどっちだ!?  第34号
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このメルマガの読者が合計で3,101人になりました!

どんどん、みなさまの周りにも起こりそうな話題を取り上げて行き
たいと思います。

もし、まわりに興味のある方がいらっしゃれば、転送してくださる
ようお願いします。



◆◆今回の訴え◆◆

「無銭飲食の代わりにサービス残業をさせていたことは、法令や社
内ルール違反であり、降格処分となって当然だ」

             VS

「就業規則上の降格基準には該当しない」


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労働者側も、会社側も、いついかなるときに非常識な相手に遭遇す
るかもしれません。

そんなとき、自分の身は自分で守るため、裁判で争うところまでは
いかないにしても、自分の正当性を訴えていく必要があります。

そのためには、法律上はどう解釈されるのか、その“境界線”を知
っておくことが大事!

小難しい条文をお勉強しなくても、これを読めば労働法の勘所がわ
かる、そんなメルマガです。


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◆◆事件の経緯◆◆

N社は飲食店経営を主たる目的としており、本社を東京に置き、多
数のブランドで店舗の全国展開をしている会社です。

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N社の人事制度は、以下のように定められています。

《従業員の資格》
一般職
 ↓ 
主任職
 ↓
店長B職
 ↓ 
店長A職
 ↓
マネージャーB職
 ↓ 
マネージャーA職
 ↓
課長B職
 ↓ 
課長A職
 ↓ 
課長S職
 ↓
部長B職
 ↓ 
部長A職
 ↓
部長S職


《従業員の賃金》
本給(基本給、職務給)及び諸手当(職務手当、時間外勤務手当等)
から構成されており、基本給は、全従業員について一律月額12万円
とし、職務給及び職務手当は職位により決定されます。

《職務内容》
【店長】
店舗の責任者として、店舗を管理・運営し、店舗従業員を直接指揮・
監督すること。
店舗のすべての資産(建物、設備、備品、商品)、原材料、消耗品に
ついては正しく保全し、損害、ロス退治のために具体的に行動する
ことが重要な内容となっており、店舗内の原材料を無駄に使用する
ことは許されず、たとえ店舗従業員に対するいわゆる賄食(従食)
についても、顧客に対する価格の40%を店舗従業員が支払うという
社内ルールを、店舗従業員が遵守しているか管理・監督することも
求められている。

【マネージャー】
店長の上位職位者として、管轄営業部内の業務の執行を統括し、店
長職の業務に対し助言・協力し、店長以下の店舗従業員を指揮・監
督すること。

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また、N社の就業規則には、以下のように規定されています。

第12条 会社は、業務の都合により必要がある場合には、社員に転
勤、(中略)あるいは出向、派遣を命ずることがある。

第13条 社員が異動を命じられたときは、正当な理由がなければこ
れを拒むことはできない。

第32条 社員は、職務遂行上において、再三の指示・命令にもかか
わらず改善されず、会社から要求された職務遂行が行われない場合、
降格することがある。

第69条(7) 懲戒処分としての降格を行う場合、譴責の上、会社が
定める期間職位を下げる。

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Aさんは、昭和61年3月に育成調理師学校を卒業し、調理師免許を
取得し、他社での経験を経て、平成9年3月にN社に入社しました。

大阪府内の店舗に勤務し、入社当初は主任職でしたが、同年6月に
は店長B職、平成10年10月には店長A職、平成12年4月にはマネー
ジャーB職、平成13年10月にマネージャーA職へと昇格しました。

Aさんは、マネージャーとなった平成12年4月以降、4店舗を担当
統括することになりました。

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平成13年11月、N社ではマネージャー以上を対象としてマニュアル
テストが実施されましたが、平均点が90点以上であるにもかかわら
ず、Aさんは52点しか取ることができず、65人中64位の成績でした。

そのためN社は、Aさんに対し、次回までに満点の成績を取れるべ
く努力するよう指示した上、訓戒処分としました。

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N社においては、人時売上高と呼んでいる従業員一人当たりの1時間
の売上高の目標を設定し、毎月の人時売上高を公表する等してその
向上を奨励してきたため、期末賞与についても、売上の前年比や従
業員の労働時間が標準労働時間以下であるかに重点を置いて、支給
額を決定しています。

その際、これらの目標を達成するには、社員・アルバイトの能力ア
ップや店舗の運営やシステムの改善により行い、サービス残業を行
って人時売上高の向上を図るようなことのないよう各店舗の指示を
しており、平成12年2月からは本部で基本シフト表を決定し、各店
舗に対しそれに従ったシフトを組んで従業員の労働時間を管理する
ように指示するとともに、各店舗に作成したシフト表を提出させ、
従業員のシフトが不自然なものになっていないかどうかチェックす
ることによって、各店舗における従業員の労働時間を把握し、管理
しています。

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平成14年4月Aさんは、18歳未満のアルバイトを夜0時まで働かせた
ことを会社から指摘され、始末書を提出しました。

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また、平成14年4月に、N社が各店舗の原価の調査に入ったところ、
Aさん担当の4店舗の原価率が異常に安定して不自然であることに
気づきました。

そのためN社が徹底して調査したところ、Aさんの指示で、各店舗
の店長が原価率を操作していたことが判明しました。

そこでN社は平成14年6月、AさんをマネージャーA職からマネー
ジャーB職へ降格と東京への転勤を命じました。

Aさんは、長女の心臓病のことや居住している父親名義の住宅ロー
ンのことなどを訴えて、東京への配転を撤回してもらえないか、会
社に相談しました。

その結果、降格は予定通り行なわれましたが、配転は大阪府内の工
場等3施設の担当になりました。

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平成14年6月、マネージャー以上を対象としたレシピテストが実施
されましたが、Aさんの成績は平均が91.7点のところ84点で、66人
中52位でした。

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また、N社が売上伝票を提出させるなどして従業員の食事利用頻度
を調査した結果、Aさんの担当4店舗の従業員全員が、Aさんの指
示のもと無銭飲食やサービス残業をしていたことが判明しました。

N社はこの件をAさんに問いただしたところ、自分が指示したとい
うことは否定しましたが、過去にお金に困っている従業員にオーダ
ーミスの商品を食べさせたこと、無銭飲食をしていそうな従業員に
気づきながら黙認したことがあったこと、所定労働時間内に自分の
担当する業務が終わらなければ残って仕事をしてから帰宅すること
も許容し、そのような従業員に対して従食代は支払わなくてもいい
と言ったことがあることを認めました。

N社は、平成14年9月、Aさんを監督不行届きのため店長A職に降
格しました。

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Aさんは以下の通り主張し、降格処分は人事権の濫用であり、無効
だとして会社を訴えることにしました。

・明確な判断基準がないのに、降格処分を下すことはできない。

・会社の意を受けた社員が、口裏合わせをして、私の指示によりサ
ービス残業と引き替えに従食を食べさせていたと言っているのであ
り、私をおとしめるための方策である。

・サービス残業及び無銭飲食という行為について再三の指示命令を
行ってもなお改善されないという場合でないと、降格処分を行うこ
とはできない。

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さて、この訴えの結末は…


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会社側の勝ち:降格は妥当であり減給もやむをえない
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◆◆趣 旨◆◆


■ 規定上降格は可能であり、それに伴う減給も可能

N社においては、平成12年4月から能力主義・成果主義賃金体系が
とられており、従業員は会社から基本給として一律12万円が支給さ
れるほかは、職務遂行能力に応じて職位が決定され、職位に応じた
職務給と職務手当が支給されることになっている。

そして、その職位は社員の経験、勤務成績等、職務遂行能力を要素
に決定することとされているほかは、特段詳細な資格要件が規定さ
れているわけではない。

また、就業規則第32条に降格についての言及がなされている。

以上によれば、就業規則第32条の要件「職務遂行上において、再三
の指示・命令にもかかわらず改善されず、会社から要求された職務
遂行が行われない場合」を満たせば、社員を降格することができ、
それに伴い社員の職務給及び職務手当を減額することができると解
釈できる。


■ サービス残業との引き替えに従食を無料で食べさせるという行
為に、Aさんが関与していたと言わざるを得ない

Aさんは、会社の意を受けた店長らが主導して口裏あわせをしたと
主張しているが、憶測の域を出ておらず、それを裏付ける客観的証
拠もない。

確かにAさんは、無銭飲食及びサービス残業を支持したことは一貫
して否認しているが、そもそもAさんはいずれかの店舗のシフトに
入り、他の従業員と同様の業務をこなしながら管理・監督していた
のであるから、多数の従業員が長期に渡って行っていたサービス残
業や無銭飲食に気づかなかったというのは不自然である。

また、自分の勤務時間内に担当している業務が終わらなければ、残
って仕事をしてから帰宅することを許容し、そのような従業員に対
して、飲食代は払わなくてもいいと言ったことを認めている。

さらに、Aさん自身、自分の勤務時間内に仕事が終わらなかった場
合残って仕事をする者を評価するということも社員に述べていたこ
とや、社員が残業せざるを得ないシフトを組んだことがあり、割り
当てられた勤務時間終了時に仕事を終えていない社員に対して強く
帰宅するように指示することもなく、しかも社員が残業終了後にタ
イムカードを正しく打刻しているか否かについて何らチェックをし
ていなかったことを認めている。

以上を総合すると、Aさんの主張を採用することはできない。


■ Aさんの行為は、「職務遂行上において、再三の指示・命令に
もかかわらず改善されず、会社から要求された職務遂行が行われな
い場合」に該当する。

企業が、労働者の適性や能力を正当に評価して、企業組織の中で見
合った職務や職位に労働者を配置する人事権を持っているというこ
とは、言うまでもない。

まして、N社では能力主義・成果主義賃金体系がとられ、職位は社
員の経験、勤務成績等、職務遂行能力を要素に決定されていること、
また就業規則の規定も、一連の職務遂行能力に改善が見られない社
員を降格すると解釈されることからすれば、降格の理由となった職

務不履行とまるっきり同一の職務について、会社から再三指示・命
令を受けていなければ降格処分を行うことができないと厳格に解釈
しなければならないとは言えず、その前後において同様の種類又は
性質の指示・命令を再三受けたにもかかわらず改善が認められない
場合には、降格することができるというべきである。

Aさんは、管理職として、従業員に対し法令・社内ルールを遵守す
るよう指導・監督するのが職務であるのに、

1.マニュアルテストにおいて著しく低い点を取り、訓戒処分を受
けた
2.就業規則の理解が不十分であることから、18才未満のアルバイ
トを夜0時まで働かせた
3.レシピテストにおいても低い成績に止まる

といったように、法令や社内ルールにつき、指導を受けながらその
改善が認められないのであるから、就業規則第32条の規定
「社員は、職務遂行上において、再三の指示・命令にもかかわらず
改善されず、会社から要求された職務遂行が行われない場合、降格
することがある。」
に該当する。


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◆◆参考判例◆◆

日本レストランシステム事件


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【編集後記】

顧問先の会社の社長が、地元の福岡で新たにビジネスを始めること
になり、一旦はお別れということで、一緒に食事をしました。

お互いの人生について等、色々な話を語り合いました。

良いお酒でした。

彼の今後の成功を、心から祈ります。


次号は3月16日(水)配信予定です。

ご意見、ご感想、その他取り上げて欲しい事例などございましたら、
info@hmpartners.jpまでお寄せください。


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